「ある日突然、肩が上がらなくなった…」
「腕が背中に回らなくなった…」
40代〜50代で多く見られる「四十肩・五十肩」は、加齢にともなって起こるつらい肩のトラブルです。
多くの方が「年だから仕方ない」とあきらめがちですが、肩の健康維持のために、ミネラルを意識した食生活が役立つ可能性があることをご存知でしょうか?
各種ミネラルの中でも特にマグネシウムは、健康維持に関わるミネラルの一つで、筋肉や神経の働きをサポートします。
慢性的な肩こりや、夜間痛などを伴う四十肩・五十肩などをはじめ、マグネシウム不足が健康全般に影響を与える可能性があるため、バランスの取れた摂取が大切です。
今回は、四十肩・五十肩の基礎知識から、マグネシウムの役割、自宅でできる対策までわかりやすく解説します。
四十肩・五十肩とは?

四十肩・五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」とも呼ばれる疾患で、肩の関節まわりに炎症が起こり、痛みや動かしにくさを引き起こす症状です。
中年以降に多く見られるため、それぞれ年齢にちなんで「四十肩」「五十肩」と呼ばれています。
まずは、四十肩・五十肩で肩が上がらなくなる理由とメカニズムについて、簡単に解説します。
肩が上がらなくなるのはなぜ?
四十肩・五十肩の原因はさまざまですが、一般的には肩関節を構成する組織(関節包や腱板、滑液包など)の老化や硬化により発症するケースが多く見られます。
肩は主に上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つの骨で構成されており、上腕骨と肩甲骨の関節は球関節により接続されています。
さらに、球関節の周辺は「関節包(かんせつほう)」と呼ばれる筋繊維で覆われており、これにより関節を安定的に動かすことができます。
肩関節周囲炎は、この関節包が炎症を起こしている状態です。
そのため、肩関節を動かすスペースが失われ、可動域が制限されるのです。
加齢による身体機能の低下などが一因として考えられますが、糖尿病の方や、直近の手術などの影響で腕や肩を長期間にわたり固定していた方などにも多く見られ、はっきりとした原因はわかっていません。

私が臨床医として診療していた頃、四十肩・五十肩はごくありふれた症状で、毎月2〜3人は必ず来院していました。
中でも特に効果を感じた治療法が、鍼治療と、それに続けて行うマグネシウムの経皮塗布です。
炎症がある程度おさまったタイミングで、軽いストレッチを治療プログラムに取り入れると、多くの患者さんに明らかな改善が見られました。
どんな人がなりやすい?
加齢の影響が大きいとはいえ、運動不足や長時間のデスクワークによって肩まわりの筋肉が硬直している人や、ストレスや睡眠不足で回復力が落ちている人、先述したように糖尿病などの代謝異常がある方もリスクが高まります。
また、統計的には男性より女性の方が発症率がやや高いとされており、これは男女の骨格の違いやホルモンバランスなどが影響していると考えられています。
特に更年期前後で発症するケースが高いので、40~60代の女性は意識的にケアしたいところです。
なお、甲状腺ホルモンに持病を抱えている方は、筋肉や結合組織の代謝への影響から、五十肩のリスクが高くなりやすいと指摘されています。
3つの進行ステージ
四十肩・五十肩は、大きく3つのステージに分けて考えられます。
- 急性期(炎症期):激しい痛みが生じ、特に夜間痛がつらくなる時期。無理に動かすのはNG。
- 拘縮期:炎症が落ち着き始めるものの、肩関節の可動域が制限されてしまう時期。動かしにくさが続く。
- 回復期:徐々に痛みが軽減し、可動域が広がってくる時期。リハビリやセルフケアの効果が出やすい。
四十肩・五十肩の対処法はステージによって異なるため、適切な治療法やケア方法を選ぶことが大切です。
特に拘縮期〜回復期は、栄養や血行を意識したケアが有効とされています。
四十肩・五十肩へのマグネシウムのはたらき

マグネシウムは、体の中で800以上の酵素反応に関わる重要なミネラルであり、筋肉・神経・骨・血流といったさまざまな働きに影響を与えます。
四十肩・五十肩の予防や対策、改善などに、マグネシウムはどのような形で役立つのでしょうか?
筋肉の健康をサポート
マグネシウムは筋肉や神経の正常な機能に関わる栄養素で、筋肉の収縮を抑え、弛緩を促す働きがあります。
これは、慢性的な肩の緊張やこわばりに悩む方にとって、大きな助けになります。
筋肉をリラックスさせるためにも、積極的に摂取したい栄養素です。
神経伝達をサポート
神経の興奮を抑える作用もあるため、マグネシウムは“天然の鎮静ミネラル”とも呼ばれることがあります。
特に、夜間痛やピリピリとした神経痛が気になる場合には、神経伝達を支える働きがあるとされるマグネシウムを日ごろから意識的に摂取したいところです。
もちろん、四十肩・五十肩の予防・対策にはマグネシウムだけでは十分でないため、いくつかの有効な対策法を並行して実施しながら、肩まわりをケアしましょう。
体内のミネラルバランスをサポート
マグネシウムは血管の拡張を助けるため、血行促進にも役立ちます。
血流が良くなることで、肩の細胞に酸素や栄養がしっかり届きやすくなるので、健康維持のためにマグネシウムを含む食品をバランスよく摂ることがすすめられています。
また、マグネシウムには炎症性サイトカインを抑える働きもあり、慢性炎症の鎮静にも一役買ってくれます。
四十肩・五十肩におすすめの対策法

マグネシウムの力を最大限に活かすためには、日常生活での意識も重要です。
ここでは、今日から始められる手軽なケア方法をご紹介します。
食事でマグネシウムと抗炎症栄養を補う
マグネシウムは、ナッツ類(かぼちゃの種やアーモンドなど)、海藻類(わかめ、ひじき)、大豆製品(豆腐、納豆)、玄米、バナナなどに多く含まれています。
食事から手軽にマグネシウムを摂取するなら、納豆や豆腐などの大豆製品や海藻、魚介類を主体とした昔ながらの和食を献立に取り入れたり、おやつにバナナやナッツを食べるようにしたりするのがおすすめです。
マグネシウムを豊富に含む食品については、「マグネシウムを効率よく摂る方法!豊富な食品ランキング&簡単献立例」にて、ランキング形式でわかりやすくご紹介しています。併せてご覧ください。

マグネシウム風呂で筋肉と神経をゆるめる
エプソムソルト(硫酸マグネシウム)を使った入浴は、リラックスタイムの一環として人気です。
ぬるめのお湯に10〜15分ほど浸かるだけでも、じんわりと筋肉がほぐれてくるのを実感できるはず。
ただし、いくらお風呂に浸かっていても、心配事や不安を抱えるなど心が落ち着いていないと、体も十分に休まりません。
入浴タイムを有意義に過ごすためにも、リラックスできる音楽を流したり、好みのアロマの入浴剤を使ったりして、自分好みのリラックス空間を演出しましょう。
ストレッチ&温熱ケアで可動域をケア
痛みがあまり強くない拘縮期や回復期には、ストレッチや温熱パッドなどを使って血流を促すことが大切です。
筋肉の硬直などにより滞っている血流を促すのが目的です。
逆に急性期の強い痛みや、運動後の痛みなどは、アイシングでケアした方が良い場合もあります。
日ごろのケアとしては、肩甲骨まわりを意識的に動かすストレッチがおすすめです。
ただし痛みが強い場合は無理をせず、心地よい範囲でゆっくり動かすことを心掛けましょう。
サプリメントでマグネシウムを効率補給
マグネシウムが不足しがちな人や、食事から十分に摂取するのが難しい人は、栄養補助としてマグネシウム含有の食品やサプリメントを検討してみても良いかもしれません。
マグネシウムサプリには「クエン酸マグネシウム」「グリシン酸マグネシウム」など吸収率の高いタイプがあります。
ただし過剰摂取には注意し、医師や薬剤師に相談しながら自分に合ったものを選びましょう。
十分な睡眠とストレス管理も忘れずに
睡眠中に体は修復・回復を進めるため、良質な睡眠は痛みの緩和にも直結します。
また、ストレスがたまると筋肉や神経の緊張が強まり、症状を悪化させることも。
深呼吸、軽い瞑想、趣味の時間など、自分なりのリラックス法を取り入れましょう。
まとめ|マグネシウムを活用して四十肩・五十肩をケアしよう!

四十肩・五十肩は、年齢のせいだからとあきらめる必要はありません。
マグネシウムを含む食品を日々の食生活に取り入れることは、健康管理の一環としておすすめです。
食事、入浴、ストレッチ、サプリメント、睡眠など、今日から始められるケアは意外とたくさんあります。
さっそく少しずつ、肩を労わる優しいケアを始めてみませんか?