現代人の悩み「睡眠負債」の健康リスクとは?|症状・対策をわかりやすく解説

現代人の悩み「睡眠負債」の健康リスクとは?|症状・対策をわかりやすく解説

「しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない…」

「日中に強い眠気を感じて困る…」

こんな悩みを持っている方は多いのではないでしょうか。

厚生労働省の「令和元年(2019年)国民健康・栄養調査報告」によると、40〜49歳の1日の平均睡眠時間で、もっとも回答が多かったのは「5時間以上6時間未満」で、世界的に見てももっとも睡眠時間が短い水準にあります。

多忙な現代人にとって、睡眠時間を削るのは決して珍しいことではありませんが、だからこそ睡眠を削ることを軽視しないよう注意が必要です。

今回は、小さな睡眠不足の積み重ねによって生じる睡眠負債について、心身への影響を中心に解説します。

慢性的に睡眠が不足している方は、本記事を参考に睡眠習慣や生活習慣を見直してみてください。

出典:令和元年国民健康・栄養調査報告|厚生労働省

睡眠負債とは?

睡眠負債とは?

睡眠負債とは、日々の睡眠不足が借金のように蓄積し、心身に悪影響を及ぼす可能性が高い状態のことです。

スタンフォード大学の教授であり、「睡眠医学の父」とも呼ばれた研究者であるウィリアム・C・デメント(William C. Dement)教授が1990年代頃から提唱し始めた概念で、ワークライフバランスが重視されるようになってきた近年、よく目や耳にする言葉のひとつです。

たとえば、本来は7時間の睡眠が必要な人が、平日に6時間しか眠れていない場合、その不足分は1日ごとに蓄積されていきます。

週末に長く寝て帳消しにしたつもりでも、体内リズムが乱れることで二次的な不具合が生じ、睡眠負債が完全に解消されないケースも珍しくありません。

睡眠負債は自覚しにくく、慢性化しやすい傾向があります。そのため、「眠いのが当たり前」「疲れているのが普通」と感じている方ほど注意が必要です。

また、デメント教授によると、睡眠負債を放置すると、以下のようなリスクが高まるとされています。

  • 注意力が散漫になる
  • 生活習慣病のリスクが高まる
  • 心血管疾患のリスクが高まる
  • うつ病など精神疾患のリスクが高まる

仕事を自宅に持ち帰り、夜遅くまで取り組んでいるケースや、多忙のため普段なかなか自分の時間を持てず、つい夜更かしをして自分の時間を満喫するのが習慣になっているケースは珍しくありません。

多忙だからこそ、どうしても睡眠時間を削るしかない場合もありますが、睡眠負債は自覚するのが難しいため、こうした習慣が日常的になると、無意識のうちに健康リスクが高まっていく恐れがあります。

睡眠負債の主な3つの症状

睡眠負債の主な3つの症状

睡眠負債は、さまざまな形で私たちの体と心に影響を与えます。

ここでは代表的な3つの症状について見ていきましょう。

脳への影響

睡眠が不足すると、脳の働きが低下しやすくなります。

たとえば、集中力や判断力が鈍り、仕事や家事でのミスが増えたり、感情のコントロールが難しくなり、些細なことでイライラしたり、気分が落ち込みやすくなったりするケースも珍しくありません。

こうした影響は、パフォーマンスやメンタルの低下だけでなく、交通事故などのリスクも高めるので注意が必要です。

また、脳は精神面だけでなく、ホルモンの分泌にもおおいに関係しています。

睡眠負債が蓄積することでホルモンバランスや自律神経が乱れやすくなる可能性もあるのです。

こうした状態を放置しておくと、うつ病などの精神疾患につながる可能性があります。

脳のコンディションは、日々のパフォーマンスや体調、メンタルなど、さまざまな方面に影響を及ぼします。

だからこそ、十分な睡眠で脳疲労を回復させる習慣が重要です。

免疫力の低下

睡眠中には、体の修復や免疫機能の調整が行われています。

睡眠負債が続くと、この働きが十分に行われにくくなり、風邪をひきやすくなったり、体調を崩しやすくなったりすることがあります。

また、睡眠不足は食欲を増加させるホルモンが分泌されやすくなるため、肥満につながる可能性もあります。つまり、十分な睡眠はダイエットにも欠かせないということです。

さらに、忙しい時期ほど体調管理が重要ですが、睡眠不足が続くことで、かえって回復に時間がかかってしまうケースもあります。

生活習慣病のリスクの上昇

慢性的な睡眠不足は、食欲を調整するホルモンのバランスを乱しやすいといわれています。

の結果、食べ過ぎや間食が増えやすくなり、体重管理が難しくなることがあります。

また、血圧や血糖値のコントロールにも影響を与える可能性があり、長期的には生活習慣病のリスクを高める要因になると考えられています。

以下は、主な生活習慣病の一覧です。

病名あるいは症状概要
糖尿病血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が多くなりすぎる病気。進行すると動脈硬化が進み、脳卒中や虚血性心疾患になりやすくなる。また、三大合併症として網膜症・腎症・神経障害があり、失明や透析につながる可能性がある。
高血圧日本人の高血圧の最大の原因は食塩の摂り過ぎだが、肥満が原因の高血圧も増加傾向にある。また、飲酒や運動不足も高血圧の原因となる。
脂質異常症血液中の脂質の値が基準値から外れた状態。動脈硬化の促進と関連している。
狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)喫煙やLDLコレステロールの高値、高血圧、メタボリックシンドロームなどにより心臓の血管の動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こしやすくなる。
脳血管障害・脳卒中脳の血管が詰まる脳梗塞と脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血がある。いずれも高血圧が最大の原因。
高尿酸血症血液中の尿酸が高い状態。痛風や尿路結石、腎障害の原因となるほか、高尿酸血症がある人では、肥満や高血圧、脂質異常症、高血糖を複合的に合併することが多い。脳卒中や心臓病などのリスクも高まる。
肥満と肥満症日本ではBody Mass Index(BMI)が25kg/m²以上の状態を指す。治療が必要な病気などが合併すると肥満症という。

出典:主な生活習慣病|厚生労働省

あなたは大丈夫?睡眠負債チェックリスト

あなたは大丈夫?睡眠負債チェックリスト

睡眠負債は自分では気付きにくいものです。

以下の項目に、いくつ当てはまるか確認してみましょう。

  • なかなか寝付けない日が多い
  • 平日は慢性的に睡眠時間が足りないと感じる
  • 休日に長時間寝だめをしている
  • 日中に強い眠気を感じることが多い
  • 集中力が続かず、作業効率が落ちている
  • 寝ても疲れが取れにくい
  • 夜中に何度も目が覚める
  • イライラしたりストレスを感じることが多い
  • 体調が優れないと感じる
  • 食欲の増加もしくは減少を感じる

複数当てはまる場合は、睡眠負債が溜まっている可能性があります。

無理を続ける前に、睡眠を見直すきっかけにしてみてください。

睡眠負債が溜まったらどうする?解消するための4つの対策

睡眠負債が溜まったらどうする?解消するための4つの対策

睡眠負債は、意識的に生活を整えていくことで、少しずつ軽減することができます。

ここでは実践しやすい4つの対策を紹介します。

安定的な睡眠習慣を保つ

まずは睡眠を習慣づけることを意識しましょう。

たとえば、毎日できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにしたり、時間を揃えるのが難しい場合は、一定の睡眠時間を確保したりといった具合です。

平日と休日の起床時間の差を小さくすることで、体内リズムが整いやすくなります。

なお、寝る時にスマートフォンを眺めるのが習慣になっている方は要注意。スマートフォンが発するブルーライトが脳を覚醒させるほか、特にショート動画やSNSは脳を興奮させるため、寝つきの悪さや睡眠の質の低下につながる可能性があります。

就寝時や就寝前は、スマートフォンなどのデジタルデバイスの使用を控え、リラックスして過ごしましょう。

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睡眠の質を高める

睡眠時間を一定に保つだけでなく、睡眠の質を改善する視点も大切です。

睡眠の質を改善する主な方法としては、以下のようなものがあげられます。

  • 寝室の照明を暗めにし、就寝前は強い光を避ける
  • 寝室の温度と湿度を快適に保つ
  • 自分の体に合った寝具を使用する
  • 寝具は通気性・吸湿性の良い素材を選ぶ
  • 寝室を静かで落ち着いた空間に保つ

これらをすべて完璧にこなす必要はありません。まずはできることから始めて、少しずつステップアップしていくのがおすすめです。

熟睡するための睡眠法│寝る前にリラックスする5つのテクニック」では、手軽に取り組める就寝前のリラックス法について解説しています。こちらもあわせてご覧ください。

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生活習慣を見直す

就寝直前のスマートフォン操作や、遅い時間の食事、カフェイン摂取は、眠りを妨げる原因になりやすいため注意が必要です。

その他、睡眠の質を改善するための生活習慣として、以下を意識してみましょう。

  • 寝る直前の仕事や考え事を避ける
  • 就寝前に激しい運動をしない
  • 就寝前の喫煙を控える
  • 寝る直前の大量の水分摂取を避ける
  • 朝起きたら日光を浴びる
  • 昼寝をする場合は短時間にとどめる
  • 寝酒を習慣にしない
  • バランスの取れた食事を心掛ける
  • 適度な運動を習慣にする
  • 日中に身体を動かす時間を確保する
  • 日中の長時間の座りっぱなしを避ける
  • ストレスを溜め込みすぎないよう工夫をする

これらを意識しながら、少しずつでも生活習慣を見直すことで、自然と眠りにつきやすくなるでしょう。決して無理せず、できるところから調整してみてください。

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寝る前にリラックスタイムを設ける

睡眠の質は、就寝前の過ごし方にも左右されます。

たとえば、寝る前に軽いストレッチや深呼吸を行ったり、瞑想やマインドフルネスを取り入れたりすると、入眠しやすくなったり睡眠の質が向上したりしやすいとされています。

また、静かな音楽を聴いたり、読書など心が落ち着く習慣を意識するのも良いでしょう。

これらとあわせ、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってリラックスタイムを楽しむのもおすすめです。特にマグネシウムを活用したマグネシウム風呂は、リラックスタイムの質をより高めるのに効果的です。

自分なりのリラックス方法を見つけて、リラックスタイムを習慣化しましょう。

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アレックス先生
アレックス先生

入眠までの時間を短縮したり、睡眠の質や深さを高めるたりするには、栄養面での工夫も役立ちます。

たとえば、睡眠と密接な関係にある栄養素として、マグネシウムとナイアシンアミドの2つがあげられます。

マグネシウムは、筋肉の緊張を和らげて血行を促進し、活発に活動している脳を落ち着かせるなど、体を入眠モードに導くための数多くの重要な役割を担っています。

マグネシウムは特に海藻類やかぼちゃの種、ココアパウダーなどに多く含まれています。

一方、ナイアシンアミドはビタミンB3の一種で、赤身肉や魚、鶏肉などに豊富に含まれています。

体内ではトリプトファンを原料としてナイアシンアミドが生成されますが、トリプトファンは実は、睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」の原料でもあります。

つまり、ナイアシンアミドが体内で不足すると、体はトリプトファンを使ってナイアシンアミドを優先的に生成しようとするため、結果的にメラトニンを十分に生成できなくなってしまう可能性があるのです。

このように、体内での栄養バランスが乱れないように、ナイアイシンアミドを食事などで補うようにしましょう。

マグネシウムとナイアシンアミドの積極的な摂取を意識することで、コンディションをバランス良く保ちやすくなり、スムーズな睡眠につながりやすくなります。

睡眠負債と睡眠障害の違い

睡眠負債と睡眠障害の違い

睡眠負債は、主に生活習慣によって生じる慢性的な睡眠不足の状態を指します。

一方、睡眠障害は、眠ろうとしても眠れない、途中で何度も目が覚めるなど、睡眠そのものに問題が生じている状態のことです。

睡眠負債が蓄積しているからといって必ずしも疾患や障害が生じるわけではありませんが、睡眠障害へと発展するリスクが高まる可能性があるため、できるだけ早めに対策するのが理想的です。

睡眠時間を確保しても不調が続く場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、専門家に相談することも一つの選択肢になります。「このくらいは平気」「みんなも同じようにしているから」と自己判断せず、不調が感じられる場合は早めに専門家に相談しましょう。

まとめ|睡眠負債のないライフスタイルを目指そう

まとめ|睡眠負債のないライフスタイルを目指そう

睡眠負債は気付かないうちに蓄積されていき、健康リスクを高めていきます。

たとえば、糖尿病や心血管疾患、うつ病、交通事故など、さまざまなリスクの要因になります。

心身の健康を長期的に守るためにも、まずは睡眠習慣をしっかりと見直し、睡眠負債を蓄積しないようにしましょう。

少しずつ生活習慣を整え、質の良い睡眠を積み重ねていくことで、心身のコンディションが整っていくのを感じられるはずです。

快適な睡眠と、健康的な生活習慣を実現するために、ぜひ本記事を活用してください。