お肌のかゆみやただれ、かさぶたといったアトピーの症状に悩んでいる方がたくさんいます。
日本国内においてアトピーの患者は増加傾向にあるとされており、厚生労働省によると、1987年には22万4千人だったアトピー患者数が、1999年には39万9千人にまで増加。
およそ1.8倍も増加していることになります。
アトピーの原因はアレルギーや遺伝、生活習慣などさまざまですが、実は「マグネシウム不足」も密かに関係していることをご存じでしょうか。
マグネシウムは私たちの体内で800以上の酵素反応に関わる、非常に重要なミネラルです。
その中には、皮膚のバリア機能を維持する働きも含まれており、不足すると肌が乾燥しやすくなり、外部刺激に敏感になってしまいます。
また、マグネシウムには免疫のバランスを整え、炎症を鎮める役割も。
今回は、アトピー性皮膚炎とマグネシウム不足の意外な関係について、科学的な視点から詳しく解説します。
日常生活で実践できるマグネシウムの摂取方法や注意点についてもご紹介しますので、肌トラブルに悩む方はぜひ参考にしてください。
参照:厚生労働省
アトピーとマグネシウムの関係性

アトピー性皮膚炎の症状には、肌の乾燥、かゆみ、赤み、炎症などがあります。
これらの症状は、皮膚の「バリア機能」が低下することで悪化しやすくなることが知られています。
バリア機能とは、皮膚の一番外側にある角層が、外部刺激やアレルゲン、細菌などから身体を守る役割を果たす機能のことです。
そして、このバリア機能を維持するために必要なのが、マグネシウムをはじめとしたミネラルなのです。
マグネシウムが不足すると、肌の保水力や脂質の合成が低下しやすくなり、お肌の乾燥リスクが高まります。
その結果、かゆみや炎症などが起こりやすくなるのです。
マグネシウム不足の背景には、現代人の食生活やストレス、睡眠不足なども関係しているとされています。
アトピーとミネラルバランスの関係を、さらに詳しく見ていきましょう。
アトピー性皮膚炎とミネラルバランス
アトピー性皮膚炎の原因が必ずしもミネラル不足というわけではありませんが、アトピー性皮膚炎の方の血液検査などによると、マグネシウム、亜鉛、鉄といったミネラルの不足が指摘されるケースが少なくありません。
特にマグネシウムは、ストレスによって尿から排出されやすくなるほか、加工食品やインスタント食品が中心の食生活だといっそう摂取量が不足しやすくなります。
本来、マグネシウムは玄米、ナッツ、海藻、豆類、魚介類などに豊富に含まれていますが、現代人はこうした食材をあまり食べなくなっています。
その結果、慢性的なミネラル不足に陥り、肌の調子が乱れやすくなってしまうのです。

アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患は、医学の中でもとりわけ治療が難しい分野の一つです。マグネシウムは多彩な作用を持ち、食事から取り入れることで皮膚の健康にも良い影響をもたらすとされています。
カナダでは、アトピー性皮膚炎に悩む多くの方に効果が見られた方法として、伝統的な日本の朝食である「わかめ入り味噌汁」「焼き鮭」「玄米ご飯」「ウーロン茶」の組み合わせが注目されました。
この朝食が症状の改善に役立ったとされる理由は、次の通りです。
- わかめと玄米に含まれるマグネシウムの豊富さ
- 鮭に含まれるオメガ3脂肪酸による抗炎症作用
- 味噌汁によるプロバイオティクス・プレバイオティクス効果
- 玄米に含まれる食物繊維による腸内環境の改善
- ウーロン茶に含まれるポリフェノールによるデトックス作用
このように、栄養バランスの取れた朝食を習慣にすることで、アトピー性皮膚炎の症状緩和につながる可能性があると考えられています。
セラミドとマグネシウムの関係
肌のバリア機能を語る上で欠かせないのが「セラミド」という成分です。
セラミドは、角質層の細胞同士をつなぎ、水分の蒸発や外部刺激の侵入を防ぐ働きをしています。
マグネシウムは、このセラミドの合成にも関わっています。
体内のマグネシウム量が十分であれば、皮膚細胞の新陳代謝がスムーズに行われ、セラミドの量も適切に保たれます。
逆にマグネシウムが不足してしまうと、セラミドが減少し、肌が乾燥・敏感になりやすくなります。
セラミド不足は、アトピー性皮膚炎の大きな特徴の一つとされています。
つまり、マグネシウムを意識的に補うことが、肌の乾燥対策やバリア機能改善に役立つと考えられるのです。
マグネシウムの抗炎症作用
マグネシウムには、免疫反応のバランスを整え、炎症を抑える作用もあるとされています。
アトピー性皮膚炎では、体内の免疫細胞が過剰に反応し、かゆみや赤み、炎症を引き起こすことが多いですが、マグネシウムにはこの「過剰な反応」を抑制する働きがあるのです。
また、アレルギー反応の一部であるヒスタミンの放出を抑える可能性もあるともいわれているため、マグネシウムをしっかり摂ることで、かゆみや炎症の悪化を予防しやすくなる可能性があります。
以下の記事では、肌のバリア機能や、かゆみが生じるメカニズムについて詳しく解説しています。併せてご覧ください。

マグネシウム内用・外用のメリット

免疫力を高め、お肌の健康を支えるために、マグネシウムをはじめとする各種ミネラルを積極的に摂りたいですよね。
でも、マグネシウムをどのように摂取すれば良いのでしょう?
実は、マグネシウムは食事やサプリメントを用いて「体の内側」から摂る方法と、皮膚に塗るなどして「体の外側」から吸収する方法の両方があります。
アトピー性皮膚炎に対策するなら、自分の体質やコンディションなどに合った方法をうまく組み合わせることが大切です。
ここからは、マグネシウムの具体的な摂取方法についてご紹介します。
食事でマグネシウムを摂る
マグネシウムを摂取するもっとも基本的な方法は、日々の食事からマグネシウムを意識して摂取することです。
特に以下の食材がおすすめです。
・玄米、雑穀ごはん
・かぼちゃの種、アーモンド、カシューナッツ、くるみなどのナッツ類
・わかめ、ひじき、昆布などの海藻
・納豆、豆腐、枝豆などの大豆製品
・いわし、さば、あじなどの青魚
忙しくて調理が難しい場合は、ふりかけや味噌汁に乾燥わかめをプラスするなど、簡単な工夫から始めてみてください。

マグネシウムサプリの活用
食事だけではマグネシウムを十分に摂取できない場合、サプリメントを活用するのもおすすめです。
マグネシウムサプリは薬局や通販で手軽に購入でき、粒タイプやパウダータイプなどさまざまな形状があります。
ただし、サプリメントは「摂りすぎ」に注意が必要です。
過剰摂取すると下痢や腹痛の原因になるため、用法・用量を守って活用しましょう。
エプソムソルト入浴の効果
外用で人気なのが、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)を使った入浴法です。
湯船にエプソムソルトを溶かして入浴することで、皮膚からマグネシウムが吸収され、血流改善やリラックス効果、皮膚の保湿効果などに期待できます。
アトピー性皮膚炎の方は、ぬるめのお湯(38℃前後)で10~15分程度入浴するのがおすすめです。
ただし、肌が敏感な時期や湿疹がひどいときは、様子を見ながら使用しましょう。
マグネシウムオイル・クリーム
よりお手軽に試したい場合は、マグネシウムオイルやクリーム、スプレーなどを活用しましょう。
気になる部分に直接塗ることで、局所的にマグネシウムを補うことができます。
肩こりや筋肉の緊張にも効果的とされており、アトピーの乾燥した肌にも優しく働きかけます。
ただし、敏感肌の方は、初めて使う際にパッチテストを行い、肌の状態や反応を確認しましょう。
マグネシウム活用時の注意点

マグネシウムはアトピー肌のケアに役立つミネラルですが、使い方には注意も必要です。
特に以下の点に注意し、トラブルリスクを避けましょう。
- サプリメントや食事の過剰摂取を避けること
- 刺激や違和感がある場合は無理に使わないこと
- 持病がある方や服薬している方は医師に相談すること
マグネシウムをたくさん摂りたいからといってサプリメントや食事を過剰に摂取すると、下痢や腹痛を起こす場合があります。
また、偏食するとかえって栄養バランスが崩れてしまう可能性も。
肌の炎症が強い時や傷がある場合、マグネシウムオイルなどの外用剤の使用により刺激を感じることがあります。
刺激や違和感がある場合は無理に使用せず、肌の状態が落ち着いてから使用するか、医師の相談の上で自分に合った使い方を検討しましょう。
サプリメントや外用剤を使用する際、持病がある方や薬を服用している方も、医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。
特にマグネシウムは腎臓に負担をかける場合があるため、腎疾患がある場合は注意が必要です。
まとめ|アトピー肌を優しく守るマグネシウム習慣を

アトピー性皮膚炎の症状は、体の内外からサポートすることで少しずつ改善できる可能性があります。
中でもマグネシウムは、肌のバリア機能維持や炎症抑制、免疫バランスの調整に欠かせないミネラルなので、意識して補うことで肌トラブルのケアにもつながります。
毎日の食事でマグネシウムや各種ミネラルをしっかりと摂ることを基本に、必要に応じてサプリメントやエプソムソルト、マグネシウムオイルなどを取り入れ、自分に合ったケア方法を見つけましょう。