マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

マグネシウムは体内で起こる600〜800種類の酵素反応に関わる重要なミネラルであり、その働きの一つに血圧の調整があります。

「マグネシウムは血圧を下げるのか?それとも上げるのか?」

結論からお伝えすると、マグネシウムには血圧を下げる効果が期待されており、特に経皮吸収(皮膚からの摂取)は副作用が少なく、継続しやすい方法の一つだと考えられます。

今回はマグネシウムが血圧に与える影響やその仕組み、科学的な根拠(論文)、経皮吸収の効果的な方法をわかりやすく解説します。

高血圧でお悩みの方にはご自身の血圧を下げるヒントとなるかもしれませんので、ぜひ最後までお読みください。

マグネシウムで血圧は下がる?血圧にどう影響するのか?

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

まずはマグネシウムの基本的な働きと、マグネシウム不足によって血圧にどのような影響があるのか確認していきましょう。

マグネシウムの基本的な働き

マグネシウムは体内の約600~800種類の酵素反応に関わっており、私たちが生命を維持するのに欠かすことのできないミネラルです。

主な働きは以下のように、多岐に渡ります。

  • タンパク質の合成
  • 骨の強度の維持
  • 神経伝達のコントロール
  • ストレスの緩和
  • 心機能の維持
  • 筋肉の弛緩
  • 便秘の改善
  • 肌の保湿・バリア機能
  • 血圧の調節

このなかでも「血圧の調整」に関しては、マグネシウムが血管を拡張させることによって、血圧を下げる効果が期待されます。

また、カルシウムと拮抗して過度な血管の収縮を防ぎ、血流がスムーズになる役割も果たしています。

マグネシウムの働きや効果については、以下の記事でさらに詳しく紹介しているので、あわせてご覧ください。

マグネシウムの効果がすごい!体に効く理由と正しい摂り方を完全解説

マグネシウム不足で起こる血圧上昇のリスク

マグネシウムは私たちの健康にとって重要なミネラルではありますが、食の欧米化や加工食品の摂取、ストレスにさらされやすい環境、アルコールの摂取など、現代人にとって不足しがちなミネラルだと言えます。

厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」では、「成人のマグネシウム推奨量」が約270~370mg/日であるのに対して、「成人の1日あたりの平均摂取量」は247.1mgであり、推奨量を下回っていることが明らかになっています。

参考:令和元年国民健康・栄養調査報告|厚生労働省

マグネシウムが不足すると血管が収縮しやすくなり、血圧が上昇する一因になります。

また、高血圧が続くことで脳卒中や心筋梗塞、腎機能の低下などにもつながり、命に関わる危険性も生じるため、積極的な補給が求められます。

マグネシウムで血圧が下がる?エビデンス(論文)を紹介

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

マグネシウムと血圧の関係を証明する科学的な論文はいくつか存在します。

ここでは、代表的な研究例を2つ紹介し、マグネシウムがどのように血圧を下げるかを検証します。

2016年に海外で調査された以下の研究では、マグネシウムの補給が血圧低下につながることを示しています。

調査目的マグネシウムの補給が成人の血圧を下げるかどうかを評価するため、これまでの信頼できるエビデンスをまとめて効果を確かめる
調査対象正常な血圧の人と高血圧の人、あわせて2,028人の大人(18才以上)が参加した34件の研究データ
調査方法・世界の医学データベースから、マグネシウムを飲んだ人と飲まなかった人を比べた研究を調査。
・それぞれの研究結果を計算でまとめて、血圧がどれだけ変わったかを分析。
・1日にどれくらい飲んだか、どのくらいの期間続けたかもあわせて比較。
調査結果・1日平均368mg、3か月間マグネシウムを飲み続けると
 → 上の血圧(収縮期)が約2mmHg下がった
 → 下の血圧(拡張期)が約1.8mmHg下がった
・血液中のマグネシウムも少し増えていた。
・1日300mg以上、1か月以上続けると、よりはっきりした効果が見られた。
マグネシウムの量が多いほど、「下の血圧」が下がる傾向があった(「上の血圧」との関係は見られなかった)。

参照:Effects of Magnesium Supplementation on Blood Pressure: A Meta-Analysis of Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trials|PubMed

また、2020年に公表された2型糖尿病患者を対象とした研究では、マグネシウムの補給が収縮期血圧と拡張期血圧の両方を有意に低下させることが報告されています。

“However, pooling seven RCTs together showed significant reduction of systolic blood pressure (WMD: – 5.78 mmHg, 95% CI: – 11.37 to – 0.19) and diastolic blood pressure (WMD: – 2.50 mmHg, 95% CI: – 4.58 to – 0.41) in T2DM patients.”
「しかし、7件のRCT(無作為化臨床試験)を統合した解析では、2型糖尿病(T2DM)患者において、収縮期血圧が平均で5.78 mmHg(95%信頼区間:-11.37 ~ -0.19)、拡張期血圧が2.50 mmHg(95%信頼区間:-4.58 ~ -0.41)有意に低下することが示されました」
引用:The Effects of Magnesium Supplementation on Blood Pressure and Obesity Measure Among Type 2 Diabetes Patient: a Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials|PubMed

これらの研究から、マグネシウムの摂取によって血圧が下がる効果が期待できるといえるでしょう。

注意点として、紹介した研究は、どちらもマグネシウムの経口摂取による血圧への影響を記したエビデンスです。経皮吸収でのエビデンスはまだまだ不足しているのが現状です。

マグネシウムの経皮吸収は血圧対策に効果的?

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

マグネシウムの摂取方法には大きく分けて、「口から摂り入れる経口摂取」と「皮膚から浸透する経皮吸収」の2つがあります。

ここでは以下の2点を深掘りしつつ解説していきます。

  • 経口摂取と経皮吸収の違いと特徴
  • 部位ごとの経皮吸収率

注意点として、マグネシウムの経口摂取による血圧低下の効果については、一定のエビデンスがあるものの、「マグネシウムの経皮吸収によって血圧が下がる」という明確なエビデンスは現在不足しており、経皮吸収に関してさらなる研究が求められています。

しかし、間接的に血圧への好影響は考えられると、研究者のAlexander Audetteは話しています。

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

マグネシウム補給(経口および経皮の両方)による副次的な効果の一つとして挙げられるのが、「ビタミンDの活性化」です。

活性化されたビタミンDの血中濃度が十分な人は、血圧が低い傾向にあることが複数の研究で示されています。

マグネシウムの補給がすべての人の血圧問題を解決するわけではないものの、高血圧の人の約3分の1は、さまざまなメカニズムを通じて血圧が下がる可能性があるとされています。

経口摂取と経皮吸収の違いと特徴

経皮摂取と経皮吸収の特徴をまとめたものが、以下の一覧です。

摂取方法特徴
経口摂取・食品やサプリメントから摂取
・消化吸収に時間がかかりやすい
・胃腸に負担がかかる場合がある
経皮吸収・皮膚から直接吸収
・胃腸に負担をかけない
・必要な部位に届けやすい
・副作用が少ない

特に経皮吸収は、日常的に無理なく取り入れやすく、胃腸が弱い方や薬を多く服用している方にも適していると言えます。

また、マグネシウムは摂りすぎると人によっては下痢などの副作用が出ることがありますが、経皮吸収ではそうしたリスクが少ないこともメリットの1つです。

経皮吸収についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にご覧ください。

経皮吸収とは?肌から成分が吸収される仕組みを分かりやすく解説 経皮吸収とは?肌から成分が吸収される仕組みを分かりやすく解説

部位ごとの経皮吸収率

経皮吸収率は、以下のように部位ごとに異なります。

<部位ごとの経皮吸収率>

部位相対的な経皮吸収率(腕の内側の皮膚を1.0とした場合)
陰部42倍
6倍
頭皮3.5倍
背中1.7倍
腕の内側(基準)1倍
手のひら0.83倍
足のうら0.14倍

参照:Regional variation in percutaneous penetration of 14C cortisol in man|PubMed

一般的に陰部や顔、頭皮などの皮膚が薄く血流が豊富な部位は吸収効率が高く、手のひらや足のうらなどの皮膚の厚い部位は吸収率が低いとされています。

こうした部位ごとの吸収率の違いを知ることで、より効率よくマグネシウムを体内に取り入れられるでしょう。

経皮吸収率は部位別に異なる?頭皮・陰部の吸収率と経皮毒が腎臓に与える影響 経皮吸収率は部位別に異なる?頭皮・陰部の吸収率と経皮毒が腎臓に与える影響

マグネシウムを効率的に経皮吸収するおすすめの方法

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

では、どうやってマグネシウムを経皮吸収させるのが効果的なのでしょうか?

マグネシウムを経皮吸収で取り入れる実践的な方法を2つご紹介します。

  • マグネシウムクリーム、バームの塗布
  • エプソムソルト(硫酸マグネシウム)入浴

以下で一つずつ見ていきましょう。

マグネシウムクリーム、バームの塗布

一つは、クリームやバームタイプのマグネシウム製品を肌に直接塗布する方法です。

使い方は気になる部位にサッと塗布するだけ。

手軽に塗ることができますし、カバンやポーチなどに携帯しておけば自宅だけでなく会社や外出時にでも気になるときにすぐに利用できるので便利です。

継続的に使用することで、マグネシウム不足を補い、血圧が下がることが期待されます。

エプソムソルト(硫酸マグネシウム)入浴

もう一つは、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)を使った入浴です。

エプソムソルトは名前に「ソルト」とありますが、実際には塩ではなく、硫酸マグネシウムの結晶です。

海外では昔から広く利用されており、体を温めるだけでなく、筋肉の緊張を和らげたり、気分を落ち着かせる効果も期待できます。

浴槽に約200〜300gのエプソムソルト(硫酸マグネシウム)を入れて、15〜20分ほど入浴すればいいので、誰でも簡単に取り入れやすい点も魅力ですね。

エプソムソルトについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考にしてください。

エプソムソルトの効果を最大化!知っておきたい効能&正しい使い方

まとめ|マグネシウムの経皮吸収で血圧改善を目指そう!

マグネシウムで血圧は下がる?上がる?経皮吸収での効果とおすすめの使用方法も紹介

マグネシウムは、私たちの健康に不可欠なミネラルのひとつであり、血圧を下げる効果が期待できます。

食事からマグネシウムを摂取するのが最も自然な方法ではありますが、仕事や家事、育児など慌ただしい毎日のなかで、経皮吸収という手軽で副作用の少ない摂取方法を取り入れることは、継続的に無理なくマグネシウムを摂り入れるのに役立つはずです。

血圧が気になる方は、今回ご紹介したマグネシウムクリームやバームの塗布、エプソムソルト入浴など、日常生活に取り入れやすい方法から始めてみてはいかがでしょうか?