マグネシウムと動悸の関係|不整脈や心臓の不調を改善に導く3つの摂取法

マグネシウムと動悸の関係|不整脈や心臓の不調を改善に導く3つの摂取法

「動悸の原因は心臓」

そう思う方も多いのではないでしょうか?

しかし、そのほかにも考えられる要因があります。

それはマグネシウム不足です。

医学論文では、マグネシウム不足が心房細動などの不整脈リスクを高めることが報告されています

そのため、マグネシウムは動悸や心疾患を予防する栄養素の1つと考えられるのです。

そこで今回はマグネシウムと動悸の関係や、論文から読み取れる不整脈との関係、マグネシウムの働き、効果的な3つの摂取法を解説します。

動悸にお悩みの方は本記事を参考にすることで、マグネシウムの知られざる効果を知り、摂取し続けることで今以上に健康に過ごせるようになるかもしれません。

マグネシウムと動悸の関係

マグネシウムと動悸の関係と動悸

マグネシウムは私たちの体内で800以上の酵素反応に関わっているだけでなく、動悸にも深く関係しています。
その理由を詳しくみてみましょう。

マグネシウムは電気信号の伝達をしている

マグネシウムは、心筋細胞の電位を調節する際に重要な役割を果たします。

ヒトの全ての細胞は電気のような信号を伝達しあいながら生命活動をおこなっており、電圧の変化は細胞内外のイオン(マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)の濃度に依存しています。

心筋細胞の活動電位もまた、イオンに依存していて、これらのイオンは細胞膜を通じて移動し、心筋細胞の収縮とリラックスを制御します。

マグネシウムは、特にカリウムとカルシウムの移動を調節することにより、正常な心拍リズムをサポートしているのです。

マグネシウムとそのほかのイオンの心拍への影響は以下です。

ナトリウム(Na+)

ナトリウムイオンの流入は活動電位の立ち上がりに関与し、迅速に電位の変化を引き起こします。
マグネシウムは、ナトリウムチャネルの適切な機能をサポートし、過度なナトリウム流入を防ぐ役割を果たします。

カリウム(K+)

カリウムイオンが適切に細胞内から外へ流出するのを助け、細胞を安静状態に戻します。
また、マグネシウムはATPの安定化に関与し、ナトリウム-カリウムポンプの効率的な機能をサポートします​ 。

カルシウム(Ca2+)

カルシウムイオンの流入は筋収縮の引き金となり、特に心筋の収縮において重要です。
マグネシウムは、カルシウムチャネルの機能を制御し、過剰なカルシウムの流入を防ぐことで、過度な心筋収縮を抑制します​。

マグネシウムは電気的な安定性を維持し、心拍の異常なリズムや不整脈の発生を防ぐ効果を持っています。

マグネシウムが不足すると、これらのイオンのバランスが崩れ、心筋の電気的活動が乱れる可能性もあるのです。
その結果、不整脈やそのほかの心血管疾患のリスクが増加することがあります。

マグネシウムは心筋の収縮と弛緩を調整している

マグネシウムは筋肉の収縮と弛緩を調節する際に、カルシウムの作用を拮抗する重要な役割を果たします

筋収縮の過程では、カルシウムイオンが筋細胞内に流入して収縮が引き起こされます。

つまり、カルシウムは筋肉をぎゅっと収縮させる働きがあり、心筋でできている心臓もカルシウムによって収縮されるのです。
ここで、マグネシウムは以下のように働きます​​。

【カルシウムの流入抑制】
マグネシウムはカルシウムチャネルをブロックすることで、細胞内への過剰なカルシウムの流入を防ぎます。

そのため、筋細胞の過度な興奮を抑制し、適切な収縮と弛緩のバランスを維持するため、心臓の筋肉も過剰な収縮が抑制されるのです​。

【カルシウムの再取り込み】
マグネシウムは、カルシウムを再取り込みする際にも重要です。

細胞内の構造のひとつ、小胞体はカルシウムを貯蔵し、必要に応じて放出することで筋収縮を調節しています。

カルシウムが一度放出されたあと、筋肉の収縮活動が終わると再度小胞体に取り込まれます。
でもマグネシウムが不足すると、カルシウムの再取り込みが不十分となり、筋肉の緊張が持続する可能性があるのです。

このように、マグネシウムはカルシウムの作用を調整することで、心筋やそのほかの筋肉の正常な機能をサポートしています。

マグネシウムが不足すると、カルシウムの過剰な作用が引き起こされ、筋肉の過度な収縮や痙攣、さらには心筋の異常なリズム(不整脈)を引き起こすリスクが高まるのです。

下記では海外でも著名な医師Peter Gliddenが、マグネシウムと高血圧に関与する動悸について話しています。

Dr. Gliddenの話を簡単に要約すると次の通り。

血管の動脈は筋肉の動きを利用してポンプのように血液を送っています。

筋肉はカルシウムで収縮し、マグネシウムで弛緩する。

そのため、心臓につながる動脈もカルシウムとマグネシウムを利用して、リズムよく血液を送ることができるのです。

しかし、体内のマグネシウム値が低下し、カルシウム値の割合が高くなると、血管は収縮し続けた状態となってしまいます。

例えるなら水を出すホースと言えるでしょう。
ホースから水を流しているときにホースをつまむと、水の出入り口が狭まり、水が勢いよく出ようとします。

血管も同じで、カルシウムによって収縮が続くと血液が勢いよく飛び出し、血圧が上昇するのです。

マグネシウムと不整脈の関係:論文からわかる効果とは?

マグネシウムと不整脈の関係:論文からわかる効果とは?

マグネシウムは海外では多くの研究がおこなわれているミネラルの1つ。
動悸や不整脈、心疾患と関連するマグネシウムのリサーチを見ていきましょう。

論文①
マグネシウムと不整脈についての研究

以下は2017年に発表されたマグネシウムと不整脈の研究についてまとめたものです。

研究方法

この研究は、マグネシウムの補充が心不整脈の治療に及ぼす影響を評価するために行われました。

研究は、カルシウム、ナトリウム、カリウムチャネルを調節するマグネシウムの役割を中心に、心筋細胞の活動電位に対する影響を調査しました。

結果

マグネシウムの補充により、心室性不整脈(特に心室頻拍)の発生率が低下。

具体的には、心室頻拍の発生率はマグネシウム補充群で5.67%、プラセボ群で15.04%となりました。

また、心房細動の発生率もマグネシウム補充群で9.72%、プラセボ群で22.37%と、マグネシウム補充群が有意に低下しています。

結論

マグネシウム補充は、心室性および心房性不整脈の予防と治療に有効である可能性が示唆されました。

この研究は、マグネシウムが心筋細胞のイオンチャネルを調節し、不整脈の発生を抑制する役割を強調しています。

参考:Treating arrhythmias with adjunctive magnesium: identifying future research directions|PubMed

論文②
マグネシウムと不整脈の臨床試験を分析・評価

2018年に発表された論文では、1986年から2017年に発表された22の臨床試験を分析し、マグネシウム補充群とプラセボ群の比較をおこなっています。

分析・評価方法

急性冠症候群後の心不整脈に対するマグネシウム補充の効果を評価。

研究は、1986年から2017年に発表された22の臨床試験を分析し、マグネシウム補充群とプラセボ群の比較をしました。

被験者人数

合計6061名(マグネシウム群2987名、プラセボ群3074名)

結果

マグネシウム補充により、心室頻拍の発生率がマグネシウム群で5.67%、プラセボ群で15.04%と有意に低下しました。


また、心房細動の発生率もマグネシウム群で9.72%、プラセボ群で22.37%と低下。

全体として、心不整脈の発生率がマグネシウム群で11.88%、プラセボ群で24.24%と有意に減少しました。

結論

マグネシウム補充は急性冠症候群後の心不整脈の発生を有意に低減させることが示されました。

この研究は、心血管疾患患者に対するマグネシウム補充の重要性を強調しています。

参考:Evaluating the effect of magnesium supplementation and cardiac arrhythmias after acute coronary syndrome: a systematic review and meta-analysis|PubMed

動悸・不整脈だけじゃない!マグネシウムの4つの効果

動悸・不整脈だけじゃない!マグネシウムの4つの効果

マグネシウムは人体にとって必須のミネラルであり、多くの生化学的反応に関与しています。

ヒトは三大栄養素と呼ばれる「糖質・タンパク質・脂質」や、必須ビタミン・必須ミネラルなどの補酵素と呼ばれる栄養素で作られています。

ただし、これらは酵素の働きによって生命活動が可能になっており、ヒトの体は酵素なくしてはただの物質です。

マグネシウムはこの酵素の働きをサポートする栄養素の一種。

マグネシウムが不足すると、特定の酵素の働きが低下する可能性があり、体にさまざまな影響が現れることがあります。

以下の4つは、マグネシウムの主な働きです。

酵素反応の補因子

マグネシウムは、800以上の酵素反応の補因子として機能し、エネルギー生成、DNA合成、タンパク質合成、神経伝達物質の放出などに関与しています​​。

骨の健康

カルシウムとともに骨の構造を形成し、骨密度の維持に重要な役割を果たしています。
マグネシウム不足は骨粗しょう症のリスクを高める可能性があります​ ​。

神経と筋肉の機能

マグネシウムは神経インパルスの伝達と筋肉の収縮・弛緩に必要です。
不足すると、筋肉のけいれんや神経系の異常が発生することがあります​ ​。

心血管の健康

心拍数と血圧の調節に関与し、適切なマグネシウムレベルは不整脈の予防に役立つとされています​ ​。


マグネシウムは私たちが生きていく上で必須のミネラルです。

そんなマグネシウムの働きや効果について、以下の記事ではさらに詳しく解説しているので、こちらもあわせてご覧ください。

マグネシウムの効果とは?体に効く理由と効率的な3つの摂取方法を完全解説


また、血圧が気になる方は、こちらを参考にしてください。

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

マグネシウムで血圧が下がるのか、それとも、上がるのか。
その答えがわかりますよ。

マグネシウム不足のセルフチェックで動悸や不整脈を予防

マグネシウム不足のセルフチェックで動悸や不整脈を予防

現代人の多くがマグネシウム不足だと言われている大きな理由は、食生活にあります

昔はワカメや海藻類、玄米や麦などを食べていましたが、現代では加工された食品や精製された食品が中心(玄米が精製されて白米に。麦も精製されて小麦粉になっています)。

砂糖などの精製された食品や添加物、農薬が使用された土壌で育つ野菜などはマグネシウムなどの栄養をほとんど含んでいないだけでなく、マグネシウムを消耗してしまう食べ物です。

また、慢性的な疲れやストレス、飲酒などもマグネシウムを多く消耗する要因になります。

関連記事:マグネシウム不足の原因とは?体に起こる症状や改善策も解説!

近年では若い世代でも動悸や不整脈を感じる人が増えており、これらは心臓に負担がかかっている証拠です。
これが長期化すると心疾患にもつながってしまう可能性があります。

そこで、マグネシウム不足がなんとなく気になった方は、以下のセルフチェックをご活用ください。

14問の質問に回答していくだけで、自分にマグネシウムが足りているのかどうかの目安が、わずか1分ほどで表示されます。

 マグネシウム不足のセルフチェックする /

マグネシウム不足による動悸を改善する3つの摂取法

マグネシウム不足による動悸を改善する3つの摂取法

ここでは普段あまり意識することのない、マグネシウムの効果的な摂取方法を3つご紹介します。
今日からすぐに実践できる方法なので、まずは1つだけでも試してみてはいかがでしょうか。

 食事から摂取する

食事からのマグネシウム摂取は、体に優しく、過剰摂取のリスクがほとんどありません

特に動悸改善に効果的なマグネシウムを豊富に含む食品は、海藻類、ナッツ類、豆類、穀物、緑色の野菜などです。

具体的な食品やマグネシウムの含有量は以下の記事で解説しているので、こちらをご参考にしてください。

マグネシウム不足を改善する食べ物ベスト10!効果的な摂取方法も解説 マグネシウム不足を改善する食べ物ベスト10!効果的な摂取方法も解説

サプリメントから摂取する

マグネシウムは海藻や玄米からも取り入れることができますが、これまでの食生活を一気に変えるのは大変ですよね。
また近年は土壌や海水の汚染によって、原材料自体の栄養やマグネシウムも減少傾向にあると言われています。

そのため、生活習慣に合わせて、サプリメントでマグネシウムを取り入れてみるのも◎

ただし、マグネシウムはサプリの構造やマグネシウム自体の種類によって吸収されにくい場合があります
そのため、吸収率を意識したサプリを選ぶようにしましょう。

【マグネシウムの種類】サプリで使用される10種類のマグネシウム|効果と特徴 【マグネシウムの種類】サプリで使用される10種類のマグネシウム|効果と特徴

皮膚から摂取する(経皮吸収)

マグネシウムは経皮吸収ができるため、海外では湯船に入れて入浴時に使用するマグネシウム製品もメジャーです。

ただし、入浴で使用するものは入浴中にしかマグネシウムを吸収できないのに対し、肌に塗るものはより長時間マグネシウムをゆっくり吸収することができると考えられています。

最近ではスキンケアの一部として、マグネシウム含有のバームやクリームを利用する人も増えています。

マグネシウムは動悸や不整脈だけでなく、肌の改善にも役立つとされているため、経皮吸収でもさまざまなメリットが期待できます。

下記ではマグネシウムの肌への効果についてまとめていますので、あわせてご参照ください。

マグネシウムによる肌への効果は?スキンケアしながら肌バリア機能をサポート マグネシウムによる肌への効果は?スキンケアしながら肌バリア機能をサポート

まとめ|マグネシウムの摂取で動悸・不整脈の不調を改善に導こう!

マグネシウムは、筋肉だけでなく動悸や心臓の働きにも関わる重要なミネラルです。

心筋の収縮・弛緩、リズムを安定させる役割があり、不足すると動悸や不整脈などの不調を招くことがあります。

そのため、食事やサプリ、経皮吸収などで適切に補うことで、血圧や心拍の安定にもつながり、心臓を健やかに保つサポートが期待できます。

まずは毎日の食事からマグネシウムを摂取するなど、自分がやりやすい方法を試してみるのがおすすめです。

大切なことは日々、マグネシウムの摂取を継続することです。
ご自身の無理のない範囲で、まずはできることからはじめてみましょう。