酸化マグネシウムは慢性胃炎や便秘症、尿路結石の発生予防などさまざまな疾患に使用される薬剤であり、特に便秘薬としては古くから年齢を問わず幅広く使用されています。
しかし、一部の薬や食品・サプリメントと一緒に併用することで、副作用が出やすくなったり、薬の効果が十分に得られなかったりする可能性があります。
今回は酸化マグネシウムと飲み合わせに注意が必要な薬や食品、飲み合わせによる副作用の事例、そして、安全な摂取方法についてわかりやすく解説します。
そもそも酸化マグネシウムとは?

酸化マグネシウムは、医薬品から健康食品、サプリメントまで幅広い分野で使用されているマグネシウムと酸素の化合物の一種です。
酸化マグネシウムの代表的な働きと副作用について、以下の一覧で確認していきましょう。
主な働き | 説明 |
---|---|
便秘の改善 | 腸内の水分量を増やして便をやわらかくし、排便を促す |
制酸作用 | 胃酸を中和し、胸やけ・胃の不快感・慢性胃炎などの改善に役立つ |
尿路結石の予防 | 尿の性質を整えることで、シュウ酸カルシウム結石の形成を防ぐ |
ミネラルの補給 | 筋肉のけいれん、つりの予防、ストレス・不安の緩和、血圧や血糖の安定などに作用する |
一方、酸化マグネシウムの使用により、以下のような副作用やリスクが報告されています。
副作用 | 説明 |
---|---|
一般的な副作用 | 下痢や腹痛、吐き気。特に高用量での使用や長期の使用時に発生しやすいです。 |
過剰に摂取した場合の副作用 | 高マグネシウム血症(筋力の低下、倦怠感、吐き気、低血圧、不整脈、呼吸抑制、昏睡など)。 ※特に腎機能が低下している方は注意が必要です。 |
ごく稀な副作用 | 発疹、じんましん、呼吸困難、顔や喉の腫れなど。 |
また酸化マグネシウム以外にも、マグネシウムにはさまざまな働きをもつ種類があるので、こちらの記事も合わせてご覧ください。



高マグネシウム血症は、通常の生活を送っている人にはほとんど起こりません。
高マグネシウム血症は主に、完全に点滴による栄養管理を受けている入院患者や、腎機能が著しく低下したステージ4の腎不全の患者に見られるものであり、一般の人にとっては非常に稀なケースです。
また、マグネシウムをビタミンD3と一緒に摂取しても、高カルシウム血症(血中カルシウム濃度が高くなりすぎる状態)を引き起こすことはありません。
高カルシウム血症の主な原因は、カルシウムとビタミンDの過剰摂取によるものであり、マグネシウム自体がそのリスクを高めるわけではないのです。
むしろ、マグネシウムには高カルシウム血症の発生を防ぐ働きがあると考えられています。
酸化マグネシウムとの飲み合わせに注意が必要な「薬」

酸化マグネシウムと一緒に服用すると、薬の効果が弱まったり吸収が妨げられたりする薬があるため、ここでは飲み合わせに注意が必要な薬を紹介していきます。
薬の名称 | 具体例 | 副作用・リスク |
---|---|---|
テトラサイクリン系抗生物質 | ・ミノサイクリン ・ドキシサイクリン | 酸化マグネシウムと結合して吸収が低下し、効果が弱まる |
ニューキノロン系抗菌薬 | ・レボフロキサシン ・シプロフロキサシン | マグネシウムと結合して抗菌効果が低下する |
鉄剤 | ・フェロミア ・フェルム | 酸化マグネシウムが胃内で鉄と反応し、鉄の吸収が阻害される |
カルシウム剤・ビタミンD製剤 | ・カルシウム剤 ・ビタミンD3製剤 | 高カルシウム血症や高マグネシウム血症になるリスクが上がる |
利尿薬 | ・フロセミド | 血中電解質のバランスが崩れる可能性がある |
こうした薬と酸化マグネシウムを飲み合わせることで、効果が弱まったり、吸収が阻害されてしまう場合がありますが、同時に服用しなければ大きな問題になならないでしょう。
また、酸化マグネシウムと薬の服用間隔を2〜3時間程度ずらして服用することで、こうした副作用やリスクを低下させられます。

薬との相互作用についても、少し注意が必要です。
多くの場合、薬剤が体内のマグネシウムを消耗させてしまうことがあり、そのような場合にはマグネシウムを補う必要があります。
また、薬とマグネシウムを同時に摂ると、互いの吸収が競合してしまうことがあり、効果が薄れてしまう可能性があります。
特に酸化マグネシウムは吸収率が低く、そのために下剤としての作用が強いのですが、その低い吸収性ゆえに一部の薬の吸収を妨げる可能性もあります。
さらに、吸収率の高い他のタイプのマグネシウムであっても、薬との相互作用については同様の注意が必要です。
そのため、薬を服用している場合には、マグネシウムサプリメントの摂取タイミングをずらして、数時間間隔を空けて摂ることが推奨されます。
酸化マグネシウムとの飲み合わせに注意が必要な「飲食物」

薬だけではなく、日常的に摂取する飲食物の中にも、酸化マグネシウムと飲み合わせが良くないものがあります。
代表的なものは乳製品(牛乳やヨーグルト)、カフェインを含む飲料(コーヒー・緑茶)、アルコールなどです。
乳製品に含まれるカルシウムやリン酸塩はマグネシウムと競合し、吸収を阻害する場合があります。
また、カフェインやアルコールは利尿作用によってマグネシウムの体外排出を促進するため、せっかく摂ったマグネシウムが十分に活用されなくなる可能性があります。
普段口にする程度の摂取量であれば問題となりにくいですが、大量に牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂ることは控えるようにしましょう。
目安として、1回500mL以上、1日1L以上の摂取は避けたほうが良いでしょう。

なぜ酸化マグネシウムと飲み合わせ(併用)に注意が必要なのか?

ここまで酸化マグネシウムと相性が悪い薬や飲食物を紹介してきましたが、なぜそれほどまでに「飲み合わせ」が重要なのでしょうか?
アメリカの医療・薬学情報サイトとして長年の実績をもつ「Drugs.com」によれば、酸化マグネシウムと薬の相互作用について以下のように述べています。
“There are 230 drugs known to interact with magnesium oxide, along with 1 disease interaction. Of the total drug interactions, 10 are major, 128 are moderate, and 92 are minor.”
「酸化マグネシウムと相互作用が知られている薬剤は230種類あり、疾患との相互作用も1件報告されています。そのうち、
・重大な相互作用:10件・中等度の相互作用:128件・軽度の相互作用:92件
が確認されています。
引用:Magnesium oxide Interactions|Drugs.com
このように、酸化マグネシウムは非常に多くの薬剤と何らかの形で相互作用を持ち、場合によっては重篤な状態につながるリスクもあるため、服用中の薬剤との兼ね合いには十分な注意が必要なのです。
次章からは酸化マグネシウムと飲みあわせによって起こる具体的な症状や副作用について解説します。
酸化マグネシウムとの飲み合わせによる症状・副作用

酸化マグネシウムと相性の悪い薬や食品を一緒に摂取すると、体に以下のようなさまざまな症状や副作用が現れることがあります。
軽度な副作用 | 下痢、腹部の張り、胃もたれ |
重度な副作用 | 高マグネシウム血症(吐き気、低血圧、意識障害、筋力低下など) |
特に高マグネシウム血症は、重症化すると命にかかわる可能性がある病気です。
腎機能が低下している人や酸化マグネシウムを長期間・大量に服用している方は十分注意してください。
万が一、こうした症状が現れた場合は、すぐに服用を中止して病院で受診を受けましょう。
酸化マグネシウムと薬の飲み合わせによる事例

ここでは、酸化マグネシウムと薬の併用によって効果が弱まった事例を2つご紹介します。
2014年に行われた以下の研究では、酸化マグネシウムとヒスタミンH₂受容体拮抗薬(H₂RA)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)との併用が、酸化マグネシウムの下剤効果を弱める影響があると伝えています。
“When patients received H2RA or PPI, the laxative effect of MgO is decreased possibly due to the low solubility of MgO at the higher gastric pH and less generation of MgCl2 and Mg(HCO3)2.”
「H₂ブロッカー(H₂RA)や胃酸を抑える薬(PPI)を飲んでいる人は、胃の中のpHが高くなることで酸化マグネシウム(MgO)がうまく溶けにくくなります。
その結果、体に吸収されやすい形(塩化マグネシウムや重炭酸マグネシウム)になりにくくなり、酸化マグネシウムの下剤としての効果が弱まってしまう可能性があります」
引用:Interaction of magnesium oxide with gastric acid secretion inhibitors in clinical pharmacotherapy|European Journal of Clinical Pharmacology
また、以下の研究では酸化マグネシウムをパーキンソン病治療薬と併用すると、薬の吸収が著しく低下し、症状が悪化する可能性があると結論づけています。
研究目的 | パーキンソン病患者において、便秘対策としてよく使われる酸化マグネシウム(MgO)が、レボドパ製剤の吸収にどのような影響を与えるかを明らかにする |
対象者 | パーキンソン病と診断された35名の患者(年齢・性別に関係なく幅広く含まれる) |
研究方法 | ・同じ人が「酸化マグネシウム(便秘薬)を飲む場合」と「飲まない場合」の2パターンで薬の効き方を比較。 ・具体的には、パーキンソン病の治療薬であるレボドパとカルビドパが体の中にどれくらい吸収されるか(血液中の濃さ)や、体の動き(運動症状)に変化があるかを調査。 |
結果 | ・酸化マグネシウムを一緒に飲んだ場合、薬の吸収が明らかに悪化 【レボドパの吸収】・血液中のピークの濃さが約24%少なくなった・飲んでから3時間で量が約23%少なくなった 【カルビドパの吸収】・ピークの濃さが約39%少なくなった・3時間で量が約41%少なくなった |
これらの事例から、酸化マグネシウムは他の薬剤と併用する際に、薬剤の吸収や効果に影響を及ぼす可能性があることが明らかだと言えるでしょう。
酸化マグネシウムを安全に摂取する3つのポイント

安全に酸化マグネシウムを摂取するには、具体的にどのような点に注意すべきかを3つのポイントに絞って解説します。
用量・用法を正しく守る
酸化マグネシウムを安全に摂取するためにはまず、「用量・用法を守る」ことです。
医師から処方された場合は、その指示に従うことが基本ですが、市販薬やサプリメントであっても、パッケージに記載された用量を必ず守りましょう。
自己判断で量を増やしたり、減らしたりすると、下痢や腸内環境の悪化、高マグネシウム血症といった副作用につながったり、効果が現れにくくなる可能性があるので、自己判断での服用はやめましょう。
他の薬剤やサプリメントとの相互作用に注意する
次に大切なのは、酸化マグネシウムが他の成分と相互作用しやすいという特性を理解することです。
先述したように、一部の薬や食品と飲み合わせることで体にマイナスの影響が現れることがあります。
特に鉄剤や抗生物質などとの併用には注意が必要です。
服用タイミングを2〜3時間あけることで相互作用を避けられる場合もありますが、気になる場合は事前に医師や薬剤師に相談しても良いでしょう。

腎機能に不安がある人は必ず医師に相談する
酸化マグネシウムは腎臓によって排泄されるため、腎機能に問題がある人は特に注意が必要です。
腎機能が低下していると、マグネシウムが体内に蓄積しやすくなり、高マグネシウム血症を引き起こす可能性があります。
腎機能に不安がある方は、医師に相談することをおすすめします。
まとめ:酸化マグネシウムの飲み合わせを理解して安全に利用しよう!

酸化マグネシウムは、便秘改善やマグネシウムの補給など、私たちの健康に役立つ成分です。
しかし、一部の薬や飲食物との飲み合わせによっては吸収が妨げられたり、副作用のリスクが高まったりする可能性もあるため、慎重な利用が求められます。
特に腎機能が低下している方や高齢の方は副作用のリスクが高まるため、自分1人で判断することは避け、医師や薬剤師に相談の上、適切な使用を心がけるようにしましょう。
本記事を参考に正しい知識を持つことで、酸化マグネシウムを利用し、自分の健康をさらに豊かなものにしていきたいものですね。
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