便秘に悩む人で「酸化マグネシウム」という便秘薬の存在を知っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、マグネシウムで便秘を解消する方法は、薬だけではありません。
食事から摂る、サプリメントで補う、さらには皮膚から吸収させる(経皮吸収)。
この3つの選択肢があることをご存知ですか?
マグネシウムは腸内の水分を増やし、便を柔らかくすることで自然な排便を促す栄養素です。
医療現場で使われる酸化マグネシウムはその代表例ですが、目的や体質に合わせて摂取方法を選ぶことで、より効果的に便秘を改善できる可能性があります。
この記事では、マグネシウムが便秘に効く科学的な理由から、あなたに合った摂取方法の選び方、1日に必要な量、そして注意すべきポイントまで、わかりやすく解説します。
【エビデンス】マグネシウムが便秘に効く3つの理由

マグネシウムが便秘に効く理由は、腸内で水分を引き寄せて便を柔らかくする「浸透圧作用」にあります。
便秘に悩む人の多くが「水をたくさん飲めば便が柔らかくなる」と考えていますが、それだけでは不十分です。
飲んだ水は小腸で吸収されてしまい、大腸まで届きにくいからです。
マグネシウムは、この水分を大腸に運ぶ「運び屋」のような役割を果たします。
ここでは、マグネシウムが便秘改善につながる3つのメカニズムを科学的根拠とともに解説します。
理由①:腸内の水分量を増やす
マグネシウムの最も重要な働きは、腸内に水分を引き寄せることです。
酸化マグネシウムは胃で胃酸と反応し、炭酸マグネシウムや重炭酸マグネシウムに変化します。
これらの物質が腸内の浸透圧を高めることで、腸壁から水分が腸の内側へと移動します。
国際的な研究によると、炭酸マグネシウムと重炭酸マグネシウムが腸管内液の浸透圧を上昇させ、それによって腸管への水分移動が促進されます。
この化学反応は誰にでも同じように起こるため、効果の個人差が比較的少ないのが特徴です。
参考:Magnesium Oxide in Constipation|PubMed
理由②:便の体積を増やして排便を促す
水分を含んだ便は柔らかくなるだけでなく、体積も増えます。
この「便の膨張」が腸壁を自然に刺激し、腸の蠕動(ぜんどう)運動(腸が収縮と弛緩を繰り返して便を押し出す動き)を活性化させるのです。
2019年の臨床試験では、酸化マグネシウムを1日1.5g、28日間摂取した結果、便の水分量が増加し、排便回数と便の硬さが改善されたことが報告されています。
刺激性の便秘薬とは異なり、マグネシウムは腸を無理に動かすのではなく、便の性質を変えることで自然な排便を促します。
そのため、お腹が痛くなりにくく、習慣性も少ないのです。
実際、医療現場では妊婦さんや5歳以上の子ども、高齢者にも処方されており、安全性の高さが認められています。
理由③:腸内環境を整える
マグネシウムは便秘改善だけでなく、腸内環境そのものをサポートする働きも期待されています。
2023年の研究では、酸化マグネシウムと併用してプロバイオティクス(善玉菌)を摂取することで、短鎖脂肪酸の産生が促進され、便秘改善効果がさらに高まることが示されました。
短鎖脂肪酸は腸内環境を整え、腸の健康を維持する重要な物質です。
つまり、マグネシウムが単に便を柔らかくするだけでなく、長期的に腸の機能そのものを改善している可能性があると言えます。
便秘に効くマグネシウムの種類と選び方

マグネシウムは便秘薬として古くから取り入れられていますが、実はマグネシウムの種類によって効果が異なります。
ここでは、便秘改善に効果的な主要なマグネシウムの種類と、あなたに合った選び方を解説します。
酸化マグネシウムは、日本の医療現場で最も広く使われている便秘薬です。
最大の特徴は、腸で吸収されにくく、便に直接作用すること。
腸に留まったマグネシウムが水分を引き寄せ、便を柔らかくする効果が高いとされています。
クエン酸マグネシウムは、水に溶けやすく、体内への吸収率が高いマグネシウムです。
酸化マグネシウムよりも水溶性が高く、吸収率も優れているため、サプリメントとして広く使用されています。
便秘への効果もありますが、どちらかというと体全体のマグネシウム不足を補う目的で使われることが多い種類です。
マグネシウムグリシネートは、マグネシウムとアミノ酸の一種であるグリシンが結合した形態です。
最大の特徴は、腸への刺激が少なく、吸収率が非常に高いこと。
便秘改善よりも、体内のマグネシウム濃度を効率的に上げることを目的とした種類です。
硫酸マグネシウム(エプソムソルト)は、入浴剤として皮膚から吸収させる方法で使われることが多く、便秘改善というよりはリラックス効果が期待されます。
その他のマグネシウムの種類については、下記の記事で詳しくお伝えしているので、ぜひ併せてご覧ください。
便秘改善に役立つマグネシウムの3つの摂取方法

マグネシウムは私たちの体内で起こる800以上の酵素反応に関わる重要なミネラルです。
その代表的な摂取方法は3つあります。
- 食事から摂る
- サプリメントから摂る
- 経皮から摂る(経皮吸収)
それぞれ詳しく解説していきます。
便秘に効くマグネシウムの摂取方法1
食事から摂る
最も自然で体に負担が少ないのが、食事からのマグネシウム摂取です。
食事から摂取したマグネシウムの約30%は腸で吸収され、体内で利用されます。
食事からマグネシウムを摂ることの最大のメリットは、過剰摂取のリスクが低いことです。
食品に含まれるマグネシウムであれば、体が必要な分だけを吸収し、余分な分は自然に排出されます。
参考:Predicting and Testing Bioavailability of Magnesium Supplements|PubMed
マグネシウムを豊富に含む食材は、海藻類、ナッツ類、大豆製品、魚介類、種子類、全粒穀物、緑黄色野菜などです。
下記の記事では、マグネシウムが豊富に含まれる食材をランキングで紹介しています。
マグネシウムをあなたの食生活に摂り入れ、健康維持にお役立てください。
便秘に効くマグネシウムの摂取方法2
サプリメントから摂る
バランスのいい食事からマグネシウムを摂れればベストではありますが、現代の食生活や食習慣において、食事だけで適量のマグネシウムを摂取するのは、なかなかハードルが高いといえるでしょう。
そこで、食事だけでは不足しがちなマグネシウムを確実に補えるのが、サプリメントです。
サプリメントを選ぶ際は、以下の3つのポイントを押させておくとよいでしょう。
- リポソーム構造を選ぶ
リポソームとは、細胞膜と同じ成分(リン脂質)でマグネシウムを包んだ構造のこと。
細胞膜と同じ成分なので体内で吸収されやすく、消化器や泌尿器への負担を軽減できます。 - 100%天然由来成分を選ぶ
添加物や化学薬品が含まれていないサプリメントを選びましょう。 - 国産品を選ぶ
日本国内で製造され、日本人向けに開発された製品は、品質管理や安全性の面で信頼できます。
便秘に効くマグネシウムの摂取方法3
経皮から摂る(経皮吸収)
マグネシウムは皮膚を通して体内に摂り入れることも可能です。
経皮摂取の1つとしてよく知られているのが、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)です。
欧米では古くからバスソルトとして広く普及していて、入浴剤として使われています。
入浴とマグネシウムによるリラックス効果で体を芯から温めて、打ち身などの痛みを和らげたり、ストレス軽減の効果が期待されます。
この他にも、マグネシウムが含まれたバームやクリーム、スプレーなどもおすすめです。
体の気になるところに直接塗り込むことで、首・肩・背中・腰の痛みや筋肉痛、足のつり、妊娠線など多種多様なトラブルの改善に役立つはずです。
便秘改善に必要なマグネシウムの摂取量

現代の日本人はその食生活と生活習慣の変化から、マグネシウム不足が深刻化しています。
厚生労働省の調査結果が、そのことを裏付けています。
約380㎎/日
約241㎎/日
139㎎/日
約290㎎/日
約197㎎/日
93㎎/日
男性で約139㎎/日、女性で約93㎎/日ほど、マグネシウムの摂取量が毎日足りていないということがわかります。
参考:日本人の食事摂取基準(2025年版)|厚生労働省
参考:令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省
ただそうはいっても、日常生活を送っていて自分がマグネシウム不足かどうかを気にする機会はなかなかないでしょう。
それに、体の不調で病院に行ったとしても、マグネシウム不足であることが判明することはほとんどありません。
というのも、病院で一般的な保険適応の検査を目的とした採血ではマグネシウム不足を見つけることが難しく、マグネシウムを正しく測定するなら、保険適応外の細胞検査が必要となる可能性があります。
そのため、多くのクリニックではいくつかの問診を取り入れてマグネシウム不足をチェックしています。
ここでは、無料で今すぐできる「マグネシウム不足診断」をご紹介します。
医師監修のもと厳選した14個の質問に答えるだけなので、ぜひお試しください。

便秘時にマグネシウムサプリメントを摂取するときの注意点

マグネシウムは健康な体と心を維持する重要なミネラルの1つです。
良質のマグネシウムを摂取すれば、細胞も体もよりよくなるでしょうし、その逆もまた然りです。
したがって、マグネシウムをサプリメントで摂取する際には、以下の点に気をつけましょう。
- 添加物や化学薬品を使っていないか
- 海外製品であれば品質に問題はないか
- 香りや味、使用感に違和感はないか
特に添加物や化学薬品が含まれている製品は、体に害を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
実際、アメリカやカナダでサプリメントのテストや調査を行なっているConsumer LABによると、以下のような驚くべき報告がされています。
“One product was discovered to contain nearly 20% less magnesium per serving than listed on the label (and now appears to be the subject of a recall). A second magnesium supplement was found to be contaminated with lead. ”
「ある製品は、1回分のマグネシウム含有量がラベルに記載されている量より20%近く少ないことが判明した(現在はリコールの対象となっているようだ)。もう1つのマグネシウムサプリメントには鉛が混入していた。」
参考:ConsumerLab Tests Magnesium Supplements|Consumer LAB
日本市場で販売されているマグネシウム製品の多くは海外製であるため、購入する際には十分注意するようにしましょう。
また、腎機能が低下している方や妊婦・授乳中の方は、サプリメントによる過剰摂取を避けるよう、必ず医師や薬剤師に相談してから摂取してください。
マグネシウムだけじゃない!便秘改善の総合アプローチ

マグネシウムは便秘改善に効果的ですが、マグネシウムだけに頼るのではなく、他の要素と組み合わせることで、より効果的かつ持続的な便秘解消が可能になります。
ここでは、マグネシウムと組み合わせることで便秘改善の効果をさらに高める方法を解説します。
食物繊維と組み合わせる
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類があります。
| 種類 | 働き | 食品例 |
|---|---|---|
| 水溶性食物繊維 | 便を柔らかくする | わかめ、こんにゃく、りんご、オートミールなど |
| 不溶性食物繊維 | 便のかさを増やす | ごぼう、さつまいも、玄米、きのこ類など |
マグネシウムと食物繊維を組み合わせることで、腸内環境のバランスを保ちながら便秘を改善できます。
水分を摂取する
水をたくさん飲んでも、大腸に運ぶには酸化マグネシウムのような物質が必要です。
つまり、水分摂取とマグネシウムは相互補完的な関係にあります。
1日の水分摂取量は、最低でも500mLほどが好ましいとされています。
できれば、1.5リットルから1.8リットル程度を目安にすると良いでしょう。
参考:便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー|J-STAGE
参考:How much water should you drink a day?|BBC
運動・マッサージを併用する
適度な運動は腸の蠕動(ぜんどう)運動を活性化させます。
おすすめの運動としては、ウォーキング(1日30分目安)、腹筋運動、ヨガ・ストレッチなどです。
また、おへその周りを時計回りに「の」の字を描くように、5〜10分程度マッサージするのもおすすめです。
マグネシウムと便秘に関するよくある質問

最後に、マグネシウムと便秘に関してよくある質問に回答していきます。
Q1. マグネシウムの摂取期間はどのぐらいで便秘に効きますか?
マグネシウムの効果が現れるまでの時間は、摂取方法や個人の体質によって異なります。
あくまでも目安として、以下を参考にしてください。
・酸化マグネシウム(便秘薬): 8〜24時間程度
・サプリメント: 数日〜1週間程度
体内のマグネシウム濃度を上げることが目的のため、便秘改善効果が現れるまでには時間がかかります。
効果の現れ方には個人差があるため、焦らず様子を見ることが大切です。
Q2. マグネシウムサプリを毎日飲んでも大丈夫ですか?
腎機能が正常なら問題ありませんが、1日あたり350mg以内の容量を守るようにしてください。
また、高齢者や腎機能が低下している方、妊婦さんは注意が必要ですので、医師に相談してからサプリメントを摂取するようにしましょう。
Q3. 酸化マグネシウムとサプリメントの違いは?
大きな違いは吸収率と目的です。
酸化マグネシウムは体内への吸収率が低く、ほとんどが腸に留まるため便を柔らかくする効果が高くなります。
一方、クエン酸マグネシウムなどのサプリメントは吸収率が高く、体全体のマグネシウム補給に適しています。
したがって、便秘への即効性を求めるなら酸化マグネシウム、長期的な健康維持も視野に入れるならサプリメントを選ぶと良いでしょう。
まとめ|マグネシウムの摂取で便秘改善に役立てよう
マグネシウムは腸内の水分量を増やし、便を柔らかくすることで便秘改善に役立つと考えられます。
酸化マグネシウムは即効性を求める方に、サプリメントは体全体のマグネシウム補給も兼ねたい方におすすめです。
今回の記事を参考に、食事・サプリメント・経皮吸収の3つの方法から、自分に合った摂取方法を選び、まずは1つ試してみてください。
ただし、腎機能が低下している方や薬を服用中の方、妊婦の方は、医師に相談してから始めることを忘れないでくださいね。

