私たちの体に欠かせないミネラルの一つに「マグネシウム」があります。
カルシウムや鉄など、他のミネラルと比べてあまり注目される機会は少ないものの、筋肉や神経の働き、エネルギー代謝を支える重要な存在です。
しかし、現代の食生活やストレスの影響から不足しやすいミネラルでもあります。
本記事では、マグネシウムの基本的な役割や不足によって起こる症状、食事・サプリメントでの効果的な摂り方までわかりやすく解説します。
最近、体の不調を感じている方や健康を意識し始めた方は、ぜひ最後までご覧ください。
【必須ミネラル】マグネシウムとはどんな栄養素?

マグネシウムは栄養素でありつつ、元素(元素記号Mg)です。
原子量は24.305で、アルカリ土類金属のひとつです。
私たちの体の調子を整えるために欠かせないマグネシウムですが、体内にどのくらい存在しているのでしょうか。
ここでは、マグネシウムが体の中にどれくらい含まれているのか、また1日に必要とされる摂取量について解説します。
参考:マグネシウム|Wikipedia
体にどのくらい含まれている?
成人の体内には、およそ25gのマグネシウムが存在しています。
量にすると小さじ一杯ほどですが、マグネシウムが生命活動を支えていると言っても過言ではありません。
体内のマグネシウムのうち約60%は骨に存在し、カルシウムとともに骨を丈夫に保つ役割を担っています。
残りのおよそ30%は筋肉に、約10%は血液や臓器に分かれて存在し、筋肉の収縮や神経の働きにも欠かせません。
さらに、マグネシウムは800種類以上もの酵素反応に関与し、糖や脂質をエネルギーに変える代謝や心臓のリズムを一定に保つ働きにも深く関わっています。
まさに体を裏から支える「縁の下の力持ち」といえるでしょう。
参考:6. 1. 4.マグネシウム(Mg)|厚生労働省
マグネシウムの1日に必要な摂取量は?
厚生労働省によると、1日に必要なマグネシウムの量は、成人男性でおよそ320〜370mg、成人女性で260〜290mgとされています。
日常の食材に置き換えると、アーモンド一掴み(約25粒)や木綿豆腐一丁に相当します。
しかし、加工食品中心の食生活では十分なマグネシウムの摂取が難しく、さらにストレスやアルコール、コーヒーの過剰摂取によって体外に排出されやすいため、食事やサプリメントでの意識的な摂取が大切です。
参考:日本人の食事摂取基準(2025年版)|厚生労働省
マグネシウムの主な4つの効果と働き

マグネシウムは体内で幅広い働きを担っており、私たちの体の基礎を支えています。
マグネシウムの主な働きと効果は次の4つです。
- 筋肉の収縮とリラックスを助ける
- 骨と歯の健康を維持する
- 神経伝達を正常に保つ
- エネルギー代謝を支える
それぞれの働きと効果について、詳しくみていきましょう。
筋肉の収縮とリラックスを助ける
私たちが体を動かすとき、筋肉は「縮む(収縮)」と「ゆるむ(弛緩)」を繰り返しています。
筋肉を縮ませる役割をカルシウムが、逆に筋肉をゆるめる役割をマグネシウムが担っており、このバランスがうまく取れているお陰で、私たちはスムーズに歩いたり走ったりできるのです。
また、心臓の拍動も筋肉の収縮と弛緩の繰り返しで成り立っており、そのリズムを支えるためにマグネシウムが必要とされています。
骨と歯の健康を維持する
骨といえばカルシウムというイメージが強いですが、カルシウムだけでは骨の強さは十分に保てません。
成人の体に含まれるマグネシウムの約60%は骨に蓄えられており、カルシウムとともに骨の形成や維持に関わり、骨の密度やしなやかさが保たれています。
また、歯のエナメル質や象牙質の健康にも関わっており、骨と歯の両方を裏側から支えています。
神経伝達を正常に保つ
人の体は、脳からの指令を神経を通じて全身に送り、筋肉を動かしたり感覚を伝えたりしています。
マグネシウムは、神経細胞の間でやりとりされる電気信号や化学物質の流れをコントロールして、体の反応がスムーズになるようサポートしています。
この働きによって、体を動かす動作はもちろん、考える・感じるといった脳の活動まで支えられています。
エネルギー代謝を支える
食べ物から得た栄養素は、そのままでは体内で使えません。
炭水化物や脂質、たんぱく質は分解されてエネルギーへと変換されますが、このとき多くの酵素が関わります。
マグネシウムはその酵素を補助する役割を果たし、代謝の流れを円滑にしています。
つまり、マグネシウムがあるからこそ食事から得た栄養が効率よくエネルギーに変わり、体を動かす力や日々の活力につながっているのです。
スポーツや仕事、学習などあらゆる活動のパフォーマンスを支える基盤ともいえます。

マグネシウム不足から起こる主な4つの症状

マグネシウムは体のさまざまな働きに関わっているため、不足すると不調が現れやすくなります。
マグネシウム不足からくる主な症状として、次の4つが挙げられます。
- 筋肉の痙攣(けいれん)やこむら返り
- 不眠やイライラなどの神経症状
- 肌荒れ・動悸・不整脈などの生活上の不調
- 慢性的な疲れやすさ・集中力低下
それぞれの症状について、詳しくみていきましょう。
筋肉の痙攣(けいれん)やこむら返り
マグネシウムは、カルシウムとともに筋肉が縮んだりゆるんだりするリズムを整える役割を持っています。
そのため、日常のちょっとした不快感の裏に、マグネシウム不足が隠れているケースも少なくありません。
マグネシウムが不足すると筋肉の緊張が強くなり、ふくらはぎや太ももが急にピクッと痙攣したり、夜寝ている間に足がつる「こむら返り」が起こりやすくなります。
また、瞼がピクピク痙攣する症状もマグネシウム不足の可能性があります。
特にスポーツをしている人や、汗をたくさんかく人、高齢者は症状が出やすい傾向にありますので注意が必要です。
不眠やイライラなどの神経症状
神経は、脳からの信号を体に伝えて体を動かしたり感覚を感じたりする仕組みです。
マグネシウムはこの神経の働きをサポートし、興奮や緊張を鎮める役割をもっています。
マグネシウムが不足すると神経のバランスが崩れ、寝つきが悪くなったり、眠りが浅く途中で目が覚めてしまうなどの睡眠トラブルが増える場合があります。
また、些細なことでイライラしたり、気持ちが落ち着かないなどの精神的な不調につながる場合もあるため、仕事や家庭でストレスが多い人は、特に注意が必要です。
肌荒れ・動悸・不整脈などの生活上の不調
マグネシウムは肌の新陳代謝にも関わっているため、不足すると肌のターンオーバーが乱れ、ニキビや乾燥など肌荒れが出やすくなります。
さらに、心臓や血管の働きにも深く関わっており、脈が乱れたり、動悸を感じるケースもあります。
日常的な疲労やストレスの中で「最近肌の調子が悪い」「動悸が増えた」と感じる場合、それは単なる体調不良ではなく、マグネシウム不足のサインかもしれません。
慢性的な疲れやすさ・集中力低下
食べ物から摂った炭水化物や脂質は、体の中でエネルギーに変換されてはじめて活用できます。
この代謝の過程には多くの酵素が関わっており、マグネシウムはその働きを支える重要な役割を担っており、マグネシウムが不足すると代謝が滞り、効率よくエネルギーを生み出せなくなります。
日常生活の中で「なんとなくだるい」「疲れが抜けにくい」などの慢性的な疲労感が続いている場合は、マグネシウム不足が原因かもしれません。
さらに脳のエネルギー代謝にも深く関与しているため、集中力が続かない、仕事や勉強に気持ちが向かないといった状態につながる場合もあります。
現代人にマグネシウム不足が多い3つの原因

マグネシウムは日常生活に欠かせない必須ミネラルですが、現代の生活習慣では不足しやすいといわれています。
ここでは、マグネシウム不足につながりやすい3つの原因を詳しく解説します。
精製食品や加工食品の普及
マグネシウム不足を招く要因の一つに、現代の食生活の変化があります。
主食として多く食べられている白米や精製小麦を使ったパンや麺類は、精製の過程で栄養が削ぎ落とされ、もともと含まれていたマグネシウムの量も大きく減ってしまいます。
また、スナック菓子やインスタント食品といった加工食品も手軽で便利な一方、味や保存性を優先して作られているため、どうしても栄養バランスが偏りがちです。
そのため、食事から自然に摂れるはずのマグネシウムが不足しやすくなり、気づかないうちに体の中で少しずつ不足状態が進んでいきます。
ストレスと忙しい生活習慣
現代社会は、仕事や家庭、学業などで常にプレッシャーやストレスにさらされています。
実はこのストレスこそが、体内のマグネシウムを消費する大きな要因です。
忙しさから睡眠不足や不規則な生活が続くと、食事の栄養バランスが崩れ、さらにマグネシウム不足を招きやすくなります。
また、コンビニ食や外食に頼る機会が増えると、マグネシウムの源となる野菜・豆類・海藻などを十分に摂るのも難しくなります。
ストレスと生活習慣の積み重ねが、知らないうちにマグネシウム不足を深刻化させてしまうのです。
特定の疾患や薬剤の影響
特定の病気や薬の影響によって、体内のマグネシウムバランスが崩れる場合もあります。
例えば、消化器系の疾患があると食べ物から栄養をうまく吸収できず、必要なマグネシウムを取り込みにくくなります。
腎臓の機能が低下している場合も、マグネシウムの排泄コントロールが乱れて体内のバランスが崩れやすくなります。
また、薬の副作用としてマグネシウムが不足するケースも少なくありません。
利尿薬は尿と一緒にマグネシウムが排出されやすく、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)を長期間使用すると、腸からの吸収が妨げられることが知られています。
持病がある方や薬を常用している方は特に注意が必要です。
マグネシウムが多く含まれる食材・飲み物は?

「マグネシウムは不足しがち」と聞くと難しく考えてしまいがちですが、特別な準備をしなくても、普段の食事や飲み物からしっかり補えます。
ここで、マグネシウムが多く含まれている食材や飲み物を紹介します。
【マグネシウムを多く含む食材】
ナッツは栄養価が高く、なかでもアーモンドやカシューナッツはマグネシウムが豊富に含まれているため、間食やおやつとして取り入れるだけで効率的な補給につながります。
日本の伝統的な食文化として欠かせない海藻類も、マグネシウムをはじめとするミネラルが豊富に含まれています。
わかめの味噌汁や煮物、サラダなど幅広い料理に使えるため、日常的に取り入れやすい食材です。
緑黄色野菜は、主にビタミンや食物繊維に注目しがちですが、実はマグネシウムも多く含んでいます。
ほうれん草やブロッコリー、アボカドといった食材を使った料理は、ビタミンやミネラルを同時に摂れるため、食生活の栄養バランスの改善にも効果的です。
硬水にはカルシウムやマグネシウムが多く含まれており、飲むだけで自然にミネラルを摂取できます。
茶葉を丸ごと摂取できる抹茶は、抗酸化作用のあるカテキンやビタミン類に加え、マグネシウムも摂取できる飲み物です。
上記以外にも、マグネシウムが含まれている食材や飲み物はたくさんあります。
今日の食事にほんの少し工夫を加えて、毎日の健康づくりに役立ててみましょう。

マグネシウムの効果的な摂取方法

マグネシウムを効率よく補うには、サプリメントなどの意識的な摂取が重要です。
ここでは、マグネシウムを効果的に摂取する3つの方法を紹介します。
食事+サプリでの補給
マグネシウム摂取の基本は食事ですが、サプリメントの併用でより効果的な摂取が可能です。
ただし、マグネシウムのサプリメントには「酸化マグネシウム」「クエン酸マグネシウム」など、いくつか種類があるため目的に合わせたマグネシウムを選びましょう。
例えば、酸化マグネシウムは便通の改善目的で用いられる場合が多く、便秘で悩んでいる人に向いていますが体内での吸収率は低めです。
一方、クエン酸マグネシウムは水に溶けやすく吸収率が高いのが特徴で、効率よく体内に取り込みたい人に向いています。
また、マグネシウムは摂取タイミングによって吸収効率が落ちたり、過剰摂取で下痢を起こす可能性もあるため、食事と併用する際は用法・用量に注意が必要です。
日常生活での工夫
マグネシウムを効率よく摂取するには、日常生活の工夫も大切です。
例えば、白米を玄米や雑穀米に変える、精製小麦のパンではなく全粒粉パンを選ぶなど、ちょっとした工夫が効果的です。
また、普段の食事に硬水のミネラルウォーターを取り入れるだけでも、マグネシウムの摂取量を増やせます。
こうした生活習慣の小さな変更の積み重ねが、マグネシウム不足の解消につながります。
経皮吸収も選択肢の一つ
マグネシウムを補う方法として、最近注目されているのが「経皮吸収」です。
経皮吸収は、皮膚からマグネシウムを取り入れる方法で、入浴剤やマグネシウムオイル、マグネシウムスプレーなどの商品が広く使われています。
特にエプソムソルトは、リラックス効果を得ながらマグネシウムを補えるとして人気があります。
また、経皮吸収は消化器への負担が少ないため、サプリメントでお腹がゆるくなりやすい人や、忙しくて食事からマグネシウムを十分に摂れない人にとっては最適な摂取方法です。
まとめ|マグネシウムの意識的な摂取で体と心のバランスを整えよう

マグネシウムは骨や筋肉の働き、神経の安定、エネルギー代謝など、私たちの体に欠かせない必須ミネラルです。
日々の生活の中にマグネシウムを取り入れるだけで、慢性的な疲れや不調を防ぎ、体と心のバランスを保ちやすくなります。
しかし、現代の食生活では不足しやすく、食事だけでの摂取が難しいため、効率よくマグネシウムを摂取するにはサプリメントや経皮吸収などの併用が大切です。
小さな工夫の積み重ねが、長期的な健康維持に大きな差を生みます。
今日からの食事や生活習慣に、マグネシウムを意識して取り入れてみてはいかがでしょうか。
