近年、現代人に不足しがちな必須ミネラルの1つとして「マグネシウム」が注目されています。
なぜならマグネシウムが不足すると、筋肉のけいれんやこむら返り、高血圧や慢性的な疲労感といった症状が表れやすくなるからです。
食事やサプリメントで補うのも有効な手段ですが、毎日の献立を考えて自炊したり、サプリメントを毎日飲むのはハードルが高く感じる人もいるはず。
そんなときに注目したいのが、マグネシウムの「経皮吸収(けいひきゅうしゅう)」という方法です。
マグネシウムを皮膚から取り込むことで、お手軽かつ効率的にマグネシウムを摂取できるのがメリットです。
しかし、
「本当に皮膚から吸収されるのか?」
「どれくらいの時間で効果が出るのか?」
といった疑問を持つ方も多いでしょう。
マグネシウムの経皮吸収については、可能性を示す研究がある一方で、まだ議論の余地があるのが現状です。
今回はマグネシウムの経皮吸収や吸収の仕組み、効果的な活用法、注意点までをわかりやすく解説します。
マグネシウムの経皮吸収とは?メカニズムを解説

「そもそも経皮吸収ってどういうこと?」と思われる方もいるでしょう。
経皮吸収とは、マグネシウムなど何らかの成分を、皮膚を通して体内に取り込むことです。
私たちの肌には、「角質層」と呼ばれるバリア機能があります。
この機能は、外部から異物が侵入するのを防いでいますが、バリアをすり抜けられる分子の大きさ・性質であれば、成分はゆっくりと体内に浸透していくと考えられているのです。
経皮吸収の効率は、以下の要因によって大きく左右されます。
- 成分の分子量と脂溶性の有無
- 塗布する部位(血流の多さ)
- 塗ってからの経過時間
- 皮膚の温度
- 皮膚の状態(乾燥、湿疹、傷など)
マグネシウムは分子が比較的小さく、皮膚から吸収されやすいため、特にマグネシウムの研究がさかんな欧米では経皮吸収タイプのマグネシウム製品が一般的です。
皮膚に塗る際は、脇の下、首筋、足の裏など、皮膚が薄く血流が豊富な部位に塗布すると、より早く全身に行き渡りやすいとされています。
参考:Permeation of topically applied Magnesium ions through human skin is facilitated by hair follicles|PubMed
マグネシウムが経皮吸収によって作用するまでの時間は?

マグネシウムを皮膚に塗布したり、マグネシウム風呂に入浴したりした場合、どれくらいの時間で体内に吸収され、作用し始めるのでしょうか?
科学的根拠を交えて、解説します。
経皮吸収の時間に関する研究
マグネシウムの経皮吸収については、いくつかの研究で可能性が示されています。
2017年に医学誌PLOS ONEで発表された研究では、25名の参加者がマグネシウムクリームを2週間使用した結果、血中マグネシウム濃度の上昇が確認されました。
また、2016年の研究では、マグネシウムイオンが毛包を通じて皮膚に浸透することが示されています。
ただし、吸収速度や作用するまでの時間は個人差が大きく、以下のような要因に左右されます。
- 塗布する部位(皮膚の厚さや血流の違い)
- 使用する製品の濃度や形状(オイル、クリーム、入浴剤など)
- 皮膚の状態(乾燥、温度など)
- 個人の体質や既存のマグネシウムレベル
これらの研究結果から、条件次第ではマグネシウムは皮膚に触れてから比較的短時間で浸透し始める可能性が高いと言えるでしょう。
参考:Effect of transdermal magnesium cream on serum and urinary magnesium levels in humans: A pilot study|PLOS ONE
参考:Permeation of topically applied Magnesium ions through human skin is facilitated by hair follicles|PubMed
経皮吸収と経口摂取の違い
マグネシウムを経口摂取した場合、消化管を通じて吸収されますが、その吸収率は約30%程度です。
一方、経皮吸収の場合、消化管を経由しないため、直接血流に入る経路が期待されています。
経皮吸収の特徴は、局所的なアプローチができることです。
たとえば筋肉痛やこむら返りなど、特定の部位に不調がある場合、その部位に直接塗布することで、ピンポイントでマグネシウムを活用できるはずです。
また、マグネシウム風呂の場合、温熱効果とマグネシウムの相乗効果により、リラックス効果や筋肉の緊張緩和といった体感が得られることが報告されています。
参考:Predicting and Testing Bioavailability of Magnesium Supplements|PubMed
国際オーソモレキュラー(ISOM)医学会の公式アンバサダーを務め、現在はNADクリニックのチーフサイエンスオフィサー(東京)として活躍するAlexander Audette氏から、以下の解説をいただきました。

たとえば足の裏は皮膚が厚く、経皮吸収率が非常に低い部位です。
一方で、陰部周辺は皮膚が薄く血流も豊富なため、経皮吸収率が非常に高いとされています。
ここで重要なのは、「もし経皮吸収が経口摂取より効果的なら、なぜ多くの研究で“経皮吸収では血中のマグネシウム濃度を十分に早く上げられない”とされているのか」ということです。
実際、経皮吸収には限界があります。
というのも、皮膚の吸収面積には制限があり、さらに部位ごとの吸収効率にも大きな差があるため、全身に必要な量のマグネシウムを取り入れるのは現実的に難しいのです。
それに対して経口摂取では、約30〜40平方メートルにも及ぶ広大な消化管の表面積を通じてマグネシウムが吸収されるため、体内への取り込み量が多く、全身の不調改善にもつながりやすいという大きな利点があります。
このため、経皮吸収はあくまで筋肉のこわばりを和らげたり、リラックス効果を得たりするための“局所的なケア”に適した補助的手段であり、体全体のマグネシウム不足を解消するには、経口でのマグネシウム摂取が理想的です。
マグネシウムを経皮吸収させる3つのメリット

マグネシウムの経皮吸収は、経口摂取よりも吸収効率が高いことはおわかりいただけたと思います。
さらに、経皮吸収には他にも大きく3つのメリットがあります。
マグネシウムを筋肉や皮膚に直接届けられる
経皮吸収の大きなメリットは、マグネシウムのサポートやケアが必要な部位に、直接的にアプローチできる点です。
たとえば、筋肉痛やこむら返りといった症状に悩む場合、マグネシウムを含むオイルやクリームを患部に直接塗ることで、局所的にマグネシウムを活用することができます。
一方で、お風呂にエプソムソルトを溶かして全身にアプローチしたり、リラックス効果を狙ったりなど、目的に応じた柔軟な使い方ができるのも大きな利点です。
手軽なため習慣化しやすい
経口摂取によるマグネシウムの吸収率は30%程度とあまり高くないため、吸収率を高めるにはビタミンDを豊富に含む食品を一緒に摂ったり、マグネシウムをリポソーム化したりといった工夫が必要です。
一方、経皮吸収は特別な技術や道具を必要とせず、オイルをスプレーする、バームを塗る、お風呂に入れる、といった簡単な方法でマグネシウムを活用できます。
毎日無理なく続けられるので習慣化しやすいのも、経皮吸収の大きなメリットと言えるでしょう。
副次的な効果が期待できる
マグネシウムには、筋肉の緊張を緩和したり、神経の興奮を抑えたりする働きがあります。
このような働きは、筋肉痛やこむら返りの緩和、冷えの解消といった効果が期待できますが、併せてリラックス効果や睡眠の質の向上といった副次的な効果も得られます。
特にマグネシウム風呂は、お風呂の温熱とマグネシウムの相乗効果により、高いリラクゼーション効果に期待できるでしょう。
就寝前にマグネシウム風呂に入れば、スムーズな入眠や深い睡眠といったメリットを感じやすくなるはずです。
マグネシウムを経皮吸収させる方法

マグネシウムの経皮吸収には、さまざまな方法があります。
ここでは、代表的な3つの方法をご紹介します。
エプソムソルトやにがり風呂
ここまでに何度か登場しましたが、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)やにがり(塩化マグネシウム)をお風呂に入れる「マグネシウム風呂」は、新たな生活習慣として手軽に取り入れやすく、欧米などでもポピュラーな方法です。
マグネシウムを溶かしたお風呂に15~20分ほど浸かることで、全身からマグネシウムを取り込むことができます。
入浴の気持ちよさやリラックスの時間を楽しみながら、効率的にミネラルを補給できるのがメリットです。
マグネシウム風呂の入り方や注意点などについては、「お風呂の入り方で睡眠の質が上がる!マグネシウムを利用した快適入浴法」で詳しく解説しています。
併せてご覧ください。
マグネシウムバームやクリームを使用する
筋肉のこわばりや疲労を感じる部分に、マグネシウムクリームやバームなどを直接塗って使用することも可能です。
たとえば、運動や筋トレをした後の筋肉へのダメージをケアするために、もっとも負荷が大きかった部位に塗ったり、子どもが成長痛で痛がっている部位に塗ったりする、といった使い方ができます。
クリームやバームは携行しやすいため、旅行や外出で持ち運びしやすいのも大きなメリットです。
マグネシウムオイル
固形物であるクリームやバームに対し、塩化マグネシウムを水に溶かした液体状のオイルは、スプレーとして使用できるのが特徴です。
使い方も、肌に直接吹きかけて軽くなじませるだけなので、手軽に使えるのがポイント。
オイルは比較的吸収が早く、首や肩、足の裏などピンポイントのケアに向いています。
マグネシウムを経皮吸収させる3つの方法を理解したところで、「そもそも自分にマグネシウムは足りているのか?」
そのように思われる方もいらっしゃるでしょう。
以下のマグネシウム不足診断では、簡単な14問の質問に答えていくだけで、あなたがマグネシウム不足かどうかの判定をしてくれるので、ぜひお試しください。

マグネシウムを経皮吸収させる際の注意点

健康や美容のために、ぜひとも積極的に摂取したいマグネシウムですが、使用にあたっていくつかの注意点を押さえておきましょう。
まず、マグネシウム製品を使うと、肌にピリピリとした刺激を感じることがあります。
感じ方には個人差がありますが、チクチクと刺すような軽い刺激に感じたり、肌が突っ張るようなこわばりを感じる方もいるようです。
これは、体がマグネシウムを吸収する際に起こる反応です。
あるいは敏感肌の人や、皮膚疾患を持っている人なども刺激を感じやすい場合があります。
特に敏感肌の方は肌が乾燥していると刺激を強く感じやすい傾向があるので、使用前にパッチテストを行ったり、マグネシウムオイルは薄めて、エプソムソルトは使用する量を少なめにして使うのがおすすめです。
また、皮膚疾患がある方は、マグネシウム製品の使用にあたって、まずはかかりつけ医と相談するのが良いでしょう。
なお、傷、湿疹、かぶれなど炎症のある部位への使用は避けてください。
マグネシウムは、たくさん使ったり長時間塗っていたりして吸収量が増えるわけではないので、適量を守り、習慣としてこまめに使うことを意識しましょう。
マグネシウムの経皮吸収と時間に関するよくある質問

ここではマグネシウムの経皮吸収と時間の関係について、よくある質問に回答していきます。
Q1:マグネシウムを塗ってからどれくらいで効果が出ますか?
吸収速度には個人差があり、塗布する部位、製品の種類、皮膚の状態などによって異なります。
マグネシウム風呂の場合、温熱効果と相まって比較的早くリラックス効果を体感できることが報告されていますが、具体的な時間については明確なデータがまだありません。
Q2:マグネシウムは本当に皮膚から吸収されるの?
研究により可能性は示されていますが、まだ議論の余地があります。
海外の研究によると、血中マグネシウム濃度の上昇が確認された一方、皮膚のバリア機能の強さを指摘する研究もあります。
現時点では、局所的なケアに適した補助的な方法として捉えると良いでしょう。
Q3:経皮吸収と経口摂取、どちらが効果的?
それぞれ利点があるため、目的によって使い分けるのが理想的です。
体全体のマグネシウム不足を解消するには、消化管の広い表面積から吸収される経口摂取が最も確実です。
一方、経皮吸収は筋肉のこわばりなど局所的なケアや、リラックス効果を得たい場合に適していると言えます。
まとめ|マグネシウムを経皮吸収させて身体のケアに活用しよう

マグネシウムは、心身の健康を維持するために重要なミネラルです。
体の運動機能の維持、ホルモンバランスによるコンディションの調整、ストレスの緩和やリラックス効果など、どれもストレス社会に生きる私たち現代人に必要なものばかり。
そんなマグネシウムを効率よくかつ手軽に補給するのに、経皮吸収は非常に有効な手段です。
入浴やセルフマッサージなど、マグネシウムを生活習慣として取り入れることで、体の外側と内側の両方から心身を整えることができます。
リラックスしながら健康管理ができるマグネシウムの経皮吸収。
さっそく今日から、セルフケアの習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。

