ストレス社会といわれる現代ですが、「イライラしやすい」「集中力が続かない」「慢性的な疲労感が抜けない」などの不調を抱えていませんか?
その背景には、もしかすると「マグネシウム不足」が潜んでいるかもしれません。
マグネシウムは、エネルギー代謝や神経伝達、ホルモンバランスの調整など、心と体の健康を支える重要なミネラルです。
しかし、現代人は食生活の乱れやストレスなどにより、慢性的なマグネシウム不足に陥りやすいと指摘されています。
今回は、マグネシウムとストレスとの関係、さらに、マグネシウムを活用したストレス対策について、科学的な視点からわかりやすく解説します。
マグネシウム不足でストレスが悪化する理由

マグネシウム不足がストレス耐性に影響を与えるメカニズムは、次の通り大きく3つの要因に分けられます。
- 神経伝達物質のバランスが崩れるため
- ストレス応答ホルモンが過剰に分泌されるため
- 身体機能が低下することで精神面にも影響するため
それぞれ詳しく解説します。
神経伝達物質のバランスが崩れるため
マグネシウムは、脳内で「セロトニン」や「オキシトシン」「ドーパミン」など、いわゆる「幸福ホルモン」の合成に関与しています。
幸福ホルモンは、心身ともに健康的に暮らすために必要なものです。
たとえば、温泉に浸かったり焚き火を眺めたりしてリラックスした気分になるのは、セロトニンの分泌によるもの。
愛する我が子と触れ合ったり、好きな人とスキンシップを図ったりすることで幸せな気分になるのは、オキシトシンによるもの。
また、目標を達成したときの爽快感や、誰かに褒められたときの喜びは、ドーパミンの分泌によるものです。
これらの神経伝達物質は、幸せな気分や安らぎ、やる気などを呼び起こしますが、不足すると気分の落ち込みや不安感、イライラといった精神的不調が表れやすくなります。
マグネシウムは、ホルモンバランスを調整するために必要なだけでなく、特にセロトニンの産生に関与しています。
マグネシウムが不足すると神経伝達物質のバランスが崩れたり、セロトニンの産生量が低下したりして、心身のコンディションが低下しやすくなるのです。
参考:セロトニンを増やす方法とは?トリプトファンを含む食品と効果的な食事法│山梨県厚生連
参考:やる気を高める「ドーパミン」との上手なつき合い方│HELiCO
ストレス応答ホルモンが過剰に分泌されるため
マグネシウムは、ストレス時に分泌される「コルチゾール」の分泌抑制にも関与しています。
コルチゾールとは、ストレスを感じたときに副腎皮質から分泌されるホルモンで、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
体がストレスに適応できるように、ストレスを感じたときに脈拍や血圧を上昇させ、脳を覚醒させる抗ストレス作用があります。
もちろん、これは心身を守るための反応であり、生命を維持するために欠かせないホルモンです。しかし、コルチゾールの分泌が過剰になると、ストレスに過敏に反応しやすくなったり、脳の海馬(記憶を司る部位)が萎縮したりすることがわかっています。
マグネシウムは、コルチゾールの分泌量を適正に減らし、幸福ホルモンの分泌を促してホルモンバランスを調整するために必要な成分です。
参考:ストレスホルモン「コルチゾール」の働きとは!?│健康管理検定
身体機能が低下することで精神面にも影響するため
エネルギー代謝や筋肉の緊張緩和を含め、体の基本機能が低下すると、身体的な疲労感を強く感じやすくなります。
また、それが心の疲労へと波及し、精神的に落ち込みやすくなったり、やる気が出なくなったりしやすくなります。
心と体は密接ですから、身体的な不調を覚えると精神的に落ち込みやすくなりますし、精神的に落ち込むと、身体的なパフォーマンスも下がりやすくなります。
たとえば、競技の本番に向けてベストコンディションを整えたアスリートでも、本番直前に身内の訃報などよくない知らせを受けると、精神的に落ち込んで十分なパフォーマンスを発揮できない場合があります。
逆に、団体競技において、試合終盤でチームの士気が上がり、逆転勝利を収めるケースもあります。
このように、体と心には相関性があります。マグネシウムは筋肉の収縮や回復をサポートするだけでなく、ホルモンバランスを調整することでメンタル面にも影響するため、体と心の両方にアプローチするのに最適です。

マグネシウムはエネルギー代謝に深く関わっており、中でも多くのエネルギーを必要とする脳の細胞にとっては、なくてはならない栄養素です。細胞の中にあるミトコンドリアでは、マグネシウムが、ATP(細胞のエネルギー源)を生み出すクエン酸回路の働きを支えています。マグネシウムが不足すると、エネルギーをうまく作り出せなくなり、それが気分の変動などにつながることがあります。

マグネシウムと「体・ストレス」との関係

次に、体の健康とストレス耐性を支えるマグネシウムの役割について、さらに深掘りしていきましょう。
マグネシウムと体の関係
マグネシウムは、体内で約800種類以上の酵素の働きをサポートしています。
その役割は多岐にわたり、具体的には以下のようなものがあげられます。
- エネルギー産生および代謝の促進
- 血圧のコントロール
- ホルモン分泌のサポート
- 筋肉の収縮・弛緩の調整
- 心機能の維持など
マグネシウムが不足すると、集中力や記憶力の低下、倦怠感、気分の落ち込み、イライラ、頭痛など、さまざまな症状が現れやすくなります。
さらに、慢性的なマグネシウム不足は、心血管疾患リスクの上昇にも関連していると報告されています。ストレス対策だけでなく健康維持のためにも、マグネシウムは体に欠かせない重要な栄養素なのです。
参考:マグネシウム 骨の形成や心臓、神経の働きに深くかかわる│大正製薬
参考:マグネシウムの重要性│あんどう口腔クリニック
ストレスとマグネシウムの関係
先述した通り、マグネシウムはホルモンの分泌にも関わっており、セロトニン・オキシトシン・ドーパミンなど「幸福ホルモン」と呼ばれる神経伝達物質の産生に影響しています。
また、心を落ち着かせる神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)の働きを支援する役割もあります。
マグネシウムが不足すると、不安やイライラが増したり、慢性的な気分の落ち込みや集中力の低下などが起こりやすくなり、マグネシウム不足→ストレス耐性低下→さらにマグネシウム消耗…という悪循環に陥りやすくなります。
こうした負のサイクルを断ち切るためには、積極的なマグネシウム補給がポイントです。
現代人は特にマグネシウムが不足しやすい傾向にあるため、マグネシウムの積極的な摂取が求められます。
参考:幸せホルモンの種類と増やし方:セルフチェックと日常の実践│東京原宿クリニック

マグネシウムでストレスを緩和する5つの対策

ストレスに負けない心と体をつくるために、マグネシウムを効果的に取り入れる方法をご紹介します。
なお、「30秒で完了!マグネシウム診断」では、マグネシウム不足を自分で簡単に診断できます。マグネシウム不足が心配な方は、自己診断を試してみてはいかがでしょうか。

ストレス対策1|食事でマグネシウムを摂る
マグネシウムを摂るのにもっとも手軽な方法が、普段の食事を工夫することです。
マグネシウムを豊富に含む食品を積極的に摂取できるよう、献立やメニューを工夫しましょう。
以下は、マグネシウムを豊富に含む代表的な食品です。
食品名 | マグネシウム含有量(mg/100g) |
---|---|
あおさ(素干し) | 3200 |
あおのり(素干し) | 1400 |
乾燥わかめ(素干し) | 1000 |
かぼちゃの種 | 530 |
アーモンド | 290 |
納豆 | 100 |
玄米 | 49 |
ほうれん草(茹で) | 40 |
参照:食品成分データベース│文部科学省
食事からマグネシウムを摂取する際のポイントは、マグネシウムを豊富に含む食事を習慣化することです。
たとえば、朝食に納豆ごはん、おやつや間食に素焼きアーモンドを取り入れるだけでも、マグネシウムを効果的に摂取できます。
ただし、マグネシウムの食品からの吸収率は約30%とされており、他のミネラルと比べても低めです。
マグネシウムの効率的な補給には入浴剤やサプリメントなどを併用し、食事ではトータルケアを意識して「栄養バランスの良い食事」を心掛けるのがおすすめです。

ストレス対策2|マグネシウムを含む入浴剤を使用する
マグネシウムの摂取には、経皮吸収という方法も有効です。簡単に言うと「皮膚からも摂取できる」ということ。
特に「エプソムソルト(硫酸マグネシウム)」を使用した入浴は、リラックス効果とマグネシウム補給を同時に叶える方法として、欧米ではポピュラーな方法です。
実際の研究でも、マグネシウムを溶かしたお風呂に入浴し続けると、数日間で体内の血中マグネシウム濃度が上昇することがわかっており、マグネシウムを効率的に摂取する方法として注目されています。
ストレス対策3|サプリメントでマグネシウムを摂る
食事だけでマグネシウムを十分に補おうとすると、食材を吟味したり献立を考えたりする必要があります。多忙な現代人にとっては、あまり現実的な方法ではないかもしれません。
そんなときは、サプリメントでマグネシウムを摂取するのも一つの選択です。
ただし、高濃度のマグネシウムはなかなか吸収されないことと、過剰に摂取した場合や体質に合わない場合は、下痢や吐き気・嘔吐などを引き起こす可能性があります。
一度に多量を摂取するのではなく、少しずつ小分けにしたり、食後にサプリメントを飲んで体への吸収を穏やかにしたりなどして工夫しましょう。

ストレス対策4|マグネシウムを含むクリームを活用する
マグネシウムは皮膚から摂取することができるので、当然マグネシウムが添加されたバームやクリームなども有効です。
特に、肩や首、ふくらはぎなど、疲れやすい部位にマッサージしながら塗り込むと効果的。リラックスとマグネシウム補給を同時に叶えることができます。
サプリメントの味が苦手な人や、錠剤やカプセルを飲み込むのが苦手な人などにもおすすめの方法です。

ストレス対策5|マグネシウム+αで相乗効果を図る
マグネシウムと相性がいい成分を積極的に取り入れると、さらなる効果が期待できます。
たとえば、マグネシウムの吸収と活用をサポートするビタミンDを多く含む食品を一緒に食べたり、ストレス緩和やリラックス効果などに期待されている注目の成分「CBD」を併用したりなどです。
以下は、ビタミンDを多く含む食品の一覧表です。
食品名(重量) | ビタミンD含有量 |
---|---|
鮭の切り身(1切れ/80g) | 25.6μg |
いわしの丸干し(1尾/30g) | 15.0μg |
さんま(1尾/正味100g) | 14.9μg |
かれい(小1尾/正味100g) | 13.0μg |
ぶり(1切れ/80g) | 6.4μg |
しらす干し(大さじ2/10g) | 6.1μg |
きくらげ(2枚/2g) | 1.7μg |
干ししいたけ(2個/6g) | 0.8μg |
参照:ビタミンDを多く含む食品│公益社団法人 骨粗鬆症財団
近年は、マグネシウムとCBDを組み合わせたスキンケア製品なども開発されています。
CBDは「カンナビジオール(Cannabidiol)」の略で、リラックス効果や鎮静化作用が期待されている大麻植物に含まれる成分の一つです。
いわゆる「ハイになる」ような精神作用がなく、メンタルヘルスや美容だけでなく医療分野においても有用な成分であることが明らかになってきており、ストレスケアの新しい選択肢として世界的に注目されています。

参考:CBDのリラクゼーションとアンチエイジングの効果について~使用時の注意も解説│セントラルメディカルクラブ世田谷
参考:カンナビジオール(CBD)│MSDマニュアル家庭版
まとめ|マグネシウムでストレスに負けない心と体をつくろう

マグネシウムが不足しがちな現代において、マグネシウム不足により知らず知らずのうちに心身のストレス耐性が低下し、慢性的な不調が引き起こされるリスクについて、よく考える必要があります。
マグネシウムは海藻類に豊富に含まれていますが、近年は食の欧米化や多様化により、日本食の需要も減っています。ただでさえ、過大なストレスにさらされがちな現代社会です。
だからこそ、意識的にマグネシウムを摂取し、生活習慣に「ちょっとした工夫」を取り入れることが重要です。
ストレスを感じたときこそ、自分の体と心に優しいケアを!
マグネシウムを味方に、明るく健やかな毎日を手に入れましょう!