マグネシウムと咳の関係とは?咳を鎮める科学的メカニズムと3つの摂取方法

マグネシウムと咳の関係とは?咳を鎮める科学的メカニズムと3つの摂取方法

咳の原因といえば、風邪やアレルギーを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?

気温の急激な変化、過労、ハウスダスト、花粉症…これらは確かに咳を引き起こす代表的な原因です。

しかし、なかなか治らない慢性的な咳の背景に「マグネシウム不足」が潜んでいる可能性があることは、あまり知られていません。

マグネシウムは気管支平滑筋の働きに深く関わっており、不足すると気道が過敏になりやすくなります

そこで今回は、マグネシウムと咳の関係を、そのメカニズムから効果的な3つの摂取方法まで詳しく解説します。

マグネシウム不足のセルフチェックも用意しているので、そちらもぜひご活用ください。

マグネシウムと咳の関係は?

マグネシウムと咳の関係は?

咳との関係性が分かりにくい「マグネシウム」ですが、実は私たちの体を整えるために数多くの働きをもっています。

本章では、マグネシウムの基本的な働きと、咳の仕組みを理解して、マグネシウムがなぜ咳を鎮めると考えられているのか整理していきましょう。

マグネシウムの働き

マグネシウムは体内の800種類以上もの化学反応に影響を与えており、数々の研究から以下のような働きがあることがわかっています。

  • 骨の形成
  • 肌の保湿・保護
  • 睡眠の質向上
  • ダイエット効果
  • 便秘の改善
  • 血糖値の調整
  • ストレスの低減
  • 体温や血圧の調整
  • 筋肉の弛緩

このように様々な働きをもつマグネシウムですが、今回注目していただきたいのは最後にご紹介した「筋肉の弛緩」という点です。

マグネシウムは「筋肉が収縮後に弛緩するのを助ける働きがある」ということをまずは覚えておいてください。

マグネシウムと筋肉の関係については、下記の記事でさらに詳しくお伝えしています。

【筋トレ効果UP】マグネシウムと筋肉の関係|筋肉痛を軽減する3つの摂取法筋肉 【筋トレ効果UP】マグネシウムと筋肉の関係|筋肉痛を軽減する3つの摂取法

咳が出る仕組み

咳は吸い込んだ空気に入ってきた異物を、体の外に追い出すために起こる生理的な現象です。

風邪のウイルスやホコリ、花粉、煙などの異物を体の外に出そうとするのは、体にもともと備わっている防御反応といえます。
その他にも、咳が出る仕組みとして自律神経に関わるものがあります。

自律神経はわたしたちの呼吸や体温、心臓や血管の動き、消化の働きなど、体内の特定のプロセスを自動的に調整してくれているのです。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、それぞれの特徴を表にしたものが以下の一覧です。

自律神経の種類活動が盛んな時間帯気管支の状態
交感神経昼間拡張され空気が通りやすくなる
副交感神経夜間昼間に比べて狭くなる

さて、ここで少し思い出してみて欲しいのですが、夜になると風邪でもないのに咳が止まらなくなった経験がある方はいらっしゃらないでしょうか?

この理由は、先ほどの表を見ると説明がつきます。
交感神経が優位で活発に動く昼間は、よりたくさんの酸素を取り込むため気管支が拡張されて、空気が通りやすくなっています。

つまり、咳が出にくい状態です。

しかし、夜になると副交感神経が優位になり、気管支は昼間に比べて狭くなってしまうため、咳が出やすくなるのです。

以下の記事では、咳に関係する自律神経を整える方法の1つとして、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)を使った入浴法とストレッチを紹介しています。

こちらもぜひご参考にしてください。

エプソムソルトは自律神経を整える?乱れの原因とマグネシウムとの関係を解説

リラックスにはストレッチが有効!自宅で簡単にできる体と心を整える習慣5選

マグネシウムが咳を鎮めると考えられるメカニズム

マグネシウムが咳を鎮めると考えらえるメカニズム

では、いよいよマグネシウムと咳の関係性について考えていきましょう。

マグネシウムの働きの1つに「筋肉が収縮後に弛緩するのを助ける」というものがあります。

また、先ほど咳が出る仕組みでお伝えしたように、咳が出る要因としては「気管支が狭くなる」ということが挙げられます。

そして、気管支には平滑筋という種類の「筋肉」が含まれているのです。

つまり、筋肉を弛緩する働きをもつマグネシウムを摂取すれば、気管支の筋肉を緩めることができ、空気が通りやすくなって咳を鎮めることにつながると考えられます。

マグネシウムが咳を鎮めると考えらえるメカニズム

マグネシウムと咳の関係:論文を紹介

マグネシウムと咳の関係:論文をご紹介

日本と比べて海外では、マグネシウムに関する多くの研究や実験がおこなわれています。
今回はその中でも、咳に関連している2つの論文を紹介します。

マグネシウムと咳の関係 論文①マグネシウムは咳を抑制する

【PubMed】に掲載された研究では、全身麻酔予定の患者へマグネシウムを注射することで、咳を抑制する可能性があることが示されました。

方法

麻酔薬として用いられるスフェンタニルを急速静注すると、患者の咳を誘発することがあります。


そこで、スフェンタニルによる全身麻酔での手術が予定されていた患者を3つのグループに分けて、「50mlの生理食塩水」「30mg/kgのMgSO4」「50mg/kgのMgSO4」のいずれかを注射しました。

MgSO4(硫酸マグネシウム)は通常生理食塩水で50mlに希釈したものを使用。

注射の1分後、すべての患者に5秒以内に1.0μg/kgのスフェンタニルを注射し、スフェンタニル注射の30秒後に咳の発生率と重症度を記録しました。

参加者

全身麻酔での手術が予定されていた患者165名

結果

咳の発生率は以下の通りでした。
(A)50mlの生理食塩水を注射した患者:47.1%(B)30mg/kgのMgSO4を注射した患者:16.4%(C)50mg/kgのMgSO4を注射した患者:7.6%

(A)と比較して、(C)は軽度の咳の発生率が最も低く、(B)と(C)はともに中度および重度の咳の発生率が低いという結果に。

結論としてスフェンタニル誘発の咳は、麻酔導入時に30mg/kgのMgSO4を予防的に使用することで、効果的かつ安全に抑制できる可能性があることを示唆しています。


参考:Magnesium sulfate inhibits sufentanil-induced cough during anesthetic induction|PubMed

マグネシウムと咳の関係 論文②マグネシウムは咳の発生率を下げる

【PubMed】に掲載された研究では、全身麻酔を受ける患者へマグネシウムを噴霧することで、咳の発生率や重症度を下げることが明らかになりました。

方法

全身麻酔時には呼吸管理目的でチューブを気管に入れるため、手術後に喉が痛かったり、声が少しかすれたりすることがあります。

患者を4つのグループに分け、手術の15分前に「ケタミン」「硫酸マグネシウム250mg」 「硫酸マグネシウム500mg」また対照として「生理食塩水」が噴霧されました。

チューブを抜いた後、患者に 0、2、4、12、24 時間後に術後の喉の痛み、声のかすれ、咳を評価してもらい、咳の発生率と重症度に与える影響を比較。

参加者

硬膜外麻酔と全身麻酔の併用下で腹部と下肢の選択的手術を受ける患者60名

結果

ケタミンと硫酸マグネシウム500mgは、術後0、2、4時間で喉の痛みを、術後0時間で声のかすれを統計的に有意に減少させました。

生理食塩水と比較すると「ケタミン」「硫酸マグネシウム250mg」「硫酸マグネシウム500mg」が噴霧された患者はすべての期間で喉の痛み、声のかすれ、咳の発生率と重症度が減少しました。

参考:Comparison of Usefulness of Ketamine and Magnesium Sulfate Nebulizations for Attenuating Postoperative Sore Throat, Hoarseness of Voice, and Cough|PubMed

 マグネシウム不足のセルフチェックする /

マグネシウムで咳をケアする3つの摂取方法

マグネシウムで咳をケアする3つの摂取方法

マグネシウムを摂取するといっても、どう摂取したらいいのかわからない方もいらっしゃるかと思います。

そこで、マグネシウムの主な摂取方法を3つ紹介していきます。

  1. 食事でマグネシウムを摂取する
  2. サプリメントでマグネシウムを摂取する
  3. 経皮吸収でマグネシウムを摂取する

以下で1つずつ詳しく見ていきましょう。

食事でマグネシウムを摂取する

バランスのいい食事は、マグネシウムの摂取だけでなく、すべての栄養素の摂取についてもベストな選択といえるでしょう。

しかし、仕事や学業、家のことや育児で毎日を慌ただしく過ごす現代人にとって、1日に必要なマグネシウムを食事だけで補おうというのは、あまり現実的ではないかもしれません。

もちろん、栄養バランスのいい食事メニューを考えて調理し、3食しっかりとマグネシウムを摂取できればそれに越したことはないのですが、それが難しい場合はこれから紹介する以下の2つの方法も併用すると良いでしょう。

また、忙しくてなかなか自分では食事が用意できない方や、ついついコンビニを利用される方は、下記の記事をご参考にしていただき、マグネシウムが豊富な食品を摂るようにしてみることをおすすめします。

コンビニで買えるマグネシウム食品10選!手軽にマグネシウム補給! コンビニで買えるマグネシウム食品10選!手軽にマグネシウム補給!

サプリメントでマグネシウムを摂取する

食事からだけの摂取が難しいと感じる方は、必要に応じてサプリメントでマグネシウムを手軽に摂取することを始めてみてはいかがでしょうか。

その際に気をつけていただきたいのが、サプリメントの選び方です。
マグネシウムが含まれているサプリメントであれば、どれでもいいというワケではありません。

ポイントは、サプリメントでマグネシウムを補う場合には、細胞膜と同じ成分であるリポソームを活用した『吸収率に着目した』サプリメントを選ぶということです。

どのサプリメントを選んだらいいのかよくわからないという場合は、医師などに相談したり、ネットで色々と検索してみると自分に必要なサプリメントが見つけられるかもしれません。

マグネシウムサプリメントのおすすめ5選|吸収率で選ぶ失敗しないコツ マグネシウムサプリメントのおすすめ5選|吸収率で選ぶ失敗しないコツ

経皮吸収でマグネシウムを摂取する

実はマグネシウムは経皮から摂取することが可能です。

経皮摂取の身近な例でいいますと、入浴剤がわかりやすいかと思います。

入浴剤によってはマグネシウムが含まれており、経皮吸収することで体と心をリラックスさせたり、疲労回復や温浴効果を高める効果があるのです。

入浴剤以外にも、肌に直接塗るタイプの「マグネシウムバーム・クリーム」でも経皮吸収ができます

効果としては、肩こりや筋肉痛、足のつり、アトピー、妊娠線の改善なども!
それに加えて、マッサージによるリラックス効果も期待できるでしょう。

人によっては肌に塗ると刺激が強くヒリヒリ感じる方もいらっしゃるため、製品を選ぶ際は一度テスターやサンプルなどで試されると良いかもしれません。

マグネシウム風呂の効果とは?疲労回復・美肌を目指す健康入浴法 マグネシウム風呂の効果とは?疲労回復・美肌を目指す健康入浴法

マグネシウムと咳に関するよくある質問

マグネシウムと咳に関するよくある質問

Q1:マグネシウムはどんな咳にも効果があるのですか?

すべての咳に効果があるわけではありません

マグネシウムは気管支の筋肉を緩める働きがあるため、気管支が狭くなることで起こる咳には有効であると考えられます。
ただし、風邪やアレルギーなど他の原因による咳の場合は、根本的な原因への対処が必要です。

Q2:夜になると咳が出やすいのはなぜですか?

主に自律神経の働きによるものと推測されます。

記事でも説明しているように、夜は副交感神経が優位になり、気管支が昼間より狭くなるため咳が出やすくなります
マグネシウムは気管支の筋肉を緩める働きがあるため、夜の咳でお悩みの方は試してみる価値があるかもしれません。

Q3:咳を鎮めるのにマグネシウムの3つの摂取方法で、どれが一番おすすめですか?

あなたのライフスタイルに合わせて選ぶのが良いでしょう。

摂取方法メリット
食事理想的ですが、毎日の献立を考えたり、料理する時間がとれない時には難しいかもしれませんね。
サプリメント手軽で続けやすいです(吸収率の高いリポソームタイプがおすすめ)。
経皮吸収エプソムソルト(硫酸マグネシウム)などの入浴剤やマグネシウムバーム・クリームでリラックスしながら摂取できます。


これらの複数の方法を組み合わせるのもおすすめです。

まとめ|咳を鎮める方法の1つにマグネシウムの摂取を!

マグネシウムには「筋肉を弛緩させる働き」があり、気管支の平滑筋を緩めることで、狭くなった気道を広げ、咳を鎮める効果が期待できます。

特に夜間、副交感神経が優位になって気管支が狭くなることで起こる咳には、マグネシウムの摂取が有効かもしれません。
海外の研究でも、マグネシウムが咳の発生率や重症度を下げる可能性が示されています。

長引く咳でお悩みの方は、従来の対処法に加えて、マグネシウムの摂取を日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

あなたの健康管理の新しい選択肢として、マグネシウムの摂取(食事・サプリメント・経皮吸収)をぜひ取り入れてみてください。