私たちの心臓は、1日も休まずに働き続け、全身に血液を送り出しています。
心臓がリズムを保ちながら働き続けるには、実はさまざまな栄養素が必要です。
中でも近年注目されているのが、「マグネシウム」の働きです。
脈を整え、筋肉や血管を正常に維持する働きを持つマグネシウムが不足すると、心機能に直接的な影響を与えます。
不整脈が気になる方や、突然の動機に不安を覚えたことがある方は、もしかするとマグネシウムが不足しているのかもしれません。
本記事では、不整脈とマグネシウムの関係について、医学的な観点からわかりやすく解説します。
マグネシウムが不足しがちな人の特徴や、マグネシウムを効率的に摂取する方法も紹介するので、心臓の健康に配慮したい方はぜひ最後までご覧ください。
不整脈はマグネシウム不足が原因?

不整脈の原因はさまざまですが、「マグネシウム不足」が主要な原因の一つであることが、近年の研究でわかってきました。
マグネシウムは、800以上(おそらく1200種類程度と考えられています)の酵素反応に関わっているだけでなく、筋肉や神経、心血管、骨の健康を維持するのにも深く関わっています。
また、心筋細胞の電気的安定性を保つためにも必要不可欠なミネラルで、不足すると心臓のリズムが乱れやすくなることも。
とりわけ「低マグネシウム血症」という状態になると、心臓に異常な電気信号が発生しやすくなり、期外収縮(規則正しい脈の中に、時折早い脈が混じること)や心房細動(心臓が細かく痙攣し、不規則になること)などの不整脈を起こす場合があります。
マグネシウムなどのミネラル不足は普段あまり自覚しませんが、このように心臓の異常として現れることがあるため、注意が必要です。
マグネシウムと心臓の関係
心臓が正常かつ健康的な状態を維持するには、「電気信号の安定化」が欠かせません。
心臓は電気信号により動いています。正常な電気信号を保つには、エネルギー代謝や神経伝達、筋肉の収縮に関わるマグネシウムとカルシウムのバランスが重要です。
それぞれの役割を簡単に説明すると、マグネシウムは筋肉の緊張を緩和する(弛緩する)役割で、カルシウムは筋肉を緊張させる(収縮させる)役割です。
心臓が正常に機能するには、両者がバランス良く働く必要があります。
たとえば、体内に十分な量のマグネシウムがあると、カルシウムの過剰な流入を抑制してくれます。その結果、心筋が過剰に収縮するのを防ぎます。
逆にマグネシウムが不足すると、心臓が過敏に反応し、リズムの乱れ(つまり不整脈)が起こりやすくなります。
もちろん、人間の体は他にもさまざまなミネラルのサポートを受けて機能しています。


これまで栄養医学的には、「丈夫な骨をつくるにはカルシウムの摂取が重要」と考えられてきました。しかし、実はサプリメントで摂取したカルシウムの多くが骨に届かず、逆に動脈に沈着して動脈硬化を引き起こしたり、心拍の乱れの原因になったりするリスクがあるとわかってきたのです。
この事実を受け、医療の現場ではマグネシウムの重要性が改めて注目されるようになりました。加えて、ビタミンDやK2、その他の電解質とのバランスの重要性についても理解が深まっています。
また、最新の研究ではマグネシウムが心拍を安定させ、心臓の健康維持に役立つことが明らかになっています。さらに、マグネシウムは天然のカルシウム拮抗剤として働き、血圧の調整をはじめとするさまざまな生理機能をサポートする栄養素であることも確認されています。
不整脈と関係の深いミネラルバランス
マグネシウムとカルシウムは、健康に欠かせない重要なミネラルですが、心臓の健康にはカリウムも必要不可欠です。
カリウムもまた筋肉や神経、細胞の働きに深く関わるミネラルで、不足すると筋肉が正常に機能しなくなる可能性が高くなります。
たとえば、低カリウム血症になると、呼吸や歩行が困難になるなど、日常生活において重大な問題を引き起こす恐れがあります。
だからといって、カリウムばかり積極的に摂取すればいいのかというと、そういうわけでもありません。
マグネシウムが不足するとカリウムが細胞内にうまく取り込まれなくなり、結果として電解質のバランスが乱れてしまいます。
ですから、カリウムの吸収効率を高めるために、マグネシウムも積極的に摂取する必要があります。
このように、ミネラルはそれぞれに役割があり、相互に関わり合いながら私たちの健康をサポートしています。
健康な心拍を保つには、これらミネラルのトータルバランスを意識することが大切です。

不整脈はどんな症状?

不整脈は、心臓のリズムが通常よりも速くなったり遅くなったりと、不規則な動きをする状態を指します。
自覚症状がないこともありますが、人によっては、あるいは程度によっては日常生活に支障をきたすこともあります。
ここでは、不整脈の種類について解説します。
頻脈(ひんみゃく)
頻脈は、安静時の心拍数が100回を超える状態のことです。
ストレスを感じた時や、運動をした後などに一時的に頻脈が起こることはありますが、普段も持続的に頻脈が続く場合は注意が必要です。
頻脈は心臓への負担が大きく、動機や息切れのほか、胸の不快感が伴う場合があります。
徐脈(じょみゃく)
徐脈は、心拍数が60回未満の状態です。
徐脈になると心臓から全身に送られる血液の量が少なくなるため、脳への血流が不足し、めまいやふらつき、疲労感といった症状が表れることがあります。
特に高齢者や心疾患のある方は、症状が重くなる場合があるため注意が必要です。
期外収縮(きがいしゅうしゅく)
期外収縮は、心臓がふいに早く収縮してしまう不整脈です。
感覚としては、心臓が「ドキン」としたり、「脈拍が飛んだ」ように感じたりすることが多く、マグネシウム不足の他、緊張やカフェイン摂取などが原因で起こる場合もあります。
単発的に起こるなら問題がない場合も多いですが、頻発する場合は不整脈の可能性があるため、医師に相談するのが賢明です。
マグネシウム不足になりやすい人の特徴

心臓の健康を守るために、マグネシウムがどれだけ重要な役割を果たしているかおわかりいただけたと思います。
しかし、食習慣の変化や過大なストレスなどの影響により、現代日本人はマグネシウム不足に陥りやすい傾向があります。
では、どのような人がマグネシウム不足に陥りやすいのでしょう?
マグネシウム不足に陥りやすい人の特徴をご紹介します。
偏った食生活
最初にあげられるのが、偏った食生活を送っている人です。
特にファストフードや加工食品中心の食事は、マグネシウムの摂取量が不足しがちです。
玄米や全粒粉にはマグネシウムが豊富に含まれていますが、普段は白米や白いパンなど、生成食品を中心に食べている方も多いでしょう。
海藻や魚などの魚介類にもマグネシウムが豊富に含まれていますが、昨今はいわゆる魚離れの傾向もあり、日常生活の中でマグネシウムを摂取する機会が減少しつつあります。
過剰な飲酒
飲酒が必ずしも悪いわけではありませんが、アルコールは腎臓からのマグネシウム排出を促進するため、飲酒量が多い人はマグネシウムが体内から失われやすくなります。
飲酒習慣がある場合は不整脈リスクも高まるので、節度を守って飲酒を楽しむ必要があります。
慢性的なストレス
「ストレス社会」と言われるようになって久しい日本社会ですが、実は「ストレス」も、マグネシウム不足を招く重大な原因の一つです。
ストレスを受けると体内でストレスホルモンが分泌され、マグネシウムの消費量が増加します。
また、自律神経のバランスが崩れることで腸からの吸収も低下するため、ストレスとマグネシウム不足は相互に悪循環を引き起こします。
利尿剤や抗生剤の服用
利尿剤や抗生剤など、特定の薬剤が腎臓からのマグネシウム排泄を促進する場合もあります。
これらの薬剤を医師から処方されている場合は、服薬による健康管理を併せ、食事の栄養バランスにも配慮することが大切です。
その他の特徴
慢性的な下痢や、セリアック病などのような吸収障害を伴う疾患、あるいは糖尿病などを患っている場合も、マグネシウムが不足しやすい傾向があります。
たとえば糖尿病の場合、マグネシウム摂取量が多い人は、2型糖尿病のリスクが低いことが知られています。
こうした疾患や症状に心当たりがある場合は、マグネシウム不足で症状を悪化させないよう、医師に相談しながら適切な対策を取るのが賢明です。

不整脈の予防・改善に役立つマグネシウムの摂取方法

心臓の健康を守るために、日ごろから意識的にマグネシウムを摂取したいものです。
ここでは、マグネシウムを効率的に摂取できる方法をご紹介します。
食事から摂るマグネシウム
栄養バランスの取れた食事は健康の基本です。
マグネシウムも、できることなら食事から積極的に摂りたいところです。
とはいえ、常にマグネシウムを意識しながら食事や献立を選ぶのも、あまり現実的ではありません。
そこで、「マグネシウムを特に豊富に含む食材」をいくつか覚えておくのがおすすめです。
たとえば、あおさには100gあたり3200mgものマグネシウムが含まれており、あらゆる食材の中でもトップクラスの量です。
お味噌汁にあおさを加えたり、ふりかけにしてご飯にかけたりなど、さまざまな使い方がしやすいのも利点です。
アーモンドやカシューナッツなどの種実類にもマグネシウムが豊富に含まれていますが、特におすすめしたいのが「かぼちゃの種」です。
カシューナッツのマグネシウム含有量(100gあたり)は292mg。アーモンドが268mgのところ、かぼちゃの種には530mgものマグネシウムが含まれています。
間食やちょっとしたおやつに、かぼちゃの種を食べるのを習慣づけてみてはいかがでしょうか。
マグネシウムを豊富に含む食材については、「マグネシウムを効率よく摂る方法!豊富な食品ランキング&簡単献立例」で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

サプリメントを使った補給
忙しくてどうしても自炊が難しかったり、調理が苦手だったりなど、食事だけでマグネシウムを十分に摂取するのが難しい場合は、サプリメントを活用するのも一つの方法です。
特にリポソーム化されたマグネシウムや、クエン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、エンカマグネシウムは吸収率が高く、胃腸への刺激も比較的少ないとされています。

経皮吸収で補う
マグネシウムは、入浴剤やボディクリームなどを使った「経皮吸収」でも摂取することができます。
エプソムソルトなどを入浴に取り入れることで、肌からマグネシウムを吸収できるだけでなく、リラックス効果にも期待できるでしょう。
サプリメントなどの刺激が苦手な方や、胃腸が弱い方におすすめの方法です。

まとめ|マグネシウムを摂取して不整脈を予防しよう!

不整脈の原因はさまざまですが、「マグネシウム不足」は見落とされやすい原因の一つです。
マグネシウムは心臓の健康を守るだけでなく、自律神経のバランスやホルモンバランスの調整など、心身の健康に欠かせません。
心臓の電気信号を安定させるためにも必要不可欠なので、不整脈を予防するためにも日ごろから意識的に摂取したいミネラルの一つです。
多忙でストレスが多いと言われる現代社会ですが、だからこそ健康や栄養についてしっかりと考える必要があります。
忙しい日々の中で、不整脈に不安を感じたら、まずは食生活を見直すことから始めてみましょう。