「布団に入ってもなかなか眠れない…」
「夜中に何度も目が覚めてしまう…」
このような睡眠の悩みを抱えている人は、決して珍しくありません。
眠れない一方で、「眠らなきゃ」と焦れば焦るほど目が冴えてしまい、かえって眠れなくなったという経験がある方も多いでしょう。
「眠りたいのに眠れない」という現象は、一体なぜ起こるのでしょうか。
実は、睡眠には「自律神経」が大きく関係しています。
今回は、眠りたいのに眠れない原因をわかりやすく整理しながら、睡眠の質を高めるための具体的な対策について解説します。
スムーズに入眠したいと思っている方は、ぜひ本記事を参考に快適な睡眠を実現してください。
眠れない原因とは?睡眠と自律神経の関係

眠れない状態が続く背景には、睡眠と自律神経の密接な関係があります。
まずは自律神経がどのような役割を担っているのかを理解することが大切です。
自律神経の役割
自律神経は、呼吸・心拍・血液循環・体温調節・消化など、無意識のうちに体を調整している神経です。
自律神経には、日常生活を送っているときなど活動時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経の2つの種類があり、両者がバランスよく切り替わることで、心身の健康が保たれています。
たとえば、交感神経は自動車のアクセルの役割、副交感神経はブレーキの役割といえます。
交感神経が優位なときは心拍数が増え、血管が収縮して血圧が上がります。つまり、体が緊張した状態です。
逆に副交感神経が優位になると心拍数が減り、血圧も低下してリラックスした状態になります。
ところが、この切り替えがうまくいかなくなると、睡眠時に交感神経が優位になり覚醒してしまったり、逆に活動時に副交感神経が優位になってだるくなったり眠くなったりすることがあります。
睡眠中の自律神経のはたらき
睡眠中は、副交感神経が優位になることで、心拍数や血圧が落ち着き、体と脳が回復モードに入ります。
回復モードに入ることで、日中に受けたストレスや疲労の修復が進み、心身のコンディションが保たれます。
深い眠りの時間帯ほど副交感神経の働きが強く、質の良い睡眠が取れている状態です。
逆に眠りが浅いと、自律神経の切り替えがうまくいかず、十分な休息が得られにくくなります。
自律神経の乱れが睡眠に与える影響
自律神経のバランスが崩れると、本来夜に高まるはずの副交感神経が十分に機能せず、交感神経が優位な状態が続いてしまいます。
その結果、布団に入っても頭が冴えたままになり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりしやすくなるのです。
こうした状態は、単に自律神経失調症に結びつきやすいだけでなく、慢性的な睡眠不足を引き起こし、さまざまな健康リスクを高める恐れがあります。
自律神経が乱れる主な原因については、「自律神経が乱れる4つの原因とは?整えるために大切な栄養素と生活習慣」で詳しく解説しています。食事と生活習慣の観点から自律神経を整えたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
関連記事:自律神経が乱れる4つの原因とは?整えるために大切な栄養素と生活習慣
寝つきが悪くなる主な原因

自律神経の乱れは、寝つきが悪くなる原因のひとつですが、次の通り睡眠を妨げる要因はさまざまです。
- 仕事の過度な疲労やストレス
- 人間関係によるストレス
- 夜遅くまでのスマートフォン使用
- 生活リズムの乱れ
- 就寝直前の食事
- 就寝前のカフェイン摂取
- 過度な飲酒
これらは交感神経を刺激しやすく、体が「休む準備」に切り替わりにくくなる原因です。
また、室内環境が快適でない場合や、寝具が体に合っていない場合も、無意識のうちに自律神経へ負担をかけてしまいます。
寝つきの悪さを感じた場合は、自律神経を整える生活習慣や睡眠対策を意識することに加え、上記のような習慣に思い当たるところがないか振り返ってみましょう。

自律神経を整える睡眠対策

自律神経を整えるのに、特別なことをする必要はありません。
日常の中で少しずつ習慣や環境を整えることが大切です。
ここでは、すぐに取り組める4つの睡眠対策を紹介します。
1.室内温度への配慮
寝室の温度が高すぎたり低すぎたりすると、体は無意識に緊張しやすくなります。
室温が睡眠の妨げにならないよう、快適な温度帯を保ちましょう。
睡眠時の寝室の推奨温度は、以下の通り機関や条件等により異なります。
- 世界保健機関(WHO)…推奨温度は18℃以上(高齢者や乳幼児がいる場合は20℃以上)。健康リスク(循環器疾患、呼吸器疾患)を避けるには、これ以下の温度は危険とされています。
- アメリカ睡眠医学会(AASM)およびSleep Foundation…推奨温度は15.5〜19.5℃(約60〜67°F)。この温度帯は、特に深いノンレム睡眠を促進すると報告されており、入眠しやすい環境作りにつながると考えられています。
- 日本睡眠学会…推奨温度は16〜20℃、湿度は40〜60%。ただし、季節や寝室の断熱性、寝具などの条件により調整すべきとされています。
結論として、健康的な成人の場合、睡眠時の寝室の室温は16〜19℃が理想的だと考えられます。
ただし、快適な入眠・睡眠のためには、室温だけでなく湿度や通気性、寝具の性能なども重要なので、総合的に調整するのが理想的です。
- 健康な成人…16〜19℃
- 高齢者・乳幼児…18〜22℃
- 一般家庭(冬場)…18〜20℃
- 一般家庭(夏場)…25〜27℃(冷房時)
2.光源の管理
入眠時・睡眠時に浴びる照明の光は、睡眠に影響を与えるメラトニンの分泌を抑制します。
そのため、明るい部屋で過ごした後や、明るい部屋の中で就寝を試みると、睡眠の質が悪化しやすいとされており、寝つきが悪くなることもあります。
メラトニンの分泌抑制は、50ルクス程度の光でも起こるとされており、これは一般家庭の廊下や階段の豆電球程度の明るさです。
つまり、就寝前はメインとなる照明を消し、間接照明などでトーンダウンした部屋で過ごすこと、そして就寝時には照明を切った状態で入眠するのが推奨されます。
ただし、中には電気をつけるとかえって寝つけないという方もいるでしょう。その場合は常夜灯や豆電球、小さな間接照明、足元灯など、睡眠環境の快適さを損なわないレベルの照明を用いても問題ありません。
なお、室内照明を消して布団やベッドに入ったとしても、スマートフォンを使っていては意味がありません。布団やベッドにスマートフォンなどデジタルデバイスを持ち込まないことも、習慣として意識しましょう。
3.音の管理
寝室の騒音も、自律神経の乱れにつながります。
たとえば、大きな道路に面している場合、夜間の車やトラック、バイクの騒音が気になるケースもあるでしょう。
あるいは、工場や大型商業施設などが近所にある場合、空港や駅が近所にある場合も、騒音が原因で睡眠が妨げられることもあります。
このように、外の音が気になる場合は、カーテンを厚手のものにしたり、防音壁や防音カーテンなどを活用したりするなど、静かな環境を意識して整えるのがおすすめです。
また、家電やデジタル機器の騒音が気になる場合もあります。たとえば冷蔵庫の駆動音や、時計の秒針の音。スマートフォンの通知音などが障害になる場合もあります。
冷蔵庫など家電製品の駆動音は静音マットで対策、時計は静音型のものを選び、スマートフォンはミュートにしたり通知音を切ったりして対策しましょう。
私が統合中医学(TCM)の臨床家として活動していた頃、専門家としての知見をより深めるために、MCAT(医学部進学適性試験)の受験を決意しました。試験をパスするためには、週40時間の勉強を6か月間続ける必要がありました。週に約50時間の診療業務を並行しながらです。
MCATは約7時間にわたる試験で、化学、物理、数学、心理学、生物学など分野も広範で、非常にストレスのかかる内容です。この期間中は、あらゆる娯楽や週末の休暇、交際、スクリーンタイムを手放しました。
しかし、唯一手放さなかったのが「睡眠」です。
私は常に夜9時から朝5時まで、毎晩8時間の睡眠を優先しました。結果として、48歳という年齢でこの過酷なプロジェクトをやり遂げ、MCATで高得点を取ることができたのです。
この期間中にやめたことの一つに「SNS」があります。SNSをやめた結果、人生でもっとも深く、質の高い眠りを得ることができました。
今回、この話をしたのは、「SNSを制限する」というシンプルな選択こそが、睡眠の質を大きく高めた要因の一つだったと感じているためです。
SNSは私たちにさまざまな悪影響を及ぼしますが、もっとも深刻なのは自律神経の活動を低下させることかもしれません。
4.寝具の管理
寝具は体が直接触れるため、睡眠の質に直接作用する重要な要素です。
枕やマットレスが体に合っていないと、寝ている間も体に余計な力が入りやすくなります。
自然な形でリラックスモードに入れるよう、自分の体に合った寝具を選びましょう。
また、寝具は睡眠の質のほか、肌荒れの原因になる場合もあります。
なかなか改善しない肌荒れが気になる方は、以下の記事も併せてお読みください。
※記事公開時に、当月執筆分の以下の記事を関連記事として挿入してください。
関連記事:なかなか改善しない肌荒れの原因は寝具かも?肌に優しい寝具の選び方(※公開時要調整)
5.リラックス習慣
ストレスなど心理的要因で、なかなか寝つけないケースもあります。普段からストレスをためないよう工夫することも大切ですが、就寝前のリラックスタイムを習慣づけることで、スムーズに入眠しやすくなる可能性があります。
ぬるめのお風呂に入ったり、軽くストレッチをしたりして、心身の緊張をほぐしましょう。
寝る前のリラックス習慣としておすすめの方法は、「熟睡するための睡眠法│寝る前にリラックスする5つのテクニック」で詳しく紹介しています。なかなか寝つけないという方は、こちらの記事も併せてお読みください。
まとめ|自律神経を整えて睡眠の質を改善しよう

眠れない状態が続くと、心身の不調だけでなく、自律神経の乱れを招く可能性があります。
自律神経が乱れると、いっそう寝つきが悪くなりやすく、悪循環に陥ってしまう場合もあります。
睡眠と自律神経は密接な関係にあるため、寝つきを改善するには自律神経を整えるのが効果的です。
本記事で紹介した睡眠対策を実践しながら、暮らしの中に少しずつ睡眠習慣やリラックス習慣を取り入れてみてください。

