「夜中に突然、ふくらはぎの激痛で目が覚める」
「激しい運動後に足がピーンとつってしまう」
「出産後、足がつりやすくなった」
このような経験はありませんか?
足のつりの原因はスポーツや激しい運動後の筋肉の疲労、加齢による筋力の衰え、水分不足などを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は「栄養不足」も1つの原因だと言われています。
今回は栄養不足によって足のつりが引き起こされる理由と仕組みを科学的なエビデンスに基づいて解説します。
また、栄養不足以外の足がつる原因や今日から実践できる足のつりの予防法、正しい対処法についても紹介しているので、足がつりやすい方はぜひご参考にしてください。
栄養不足が「足がつる」原因になる理由

足がつる(こむら返り)は、ふくらはぎなどの筋肉が突然収縮し、痙攣(けいれん)を起こす現象です。
この筋肉の収縮と弛緩をコントロールしているのが、カリウム、ビタミンB群、カルシウム、マグネシウムといった栄養素です。
筋肉は体内のミネラルバランスによって、「縮む」「緩む」を繰り返しています。
このバランスが崩れると、筋肉が異常に収縮したまま元に戻らなくなり、「足がつる」状態になってしまうのです。
特に現代人は、ダイエットや偏った食事、加工・精製食品中心の生活により、ミネラルが慢性的に足りていません。
そのため、栄養不足は筋機能を妨げ、足のつりを引き起こしやすくします。
特に夜間は汗をかいて水分やミネラルが失われたり、足の血の巡りが悪くなったりするため、足がつりやすい状態と言えるでしょう。
私が鍼治療の現場で患者さんを診ていたとき、施術の翌日に再び筋肉が硬くなってしまうケースがよくありました。
こうした場合、多くはマグネシウムをはじめとしたミネラル不足による栄養バランスの乱れが原因です。
そのため、まずは食生活や服用中の薬を丁寧に確認し、必要に応じてマグネシウムの補給を提案していました。
外用(入浴剤やオイル、バーム)として使う場合もあれば、内服サプリで取り入れることもあります。
【エビデンス】論文でわかる栄養不足と足のつりの関係

ここでは、特定の栄養素不足と足のつりの関係について、3つの医学研究や栄養学の論文を引用しながら、科学的根拠をもとに解説します。
ビタミンB群の不足で足のつりが起きやすくなる
ビタミンB群は筋肉の正常な機能と神経伝達を維持するために大切な栄養素です。
これらが不足すると、夜間の足のつりが起きやすくなります。
1998年のランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、高血圧を持つ65歳以上の28名にビタミンBを3ヶ月間投与した結果、86%に顕著な症状の改善が見られた一方で、プラセボ群では改善が見られませんでした。
つまり、この研究においてはビタミンBが夜間の足のつりの頻度、強度、持続時間を有意に減少させることが確認されたのです。
(※すべての人に当てはまるわけではありません)
カルシウム不足が筋痙攣(けいれん)を招く
カルシウムは筋肉の収縮と神経伝達に不可欠なミネラルです。
血液中のカルシウム濃度が低下すると、神経や筋肉が過剰に興奮し、筋肉の痙攣や足のつりを引き起こします。
MSDマニュアルによれば、軽度の低カルシウム血症は筋肉の痙攣を引き起こし、重度(血清カルシウム7mg/dL未満)では反射亢進、テタニー(唇・舌・指・足のしびれ、手足や顔面の痙攣、筋肉痛)、全身性の痙攣が起こる可能性があると示しています。
また、低カルシウム血症が進行すると、背中や足の痙攣が一般的に見られることがわかりました。
(※すべての人に当てはまるわけではありません)
引用:Hypocalcemia|MSD Manual Professional
マグネシウム不足が筋肉の痙攣につながる
マグネシウムは筋肉の弛緩と神経伝達に関わり、カルシウムとともに筋肉の収縮・弛緩のバランスを調整しているミネラルです。
マグネシウムは筋肉の働きに関わる栄養素の1つであり、バランスの良い摂取が推奨されています。
2025年の論文によれば、低マグネシウム血症の神経筋症状として、震え、痙攣などの神経筋の過興奮性から、重度の場合は痙攣発作や不随意運動まで幅広く現れるとしています。
引用:The Clinical Spectrum of Acquired Hypomagnesemia: From Etiology to Therapeutic Approaches|MDPI

栄養不足だけじゃない!足がつる5つの原因

足がつる原因は栄養不足だけではありません。
日常生活の中にあるさまざまな要因が重なり合って発症します。
ここでは、栄養不足以外で足がつる主な5つの原因を解説します。
筋肉の疲労
激しい運動や長時間の立ち仕事をした後などは、筋肉が疲労して足がつりやすくなります。
筋肉が疲れると、筋肉の収縮を調整するセンサーの働きが低下し、異常な収縮が起きやすくなるのです。
特に運動不足の方が急に体を動かした場合や、普段使わない筋肉を使った場合に起こりやすくなります。
筋肉疲労による足のつりを防ぐには、運動前後のストレッチ、適度な休息、そして疲労回復に必要な栄養素の摂取が欠かせません。
水分不足
体内の水分が不足すると、血液がドロドロになり血の巡りが悪くなります。
その結果、筋肉は硬くなって痙攣を起こしやすくなるため、足がつりやすい状態になるのです。
特に就寝中は気づかないうちに汗で水分を失いやすいため、夜中や明け方に足がつりやすい傾向にあります。
また、夏場の運動時や、利尿作用のあるコーヒーやお茶を大量に飲んだ後も脱水状態になりやすいため注意が必要です。
寝る前にコップ1杯の水を飲むなどして、夜間の足のつりを防ぐようにしましょう。
筋肉の緊張
足の冷えや長時間同じ姿勢でいると、筋肉が緊張して硬くなり、血行が悪くなります。
この状態で急に足を伸ばすと、筋肉が異常に収縮して足がつりやすくなります。
特に冬場やエアコンの効いた室内で長時間過ごす方、デスクワークで同じ姿勢が続く方はご注意ください。
また、寝ている間に足が冷えて筋肉が緊張し、明け方に足がつるケースも見られます。
レッグウォーマーで足元を温める、こまめに足首を回す、就寝前に軽いストレッチをするなどして、予防すると良いでしょう。
加齢による筋力の衰え
加齢とともに筋肉量が減少し、腱や腱鞘も硬くなっていきます。
筋肉量が減ると少しの負荷でも筋肉が疲れやすくなり、足がつりやすくなってしまうのです。
また、加齢によって血流も悪くなりがちなので、適度な運動で筋力を維持し、栄養バランスの良い食事を心がけて足のつりを予防しましょう。
妊娠による体の変化
妊娠中は体内のミネラルバランスが崩れやすく、また大きくなったお腹が下大静脈を圧迫して血液の循環が悪くなります。
さらに、体重が増えることで足に負担がかかるため、足がつりやすくなります。
特に妊娠後期になると、赤ちゃんの成長のためにカルシウムやマグネシウムが大量に使われるため、母体のミネラルバランスが崩れやすくなりがちです。
妊娠中に足がつりやすい方は、バランスの良い食事を心がけ、必要に応じて医師に相談してサプリメントを活用することも検討しましょう。
足がつる人が意識すべき4つの栄養素

足がつりやすい人にとって、特に大切な4つの栄養素について、その役割と多く含まれる食材を紹介します。
カリウム
| 働き | カリウムは、筋肉の収縮や神経の伝達をスムーズにする働きがあるミネラルです。カルシウム、マグネシウムと連携して、筋肉を正常な状態に保ちます。 カリウムは汗と一緒に失われやすいため、運動後や夏場は特に不足しがちです。不足すると、神経から筋肉への指令がうまく伝わらず、足がつりやすくなります。 |
| 食材 | バナナ、メロンなどの果物、ほうれん草、さつまいもなどのイモ類、納豆、切り干し大根、海藻類など |
ビタミンB群
| 働き | ビタミンB群は、糖質からエネルギーを作り出す際に必要な栄養素で、筋肉の疲労回復と神経機能の維持に欠かせません。 特にビタミンB1(チアミン)は、脳や神経機能を正常に働かせる役割があり、不足すると足がつりやすくなります。 |
| 食材 | 豚肉、レバー、マグロ、カツオ、玄米、胚芽米、ナッツ類、大豆製品など |
カルシウム
| 働き | カルシウムは筋肉を収縮させる働きを持つミネラルで、骨だけでなく筋肉の正常な機能にも不可欠です。 不足すると筋肉の痙攣や足のつりが起きやすくなります。 |
| 食材 | 牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、豆腐、納豆などの大豆製品、小魚、小松菜、チンゲン菜、大根の葉など |
マグネシウム
| 働き | マグネシウムは筋肉を緩める働きを持つミネラルで、カルシウムとカリウムの働きを調整する重要な役割を果たします。 マグネシウムが不足すると、筋肉が異常に収縮したまま戻らなくなり、足がつる原因になります。 発汗によりカルシウムよりも多く失われやすいため、運動をする方や汗をかきやすい方は特に意識的に摂取する必要があります。 |
| 食材 | わかめ、あおさ、ひじきなどの海藻類、アーモンド、カシューナッツなどのナッツ類、ごま、大豆製品、バナナ、玄米など |
今日からできる!足のつりを防ぐ5つの予防ポイント

今日から取り入れられる、足のつりを防ぐための具体的な予防ポイント5つが以下です。
- バランスの良い食事
- サプリメントの活用
- 十分な水分補給
- 定期的な運動
- 足の冷えへの対処
1つずつ、順番に確認していきましょう。
バランスの良い食事
まず基本となるのは毎日の栄養バランスの整った食事です。
足のつりを防ぐには、先ほど解説したカリウム、ビタミンB群、カルシウム、マグネシウムを満遍なく摂ることが大切です。
特定の栄養素だけに偏らず、多様な食材を組み合わせて摂取するようにしましょう。
サプリメントの活用
仕事や家事で忙しく、食事だけで必要な栄養素をバランスよく摂るのが難しい方は、サプリメントを補助的に使うと良いでしょう。
ただし、サプリメントはあくまで補助です。
基本は食事からの栄養摂取を心がけ、不足分を補う形で利用しましょう。
また、腎臓病などの持病がある方や薬を服用している方は、サプリメントによって思わぬ副作用が生じたり、薬の効果が弱まってしまうことも考えられるため、医師や薬剤師に相談してから使用してください。
十分な水分補給
体内の水分が不足すると、血液の巡りが悪くなり、筋肉が硬くなって足がつりやすくなります。
特に就寝中は汗や呼吸で気づかないまま水分を失っているため、夜間の足のつりを防ぐには水分補給が欠かせません。
就寝前にコップ1杯の水を飲んだり、運動前後にはこまめに水分補給をするなどして、体内の水分をできるだけ保持するようにしましょう。
スポーツドリンクは水分だけでなく電解質も同時に補給できますが、糖分が多いため、糖尿病の方や日常的な水分補給には水やお茶がおすすめです。
定期的な運動
適度な運動は筋肉量を維持し、血流を改善するため、足のつりの予防に効果的だと考えられます。
特に加齢による筋力低下が気になる方は、ウォーキングや簡単なストレッチなどで日常的に体を動かす習慣をつけるようにしましょう。
足の冷えへの対処
足が冷えると筋肉が緊張し、血行が悪くなって足がつりやすくなります。
特に冬場や冷房の効いた室内では、足元を温める以下のような対策をとると良いでしょう。
- レッグウォーマーや厚手の靴下を着用する
- 就寝前に足湯をする
- 湯たんぽや電気毛布で足元を温める
- マッサージで血流を促進する
足がつったときの正しい対処法3選

足のつりの予防だけでなく、ここでは実際に足がつってしまったときの即効性のある対処法を3つ紹介します。
ストレッチ
足がつったときは、まず収縮した筋肉をゆっくり伸ばすことが効果的です。
特にふくらはぎがつった場合は、膝を伸ばした状態で座り、つった方の足のつま先を手でつかんでゆっくり手前に引き寄せます。
ふくらはぎが伸びた状態をキープし、ゆっくり戻します。
これを痙攣が治まるまで繰り返しましょう。
マッサージと温熱ケア
筋肉をほぐすマッサージと温熱ケアも足がつった時の対処法として役立ちます。
足首から膝に向かって優しく撫で上げたり、ふくらはぎを両手で包み込んで円を描くように揉んだりして、血流を改善しましょう。
温熱ケアでは、温かいタオルで患部を温めたり、お湯に足を浸けたり、湯たんぽや温熱シートを使う方法もあります。
病院での診断
たまに足がつる程度なら心配ありませんが、週に何度も繰り返したりと頻繁に足がつる場合は、医療機関を受診してください。
足のつりの背景には、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎不全、下肢静脈瘤、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)などの病気が隠れている可能性もあるため、自己判断せずに専門家のアドバイスを受けましょう。
栄養不足と足のつりに関するよくある質問

栄養不足と足のつりの関係について、よくある質問に回答していきます。
ご参考にしてください。
Q1:寝てる時に足がつるのは栄養不足のサインですか?
栄養不足が原因になっている場合もあります。
夜間や明け方に足がつりやすいのは、就寝中に汗で水分とミネラルが失われ、体内のバランスが崩れやすいためです。
ただし、栄養不足だけでなく筋肉疲労や冷え、血流不良も関係しているため、一概に栄養不足だと断定はできませんが、1つの可能性であるとは言えます。
Q2:妊娠中に足がつりやすいのはなぜ?
体内のミネラルバランスが崩れやすく、血液循環も悪化するためです。
妊娠中は赤ちゃんの成長のためにカルシウムやマグネシウムが大量に使われ、母体に栄養が不足しがちです。
また、お腹が大きくなることで血液循環が悪くなり、体重増加で足に負担がかかることも要因の1つです。
Q3:毎日足がつるのは病気の可能性がありますか?何科を受診すべき?
病気が隠れている可能性があるため、医療機関での受診をおすすめします。
毎日のように繰り返す場合は、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎臓病などの病気が隠れている可能性があります。
まずは整形外科や内科に行き、原因を特定してもらいましょう。
まとめ|栄養と生活習慣を整えて、足のつりを根本から防ごう!

足がつる原因は、栄養不足だけでなく、疲労や水分不足、加齢など複数の要因が絡み合っています。
特にカリウムやビタミンB群、カルシウム、マグネシウムといった栄養素の不足は、筋肉の収縮と弛緩のバランスを崩し、足のつりを引き起こしやすくします。
大切なのは、毎日のバランスの取れた食事と十分な水分補給を基本としながら、必要に応じてサプリメントで補うこと。
そして適度な運動で筋肉を維持し、冷えから足を守るなど、生活習慣を整えることです。
今回の記事を参考に、足のつりを予防する習慣をはじめてみてください。

