毎日を健康的に過ごすために欠かせない「睡眠」。
しかし、多忙な現代では「いくら眠っても寝た気がしない」「眠ったはずなのに疲れが取れない」といった悩みを抱える人が珍しくありません。
こうした悩みの背景には、メラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンの不足が関係している可能性があることをご存じでしょうか。
メラトニンは体内時計を整え、自然な眠りを促す重要なホルモンです。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れ、加齢などによって分泌量が低下しやすいといわれています。
心身の健康を維持するには、良質な睡眠習慣が欠かせません。そして、睡眠の質を高めるために必要なのが「メラトニン」です。
今回は、メラトニンの基本的な仕組みから、不足したときに起こりやすい症状、今日から始められる睡眠習慣についてわかりやすく解説します。
睡眠に悩みを感じている方は、より良い睡眠を得るための参考にしてください。
メラトニン(睡眠ホルモン)とは?

メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、私たちの眠りのリズムを整える上で欠かせない存在です。
名前は聞いたことがあっても、具体的にどのような働きをしているのかはあまり知られていないかもしれません。
はじめに、メラトニンの基本的な役割や、睡眠との関係について見ていきましょう。
メラトニンの役割
メラトニンの主な役割は、体内時計を調整し、自然な眠りへと導くことです。
私たちの体は、朝になると目覚め、夜になると眠くなるという一定のリズムを持っています。これを「概日リズム(サーカディアンリズム)」といいます。
そして、概日リズムをコントロールしているのがメラトニンです。
日中はメラトニンの分泌が抑えられ、夕方から夜にかけて分泌量が増えることで、「そろそろ休む時間ですよ」と体に合図を送ります。
メラトニンのこの働きによって、脳や体は活動モードから休息モードへと移行し、心拍数や体温が徐々に下がっていき、体が「眠るモード」へと切り替わります。
反対に、メラトニンがうまく分泌されないと、夜になっても頭が冴えたままになり、寝つきにくくなります。
また、メラトニンは睡眠だけでなく、体のリズム全体を整える役割も担っています。
- 体内時計を整え、夜になると自然な眠気を促す
- 心拍数や体温を下げ、体と脳を休息モードへ切り替える
- 生活リズム全体を安定させ、健やかな毎日を支える
メラトニンが睡眠に与える影響
メラトニンは、眠りの「質」と「タイミング」の両方に深く関わっています。
たとえば、夜になるとメラトニンの分泌が増えることで、脳に休息のサインが送られ、自然な眠気が生じやすくなります。
この働きがスムーズに行われていると、布団に入ってから無理なく眠りにつきやすくなり、睡眠のリズムも安定しやすくなるのです。
さらに、メラトニンは深い眠りをサポートする役割も持っています。
睡眠中は、浅い眠りと深い眠りが一定のリズムで繰り返されますが、メラトニンが十分に分泌されていると、このリズムが整いやすくなり、途中で目が覚めにくくなるといわれています。
その結果、朝起きたときに「よく眠れた」と感じやすくなるのです。
一方で、メラトニンの分泌が少ない状態では、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。
十分な睡眠時間を確保しているにも関わらず、疲れが取れにくいと感じる場合は、メラトニンの働きが十分でない可能性が考えられます。
- 夜に分泌が高まることで、自然な眠気を引き起こし寝つきを良くする
- 睡眠中のリズムを整え、深い眠りをサポートする
- 分泌が不足すると、眠りが浅くなり疲れが取れにくくなる
メラトニンとセロトニンの関係
メラトニンとセロトニンは、密接な関係にあるホルモンです。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれており、日中の心の安定や前向きな気分を支える役割を担っています。夜になるとセロトニンは、メラトニンの材料として使われることが知られています。
つまり、日中に十分なセロトニンが分泌されていると、夜にメラトニンが作られやすくなり、自然な眠気につながりやすくなるのです。
反対に、日中の活動量が少なかったり、ストレスが強かったりすると、セロトニンの分泌が低下し、その影響でメラトニンも不足しやすくなります。すると、夜になっても眠気を感じにくくなり、睡眠リズムが乱れやすくなります。
このように、質のよい睡眠を得るためには、夜だけでなく日中の過ごし方も重要です。
朝日を浴びたり、適度に体を動かしたりしてセロトニンの分泌を促すことで、良質な睡眠が得やすくなります。
セロトニンは、睡眠の質を高めるだけでなく、メンタルの安定や心身のコンディション全般に関わる重要なホルモンです。
幸せホルモンを増やすための習慣については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
メラトニン不足の場合どんな症状が現れる?

メラトニンが不足すると、眠りに関する不調だけでなく、心や体のコンディションにもさまざまな影響が現れやすくなります。
ここでは、メラトニン不足の状態で起こりやすい代表的な症状について見ていきましょう。
寝つきが悪くなる
メラトニンが不足すると、夜になっても体が休息モードへ切り替わりにくくなり、寝つきが悪くなることがあります。
本来、メラトニンは「眠る準備が整いました」という合図を脳に送る役割を担っていますが、分泌量が少ないと、布団に入っても頭が冴えたままになりがちです。
たとえば、眠りたいのに考えごとが止まらなかったり、ちょっとした物音が気になってなかなか眠りに入れなくなったりといった状態は、メラトニン不足が関係しているかもしれません。
こうした状況が続くと、疲労や睡眠不足を翌日に引きずりやすくなり、さらにメラトニンが不足するなど、悪循環に陥ってしまいやすいため注意が必要です。
眠りが浅くなる
眠りには深さの段階があり、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返すのが普通です。
メラトニンはこのリズムを整える役割を担っているため、不足すると睡眠が安定しにくくなります。
一般的に、睡眠の周期が不安定になると眠りが浅くなるケースが多く、夜中に何度も目が覚めたり、ちょっとした刺激で起きてしまったりすることが増えやすくなるとされています。
たとえば、睡眠時間そのものは十分に確保できていても、深く眠れていないため、朝起きたときに「ぐっすり眠った感じがしない」と感じるケースなどが典型的です。
疲れが取れにくくなる
睡眠中は、体や脳を休ませ、日中に受けた疲労を回復させる大切な時間ですが、メラトニンが不足するとその回復がうまく進みにくくなります。
その結果、十分に寝たつもりでも疲れが取れにくくなります。
「寝ても疲れが残る」と感じる背景にはこうした事情があり、決して気のせいではありません。
このような状態を放置していると、集中力の低下や気分の落ち込みにつながることがあり、日中に十分なパフォーマンスを発揮できないだけでなく、注意力散漫による事故などの危険性も高まるため注意が必要です。
自律神経が乱れやすくなる
自律神経は、文字通り「自律的に機能する神経」のことで、呼吸や血圧、心拍といった「無意識の身体機能」を管理しています。
自律神経には、日中などの活動時に優位になる交感神経と、休息時に働く副交感神経の2つがあります。これらが交互に切り替わることで、体の状態を調整しているのです。
メラトニンは、この切り替えをスムーズに行う上で重要な役割を果たしています。
具体的には、メラトニンの分泌が不足すると、夜になっても交感神経が優位なままになり、体がリラックスしにくくなります。
結果として、動悸や緊張感が続いたり、気持ちが落ち着かなくなったりといった症状が現れやすくなるのです。
ベッドに入ったものの、仕事のことを考えて目が冴えてしまったり、心配事が頭から離れずなかなか寝つけなかったりといった場合は、自律神経が不安定になっているのかもしれません。
自律神経の乱れは、睡眠の不調だけでなく、日中の体調や気分にも影響を及ぼします。眠りと心身のバランスを整えるためにも、メラトニンの分泌を意識した生活習慣を心掛けることが大切です。
メラトニン不足を招く4つの原因とは?

メラトニンが不足する背景には、日常生活の中に潜むさまざまな要因があります。
ここでは、メラトニン不足を招きやすい代表的な4つの原因について解説します。
1.ストレス
近年、「ストレスは万病のもと」という言葉を目や耳にする機会が多くなりました。それだけ「ストレス」は、心身に大きく影響することがうかがえます。
一方で、現代は仕事や人間関係、経済状況などでストレスを抱える人が多いとされています。
ストレスは目に見えないため軽視されがちですが、実はメラトニンやセロトニンをはじめとするホルモンバランスや、自律神経の働き、さらには消化や代謝といった全身の機能に影響するため注意が必要です。
もちろん、ストレスは睡眠の質を低下させる一因でもあります。
ストレスを完全になくすことは難しいですが、意識的にリラックスタイムを設け、気持ちを切り替える習慣を持つことが大切です。
2.加齢
メラトニンの分泌量は、年齢とともに自然と減少するといわれています。
若い頃は夜になるとしっかり分泌されていたメラトニンも、加齢とともに分泌のピークが低くなり、量そのものも少なくなりがちです。
年齢を重ねるにつれて「寝つきが悪くなった」「夜中に目が覚めやすくなった」と感じやすい傾向があるのも、こうした背景に理由があると考えられています。
加齢そのものは避けられませんが、生活習慣を整えることでメラトニンの分泌をサポートすることは可能です。
年齢のせいとあきらめず、睡眠環境や日中の過ごし方を見直しましょう。
3.不規則な生活リズム
就寝時間や起床時間が日によって大きく異なると、体内時計が乱れ、メラトニンが分泌されるタイミングがずれてしまいます。
たとえば、夜更かしや交代勤務、休日の寝だめなどが続くと、夜になっても眠気を感じにくくなったり、朝すっきり起きられなくなったりすることがあります。
これは、体が「いつ眠ればいいのか」を判断しにくくなっている状態です。
メラトニンの分泌を安定させるためには、できるだけ毎日同じ時間に起き、同じ時間に眠って、規則正しい生活を送るのが理想です。
4.栄養不足
メラトニンは体内で自然に作られるホルモンですが、その材料となる栄養が不足していると、十分に分泌されにくくなります。
たとえば、セロトニンを作るためには、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養素が欠かせません。
睡眠の悩みというとつい睡眠環境や生活リズムにばかり目が向きがちですが、日々の食事内容も重要なポイントです。
もう一点、メラトニンが不足する原因として、一部の薬剤の服用があげられます。たとえば、アスピリンやイブポロフェン、β(ベータ)ブロッカー、そしてフッ素(主に歯磨き粉に含まれている)などです。
このうち、βブロッカーのみが処方薬で、それ以外は一般向けの市販薬として販売されています。
もし、これらの薬剤の服用中に、睡眠の質の低下や入眠困難などを感じた場合は、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
睡眠の質を高めるためのメラトニン対策

メラトニンの分泌は、生まれつき決まっているものではなく、日々の過ごし方によって大きく左右されます。
ここでは、メラトニンの働きをサポートするために、日常生活で取り入れやすい対策を紹介します。
朝日を浴びる
朝起きたら、できるだけ早い時間に朝日を浴びましょう。強い光を目に入れることで体内時計がリセットされ、概日リズムが整いやすくなります。
特に、起床後30分から1時間以内に太陽の光を浴びることが理想とされています。
ちなみに、曇りの日でも屋外の明るさは室内照明よりもずっと強いため、カーテンを開けたり、短時間でも外に出たりするだけでも一定の効果が期待できます。
夜の光量を調整する
強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑えられてしまうため、就寝前はできるだけ照明を落とし、睡眠ムードを高めるのがおすすめです。
また、スマートフォンやパソコンなどの画面から出る光も刺激になりやすいため、寝る直前の使用は控えるのが理想です。
光量を調整することで、体は自然と「夜の時間」を認識し、メラトニンが分泌されやすくなります。
就寝前の刺激を避ける
寝る直前まで仕事をしたり、考えごとを続けたりしていると、布団に入ってもなかなか寝つけないという経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
就寝前に強い刺激を受けると、脳や体が興奮状態になり、メラトニンの分泌が妨げられやすくなります。
特に注意したいのが、激しい運動や刺激の強い映像、感情が大きく動く情報です。
たとえば刺激の強い映画やショート動画、あるいはSNSでのやり取りなどが代表的です。
これらは交感神経を活発にし、体を活動モードにしてしまいます。
就寝前は、できるだけ穏やかな時間を過ごすことが大切です。
十分な睡眠時間を確保する
睡眠よりも仕事を優先してしまい、つい睡眠時間を削ってしまう方は多いでしょう。
しかし、慢性的な寝不足は眠りの質を下げるだけでなく、結果的に仕事のパフォーマンスをも低下させる可能性があります。
多忙な日々を送っていると、つい睡眠を後回しにしてしまいがちですが、慢性的な寝不足は眠りや日中のパフォーマンスの質を下げる原因になります。
必要な睡眠時間や体内時計には個人差がありますが、朝すっきり起きられるかどうかを目安に、自分に合った睡眠時間を意識しましょう。
リラックス習慣を取り入れる
メラトニンの分泌を促すためには、日常の中にリラックスできる時間を意識的に取り入れることも大切です。
心や体が緊張したままでは、夜になっても休息モードへ切り替わりにくいためです。
リラックスするための方法は、当メディアでもこれまでいくつか紹介してきましたが、代表的なものとして、次のようなものがあげられます。
- ぬるめのお湯にゆっくり浸かり、体の緊張をほぐす
- 深呼吸や腹式呼吸を行い、呼吸のリズムを整える
- 軽いストレッチやヨガで、こわばった筋肉をゆるめる
- 静かな音楽を聴き、気持ちを落ち着かせる
- 寝る前に照明を落とし、穏やかな空間をつくる
また、毎日のリラックス習慣として、マグネシウムを活用したマグネシウム風呂もおすすめです。
マグネシウムは、体内の800種類以上の酵素活動をサポートしており、ホルモンバランスや自律神経を整える上でも欠かせない必須ミネラルです。
特に日本では、食習慣や生活環境によってミネラルが不足しやすい人もいるため、意識して補う工夫が役立つ場合があります。
睡眠の質を高めたり、リラックスタイムを充実させたりするために、マグネシウムを活用してみてはいかがでしょうか。
メラトニンの材料となる栄養を摂取する
メラトニンは体内で自然に作られるホルモンですが、何もないところから生まれるわけではなく、日々の食事から十分な栄養を摂取する必要があります。
つまり、日々の食事内容が睡眠の質を左右しているといっても過言ではありません。
メラトニンを生成する上で特に重要なのが、たんぱく質に含まれるトリプトファンや、ビタミン、ミネラルです。
具体的には、乳製品や大豆製品、バナナ、赤身の魚、ナッツ類などが、メラトニンの原料となる栄養素としてよく知られています。
これらの食品は、セロトニンの生成を助ける栄養素を含んでおり、日常の食事に取り入れやすい点も魅力です。
特別な食品を無理に増やす必要はなく、バランスの取れた食事を意識するのが基本です。
メラトニンに関するよくある質問

最後に、メラトニンに関してよく寄せられる質問を紹介します。
Q.メラトニンはサプリや薬で補えますか?
メラトニンをサプリや薬で補うことは可能ですが、日本ではメラトニンを含むサプリや薬の市販が禁じられています。そのため、メラトニンを補いたい場合は、本記事で紹介したように生活リズムを整えたり、日光を浴びたり、栄養バランスの良い食事を心掛けたりといった方法が中心となります。
Q.メラトニンは日本で購入できますか?
メラトニンは、日本では一般的に医薬品成分として位置づけられており、ドラッグストアなどの市販品として気軽に購入することはできません。
参考:医薬品成分(メラトニン)が検出されたいわゆる健康食品について|厚生労働省
Q.メラトニンを飲み続けるとどうなりますか?
体内で自然に生成されたものではなく、メラトニンを外から摂取し続けた場合、本来の自然な分泌リズムに影響を与える可能性があると考えられています。
睡眠の質を整える目的であっても、自己判断での長期使用は避け、必要に応じて医師に相談することが大切です。医療機関を選ぶ際は、精神的な不調が強い場合は精神科・心療内科、いびきや呼吸が止まる場合は呼吸器内科や耳鼻咽喉科、足のむずむず感は脳神経内科に相談しましょう。
また、気軽に相談したい場合は内科や睡眠専門外来がおすすめです。
Q.メラトニンはうつ病に関係ありますか?
間接的に気分やメンタルの状態と関係があると考えられています。ただし、メラトニンそのものがうつ病の原因になる、あるいは直接治療するというわけではありません。
うつ病は、さまざまな要因が重なって起こるとされており、ホルモンバランスだけで説明できるものではないためです。
Q.メラトニンを増やすにはどうすればいいですか?
日々の生活習慣を整えるのが基本です。
まず意識したいのは、朝日を浴びて体内時計をリセットすることです。あわせて、バランスの良い食事や十分な睡眠時間の確保を心掛けましょう。
まとめ|メラトニンを意識して睡眠の質を整えよう

睡眠に関する悩みの原因は、なかなか目に見えるものではありません。
特にストレスや、体内のホルモンバランス、自律神経の働きなどは、実際に目に見えるものではありませんが、私たちの体の見えないところで確実に作用しています。
睡眠の質を高めるには、こうした「目に見えにくくわかりにくいメカニズム」を意識し、私たちの心と体の機能をサポートする生活習慣を心掛けるところから始まります。
本記事では、中でも睡眠の質に深く関わる「メラトニン」の働きについて解説しました。
メラトニンは、スムーズな入眠を促す重要なホルモンです。
そして、メラトニンの分泌を促すのに、何も特別な方法は必要ありません。
規則正しい生活リズムを維持し、朝起きたら太陽の光を浴び、栄養バランスが整った食事を心掛けることから始めてみましょう。
私たちは、日々多くの業務に追われながら忙しい毎日を送っています。
しかし、忙しさを理由に睡眠や食事、QOLを犠牲にしてしまうと、パフォーマンスやコンディションが低下の一途をたどる悪循環に陥りやすくなってしまいます。
メラトニンは確かに年齢や性別に応じて分泌量に違いがあったり、減少したりする側面もありますが、一方でちょっとした工夫で分泌を促すことができるホルモンでもあります。
睡眠の質を高めて心身ともに健やかな毎日を過ごすために、まずはできることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
本記事が、健やかな睡眠へのきっかけになれば幸いです。

