塩化マグネシウムや、クエン酸マグネシウムなど「〇〇マグネシウム」という表記を見かけると、マグネシウムにはどのくらい種類があるのか気になりますよね。
そもそも、マグネシウムは私たちの体のエネルギー代謝や神経・筋肉の働きに欠かせない必須ミネラルです。
しかし、現代人は食生活の乱れなどから慢性的に不足しがちであり、食事だけで補うのは難しいため、サプリメントによる補給が注目されています。
マグネシウムは、酸化マグネシウムやクエン酸マグネシウム、リポソームマグネシウムなど種類によって吸収率や作用が大きく異なるのが特徴です。
本記事では、サプリでよく見かける代表的な10種類のマグネシウムについて、その効果や用途をわかりやすく解説します。
ご自身に合ったサプリメント選びの参考にしてみてください。
マグネシウムについて

マグネシウムは細胞内液に存在する必須ミネラルのひとつです。
体内の約800種類以上の化学反応に影響を与えており、骨や歯、筋肉や脳・神経に存在しています。
さまざまな部位に存在しているマグネシウムは、筋肉を緩めたり、神経伝達物質をスムーズに伝達させたり、睡眠や肥満、血糖値、ストレスへの影響など、他にも多岐に渡る効果が期待できます。
しかし、現代を生きる私たちの体内では、マグネシウム不足が深刻化しています。
令和5年の厚生労働省の調査によると、マグネシウムの推奨摂取量よりも一般的に
- 男性で約139㎎/日
- 女性で約93㎎/日
日々マグネシウムが不足していることがわかっています。
参考:令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省

しかもこれはあくまでも日本国内の厚生労働省の基準によるもの。
ドクターマグネシウムこと横田先生が世界中の著名な研究者と共同でおこなったリサーチによると、マグネシウムの標準推奨値は以下のように推奨されています。

マグネシウムの採血検査において、現在の基準値の下限が甘すぎるため、低マグネシウム血症の診断が過小評価される危険性があります。長い目で健康を考えると、この基準は好ましくないと言えます。
現在の日本の多くの基準値が1.8~2.6㎎/㎗ですが、私どもは2022年にグローバルな標準化の推奨を報告しました。
低マグネシウム血症の推奨値:2.06~2.33㎎/㎗としています。
参考:Recommendation on an updated standardization of serum magnesium reference ranges|Springer Nature
こうしたことから、普段の食生活を見直したり、サプリメントを取り入れて、マグネシウムを補う必要があるのです。
マグネシウムの種類は何と結合しているかで決まる

簡単に説明するとマグネシウムというのは、体外では単体で存在することができないイオンであり、“なにか”と一緒にくっついて初めて存在できるという性質があります。
そしてその“なにか”が
例)
◎塩化物の場合は⇒塩化マグネシウム
◎クエン酸の場合は⇒クエン酸マグネシウム
と呼ばれ、くっついている部分の違いを「種類」と表現されているのです。
実際、マグネシウムの部分は体内で“なにか”と切り離されてイオン化されたものが細胞に取り込まれます。 そのため、

「じゃあどんな種類のマグネシウムも効果は同じなんじゃない?」
というと、実はそういうわけでもありません。
その証拠に、酸化マグネシウムは体内で吸収されにくいため便秘薬として取り入れられますが、クエン酸マグネシウムはスポーツ栄養補助食品として利用されたりします。
また、塩化マグネシウムは胃酸と同じ塩化物とくっついているため、胃酸からマグネシウムイオンを守りながら吸収を促すとされています。
このように、マグネシウムはなにとくっついているかで、その効果や用途、使用方法が変わるのです。
それでは、次の項目からはサプリメントによく含有されているマグネシウムの種類10選について、それぞれ詳しくご紹介していきます。

サプリに配合されているマグネシウムの種類
ここからは実際のサプリメントに配合されているマグネシウムの種類を紹介していきます。
リポソームマグネシウム

リポソームとは細胞膜の成分であるリン脂質で作った小さなカプセルのこと。
このカプセル内にマグネシウムイオンを包み込んで摂取することで、標準的な酸化マグネシウムと比較して、より速く高割合でマグネシウムが吸収されることが示されました。
2018年の研究では、市販の酸化マグネシウムとリポソームマグネシウムの吸収を二つの異なる濃度(32.9 mg/mlと329 mg/ml)で比較したところ、リポソームマグネシウムの方が標準的な酸化マグネシウム製剤に比べて吸収が速く、また吸収率が高いことがわかりました。
これらの結果から、リポソームマグネシウムは他の製剤に比べてマグネシウムの生体利用率が高いことが示唆されます。まだまだ研究が進められているリポソームマグネシウム。
サプリメント先進国のアメリカなどでは早くも注目を集めており、人気も高まっている一方、製造が難しいため限られた企業しか製造できない場合もあり、また国産ではほとんど見かけることのない種類とも言えます。
L-トレオン酸マグネシウム

L-トレオン酸マグネシウムは、脳内のマグネシウムレベルを効果的に上げるといわれている、新しい種類のマグネシウム化合物です。
脳と神経細胞のマグネシウムレベルを上げる能力があるとされ、健康な成人の認知機能と記憶力の向上に有益であることがわかりました。
特に、健康な中国成人109名を対象とした二重盲検(※)で、プラセボ対照試験では、マグネシウムL-トレオン酸を摂取したグループが、認知評価の標準テストである「臨床記憶テスト」で有意な改善を示しました。
特に年齢の高い参加者がより大きな改善を見られたとのことです。(※参加者と研究者の両方が、誰が実際の治療を受けているのか、またはプラセボを受けているのかを知らない状態で行われる方法。)
最近海外のマグネシウムサプリメントにL-トレオン酸マグネシウムが用いられるようになってきており、今注目の種類のひとつとも言えます。
医薬品にも使われるマグネシウムの種類
医薬品に使われている代表的なマグネシウムの種類は以下の4つです。
- 塩化マグネシウム
- 酸化マグネシウム
- 硫酸マグネシウム
- 水酸化マグネシウム
それぞれ解説していきます。
塩化マグネシウム

塩化マグネシウムは体内での吸収率が高く、皮膚からも吸収されることがわかっています。
サプリメントやコスメとしてとして使用されることが多く、肌を柔らかくするだけでなく、肌の保湿や筋肉痛や炎症の緩和もサポート。
また、口から摂取する場合は、便秘の緩和や消化器系のトラブルの軽減に効果的とされます。
さらに近年ではうつ病の改善に関する研究などもされています。
以下の記事では、マグネシウムとうつ病の関係について詳しく解説しているので、併せてご覧ください。
マグネシウムとうつ病の関係とは?精神疾患予防に期待される効果と正しい摂取方法
参考:Role of magnesium supplementation in the treatment of depression: A randomized clinical trial | PLOS
塩化マグネシウムは海から取れるミネラルで、豆腐を作るにがりなどとして日本人の生活に慣れ親しんできた種類のマグネシウムです。
海藻やのりなど日本食と強いつながりのある食品にもマグネシウムが多く含まれています。
下記では厚生労働省が発表しているマグネシウムの含有量が多い食品をランキング形式でお伝えしています。
気になる方は併せてご参照ください。
一般的に、塩化マグネシウムは便秘薬などに使われる酸化マグネシウムよりも消化吸収率が高いとされています。これは、塩化マグネシウムが水溶性であるため、消化器官でより簡単に分解・吸収されるためです。一方、酸化マグネシウムは非水溶性であり、体内での吸収が難しいとされています。
酸化マグネシウム

便秘薬として知られる酸化マグネシウムは体内で吸収されにくいですが、便秘や胃の不快感の緩和に役立つとされています。
しかし、吸収率が低いため、細胞までマグネシウムを届けたい場合や体内のマグネシウムを増やしたい場合には、他の種類のマグネシウムサプリなどよりも多量に摂取する必要があるかもしれません。
このような点に配慮すれば、便が硬かったり慢性的な便秘がある人には、酸化マグネシウムの摂取は便通を促すのに役立つでしょう。
硫酸マグネシウム

一般的には「エプソムソルト(エプソム塩)」として知られ、入浴剤として使用されることが多いです。
入浴することで筋肉をリラックスさせる効果があり、また、浸透圧の変化により体内から老廃物を排出し、デトックス効果も期待できるとされています。
経口摂取する場合の多くは下剤として取り入れられます。
上述でお伝えした酸化マグネシウムも下剤として取り入れられますが、硫酸マグネシウムと酸化マグネシウムの下剤としての効果には以下のような違いがあります。
| マグネシウムの種類 | 特徴 | 使用方法 |
|---|---|---|
| 硫酸マグネシウム | 便を軟化増大させてその刺激で腸の運動が活発にさせ、便を促します。摂取してから約1~2時間後に効果が現れはじめます。 | 便秘の人に用いられることはもちろん、腸の手術や大腸検査を行う前に、腸内をきれいにするために取り入れられます。 |
| 酸化マグネシウム | 腸内に水分を引き寄せ、便を軟化増大させることで排出を促します。また胃酸を緩やかに中和することから、胃腸薬として胃炎や胃腸傷の改善をサポートすることもあります。 | 一般的に日常的・慢性的な便秘の人に取り入れられます。 |
下記ではエプソムソルトについて詳しくまとめていますので、気になる方はぜひ併せてご参照ください。
水酸化マグネシウム

通常は胃腸薬や制酸剤として用いられ、胃酸を中和して消化器系の不快感を緩和する場合に使用されます。
また、水に溶けにくい性質を持ち、腸内で水を引き寄せることで便を柔らかくして排便を促します。
自然由来のサプリにも使われるマグネシウムの種類
自然由来であるサプリのマグネシウムの種類として、ここではクエン酸マグネシウムとリンゴ酸マグネシウムについて解説します。
クエン酸マグネシウム

クエン酸マグネシウムは多くのサプリメントにも取り入れられることの多い、マグネシウムのひとつ。
実際に柑橘類から造られている場合はほとんどありませんが、柑橘類に多く含まれるクエン酸とマグネシウム源を化学的に反応させて作られます。
クエン酸マグネシウムはエネルギー生成を支援して、筋肉機能の改善をサポートします。
また、塩化マグネシウム同様に吸収率が高いため、疲労回復や運動パフォーマンスの向上に効果的とされ、スポーツ栄養補助食品として利用されることが多い種類のマグネシウムです。
リンゴ酸マグネシウム

リンゴ酸マグネシウムは、果物などに自然に含まれる有機酸であるリンゴ酸とマグネシウムの化合物です。
体内での吸収率が良いとされていて、以下のような特徴が見られます。
- 筋肉の機能向上
- エネルギー産生
- 神経系の健康をサポート
- 疲労感の軽減や運動パフォーマンスの向上
オーガニックにこだわりの強いサプリメント会社などは実際に果物のリンゴ酸を用いてリンゴ酸マグネシウムを生成しています。下剤効果も少なく、初心者の方でも取り入れやすい種類だと言えるでしょう。
吸収率UPのためのアミノ酸キレート化されたマグネシウムの種類
最後にアミノ酸キレート化されたマグネシウムの種類を2つご紹介します。
- グリシン酸マグネシウム
- アスパラギン酸マグネシウム
グリシン酸マグネシウム

グリシン酸マグネシウムはマグネシウムとグリシン酸が結合した形態であり、吸収率が高いことでも知られています。
グリシン酸は神経伝達物質の一種であり、神経系の健康のサポート、睡眠の質を改善、リラックス効果などが期待できます。
アスパラギン酸マグネシウム

アスパラギン酸マグネシウムもグリシン酸マグネシウムと同様、アミノ酸キレート化されたマグネシウムの一種です。
キレート化とは吸収されにくい栄養素を吸収しやすくする仕組みのこと。
アスパラギン酸はアミノ酸の一種であり、エネルギー代謝に重要な役割を果たします。
そのため、体力を向上させる効果が期待されます。
まとめ|マグネシウムの種類と特徴を知り、自分に合ったマグネシウムの摂取を
マグネシウムは体の基盤を支える必須ミネラルであり、その種類によって吸収率や作用が大きく異なります。
便秘改善に役立つ酸化マグネシウムから、エプソムソルト入浴で使われる硫酸マグネシウム、より速く吸収率の高いリポソームマグネシウムなど、それぞれに特徴があります。
自分の体調や目的に合わせて選ぶことが、効果的な摂取につながります。
今回の記事を参考にしていただき、普段の食生活に加え、サプリメントや経皮吸収を組み合わせて、積極的にマグネシウム不足を補いましょう。

