「できることなら、毎日を気分良く過ごしたい」
きっと、ほとんどの人がこのように思っているでしょう。
しかし、嫌なことがあると気分は落ち込みますし、それでなくともバイオリズムやホルモンバランスの変化などで、心身のコンディションが変わりやすいのが人間です。
実は、こうした「感情の変化」や「心の安定」には、体内のホルモン物質が深く関わっています。
たとえば、幸福ホルモンと呼ばれている「セロトニン」もその一つです。
私たちの感情や気分、心といったメンタルは、セロトニンをはじめとするホルモン物質の分泌量で決まると言っても過言ではありません。
しかし、ストレスにさらされていたり、生活習慣が不規則になっていたりすると、セロトニンの分泌が乱れ、心身のバランスが崩れやすくなります。
そんなセロトニンの生成や働きに欠かせない栄養素の一つが「マグネシウム」です。
今回は、セロトニンの働きとマグネシウムとの関係性から、マグネシウムを効果的に摂取する方法までわかりやすく解説します。
そもそもセロトニンとは?

セロトニンは、脳内の神経伝達物質の一つで、感情のコントロールや精神の安定、睡眠、食欲の調整などに関わっています。
特に、ストレスを和らげたり、不安を軽減したりする働きがあることから「幸福ホルモン」「幸せホルモン」とも呼ばれています。
また、セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンといった他の神経伝達物質のバランスをとる役割も持っています。
ホルモンバランスが乱れると、イライラや不眠、集中力の低下など、さまざまな心身の不調につながってしまいます。
近年の研究では、マグネシウムの摂取量がセロトニンの合成に関与しており、心の健康と深い関係にあることが明らかになってきました。
マグネシウムとセロトニンの関係

セロトニンの合成には、必須アミノ酸のトリプトファンと、それをサポートするさまざまな栄養素が必要ですが、中でもマグネシウムは非常に重要な役割を果たしています。
マグネシウムは、セロトニンを生成する酵素の働きを助ける「補酵素」として作用します。
つまり、マグネシウムが不足してしまうと、セロトニンの合成効率が低下し、結果として心の安定にも影響を与えてしまうのです。
ここからは、マグネシウム不足が私たちの心身にどのような影響を及ぼすのか、具体的に見ていきましょう。

マグネシウム不足がもたらす心身への影響
マグネシウムが足りない状態が続くと、以下のような症状が現れることがあります。
- 不安感やイライラ
- 抑うつ気分
- 筋肉のけいれんやまぶたのピクつき
- 不眠や寝つきの悪さ
- 集中力の低下
マグネシウムは、体内で800以上の酵素反応に関わっており、エネルギー代謝や筋肉・神経の健康維持などに寄与しています。
ですから、マグネシウムが不足するとエネルギー効率が低下し、筋肉や神経、特に自律神経やホルモンバランスに悪影響が生じる可能性があります。
特にストレスが多い現代社会では、マグネシウムが大量に消費されやすいため、マグネシウム不足になりやすい環境と言えるでしょう。

朝に頭がぼんやりしたり、睡眠の質が悪く感じたりする原因も、マグネシウム不足が考えられます。マグネシウムが足りないと、気分を整えるセロトニンだけでなく、睡眠を促すメラトニンの生成も低下してしまうのです。これは、アミノ酸トリプトファンが代謝される過程で起こる現象で、このプロセスにはビタミンB6も欠かせません。
ビタミンB6を多く含む食品は、マグロ、サーモン、牛レバーなどが代表的です。
現代人がマグネシウム不足になりやすい理由
マグネシウムは、私たちの体内では作り出せない必須ミネラルです。
つまり、食事などからしっかりと摂取しなければならないということ。
しかし、近年はインスタント食品やファストフード、外食など、精製された食品を摂取する機会が増え、マグネシウムの摂取量が減少傾向にあります。
加工食品などに多く含まれるリンは、多量に摂取するとマグネシウムの吸収を阻害する性質を持っていますし、そもそも加工食品に含まれるマグネシウムの量は多くありません。
マグネシウムは特に海藻類や魚介類に多く含まれていますが、近年は「魚離れ」が深刻化してきています。
さらに、ストレスやアルコール、カフェインなどもマグネシウムの多大な消耗を促進し、マグネシウム不足を引き起こすきっかけになります。
ストレス社会と呼ばれる現代において、こうした事情から現代人はマグネシウム不足に陥りやすい傾向があるのです。
セロトニン欠乏のサインとは?
次に、セロトニンが欠乏したときに出やすいサインについて見てみましょう。
代表的な症状は、次の通りです。
- 朝起きるのがつらい、すっきりしない
- 日中にぼーっとしたり、疲れやすい
- 気分が落ち込みやすく、何をしても楽しく感じない
- つい甘いものや炭水化物に手が伸びる
- 肌荒れや便秘が気になる
このような状態が続いている場合は、セロトニン不足の可能性があります。
特にストレスの多い環境にいる方、睡眠リズムが乱れている方、アルコールやカフェインを摂取する習慣がある方は要注意です。
マグネシウムを効果的に摂取する方法

マグネシウムはセロトニンの生成を助けますが、ただ摂取するだけでは十分ではありません。
マグネシウムがしっかりと体内に取り込まれるよう、吸収率やバランスに配慮する必要があります。
ここでは、マグネシウムを取り入れるのに効果的な方法をご紹介します。
食事から摂る
マグネシウムを摂取するのにもっとも基本的かつ自然な方法は、「食事」です。
以下のような食品にはマグネシウムが多く含まれているので、意識的に摂取するようにしましょう。
- ナッツ類(かぼちゃの種、アーモンドなど)
- 大豆製品(納豆、豆腐、おからなど)
- 海藻類(あおさ、海苔、わかめなど)
- 全粒穀物(玄米、オートミールなど)
- 緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜など)
マグネシウムが豊富に含まれている食材については、「マグネシウムを効率よく摂る方法!豊富な食品ランキング&簡単献立例」にて詳しく解説しています。併せてご覧ください。

サプリメントを活用する
多忙な日々を送っていれば、食事から十分な量のマグネシウムを摂取するのは難しいかもしれません。
まして、料理を作る気力がない方や、料理が得意ではない方にとっては、食事の栄養バランスや献立を考えること自体がストレスかもしれません。
そんな時は、サプリメントを活用してマグネシウムを補うのも一つの方法です。
マグネシウムのサプリメントには、「クエン酸マグネシウム」や「グリシン酸マグネシウム」など、いくつかの種類があります。
自分の体質や目的に合ったサプリメントを選びましょう。

経皮吸収
近年注目されているのが、皮膚からマグネシウムを吸収する「経皮吸収」という方法です。
マグネシウムを含む入浴剤やオイル、スプレーなどを使用し、肌からじっくりと取り込むことができるのが特徴です。
特に入浴時は毛穴が開いているため、吸収効率が高まるといわれています。
リラックス効果もあるため、ストレス解消にも一石二鳥。
マグネシウム補給とリラックスタイムを兼ねた、現代人にぴったりの方法と言えるでしょう。

まとめ|マグネシウムでセロトニンの働きを高めよう

セロトニンは、私たちの心と体の健康を支えてくれる重要なホルモンです。
そして、その働きをサポートするのが、マグネシウムです。
現代人はどうしてもマグネシウム不足になりやすい環境にありますが、食事やサプリメント、経皮吸収といった方法を上手に取り入れることで、マグネシウム不足を予防することができます。
心が不安定な時、なんとなく元気が出ない時は、食生活を振り返り、マグネシウムを積極的に摂取する栄養バランスの整った食事を意識してみましょう。