ステアリン酸マグネシウムとは?安全性と効果を科学的に解説

ステアリン酸マグネシウムとは?安全性と効果を科学的に解説

ステアリン酸マグネシウムは、化粧品やサプリメントの成分表示でよく見かける添加物のひとつです。

しかし、その化学的な名前から「体に悪くないの?」「副作用はある?」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

特に健康や美容に敏感な30代〜50代の女性にとって、体に取り入れるものは慎重に選びたいところ。

実際には、ステアリン酸マグネシウムは薬やサプリの製造工程で欠かせない「潤滑剤」として使われており、国際的にも安全性が認められています

本記事では「ステアリン酸マグネシウム」の正体や安全性、活用される理由について、科学的根拠と日常への活かし方を交えてわかりやすく解説します。

これを読めば、安心して選べる知識と、健康を考える上で参考になる視点が得られはずです。

ステアリン酸マグネシウムとは?

ステアリン酸マグネシウムとは?

ステアリン酸マグネシウムは、マグネシウムと脂肪酸の一種であるステアリン酸が結合した化合物で、見た目は白色の乾燥した粉末です

多くは豚などの動物由来ですが、パーム油・ココナッツオイル・植物油など植物由来のものなど様々です。

ステアリン酸マグネシウムを使うことで、サプリや薬の製造をする際に粉末が均一に混ざりやすくなり、機械への付着を防ぐことで品質を安定させられるようになります。

米国FDAや欧州EFSA、日本の厚生労働省も食品添加物として使用を許可しており、安全性は国際的に認められています。

ステアリン酸マグネシウムの用途と3つのメリット

ステアリン酸マグネシウムの用途と3つのメリット

ステアリン酸マグネシウムは成分そのものが栄養を与えるというよりは、サプリメントや化粧品などの品質を安定させる目的で使われています

主なメリットは以下の3つです。

  • 錠剤やカプセルの製造効率を高める
  • 保存性が上がる
  • 付着性や滑らかさが向上する

それぞれ順番に見ていきましょう。

錠剤やカプセルの製造効率が高まる

ステアリン酸マグネシウムは、粉末が製造機器に付着するのを防ぎ、錠剤やカプセルの形状を均一に整える働きがあります。

これによって製造効率が高まり、品質も安定します。

製品の見た目や手触りがよくなるだけでなく、崩れにくく有効成分も均一に混ざりやすくなるため、品質の安定したサプリメントや薬を作るうえで欠かせない存在だと言えるでしょう。

保存性が上がる

ステアリン酸マグネシウムは水に溶けにくく、製品内部への湿気の侵入を防ぐバリアの役割を果たします

そのため、有効成分の酸化や劣化を抑えることでき、賞味期限・使用期限を延ばすのに役立ちます。

湿気の多い日本の気候では特に有効であり、品質保持の面で大きなメリットをもたらすでしょう。

付着性や滑らかさが向上する

粉末ファンデーションやフェイスパウダーにステアリン酸マグネシウムが配合されると、粉同士が均一に広がり、肌への付着性が高まります

その結果、化粧崩れを防ぎやすく、さらっとした仕上がりが続く傾向があります。

さらに、表面をなめらかに整える作用があるため、塗布時の摩擦を減らし、肌への負担を和らげる作用も。

特に乾燥肌や敏感肌の方にとって、こうした滑らかな質感はメイクの快適さを大きく左右するので、メリットを感じやすいでしょう。

参考:What is Magnesium Stearate (E470b): Uses, Safety, Side effects and More|FOODADDITIVES

ステアリン酸マグネシウムの用途と3つのメリット

料理用の塩を容器に入れておくと、湿気の多い環境では塩がくっついて固まり、「ダマ」になることがあります。

これを防ぐために、多くの人が塩の入った容器に数粒のお米を入れています。

お米が湿気を吸ってくれるおかげで、塩がサラサラの状態を保てるからです。

サプリメントの製造でも、これと似たような対策がとられています。

原料同士がくっついてしまわないように、「ステアリン酸マグネシウム」の粉末を、ごく少量(1%未満)だけ加えることがあります。このひと工夫で、成分が均一に混ざりやすくなり、製品の品質を保つのに役立っています。

ステアリン酸マグネシウムの危険性|副作用は?

ステアリン酸マグネシウムの危険性|副作用は?

ここでは、ステアリン酸マグネシウムの安全性の根拠と副作用の有無について科学的に解説します。

ステアリン酸マグネシウムは安全

ステアリン酸マグネシウムは一般的には安全とみなされている添加物です。


アメリカ合衆国連邦規則集の公式サイトである「eCFR(Electronic Code of Federal Regulations)」によれば、ステアリン酸マグネシウムは【GRAS(Generally Recognized As Safe)】=安全と分類されており、専門家の合意によって、安全性が十分認められていると明示されています。

参照:184.1440 Magnesium stearate.|Code of Federal Regulations

また、厚生労働省の公式見解でも、ステアリン酸マグネシウムは、ごく少量であれば安全な食品添加物であり、サプリメントなどに使われていても、過剰摂取するような量ではない限り、健康へのリスクは極めて低いとしています。

参照:「食品添加物ステアリン酸マグネシウムに関する評価結果」|厚生労働省

したがって、日常的な使用であれば、安全だと考えてよいでしょう。

ステアリン酸マグネシウムに副作用はある?

通常の使用であれば、ステアリン酸マグネシウムは安全かつ副作用はほとんど報告されていません。

しかし、高用量を長期間摂取した場合に限り、軽度の下痢や消化不良を起こす可能性があります。

If you ingest too much, it can have a laxative effect. It can irritate the mucosal lining of your bowels. This causes your bowels to spasm, triggering a bowel movement or even diarrhea.”
「(ステアリン酸マグネシウムを)過剰に摂取すると下剤のような作用を示すことがあります。 腸の粘膜を刺激し、それによって腸がけいれんし、排便や下痢を引き起こすことがあります」
引用:Everything You Should Know About Magnesium Stearate|Healthline

また、一般的な使用場面ではないことですが、ステアリン酸マグネシウムをそのまま吸入した場合には、咳(せき)や呼吸器症状を引き起こす可能性があると示す報告もあります。

参考:Is Magnesium Stearate Safe? Understanding Its Role in Supplements and Foods|Verywell Health

いずれにせよ、私たちが日常的にステアリン酸マグネシウムを摂取する場合であれば、副作用の心配はほぼないと言えるでしょう。

ステアリン酸マグネシウムとマグネシウムの違いとは?

ステアリン酸マグネシウムとマグネシウムの違いとは?

ステアリン酸マグネシウムは名前に「マグネシウム」とついているため、栄養素としてのマグネシウムと混同されがちですが、この2つは全く異なるものです。

栄養素としてのマグネシウムは、私たちの骨や筋肉、神経の正常な働きに欠かせない必須ミネラルです。

一方、ステアリン酸マグネシウムはその供給源ではなく、製品の加工を助ける添加物に過ぎません

その違いを整理すると以下の通りです。

<ステアリン酸マグネシウムとマグネシウムの違い>

ステアリン酸マグネシウムマグネシウム
使用目的薬品、サプリなどの製造工程での「潤滑剤」体に作用を与える有効成分
必要摂取量該当しない成人で1日約280~380mg
安全性過剰摂取で下痢や消化不良を起こす場合あり過剰摂取で、下痢・吐き気・腹部けいれんの可能性あり

参考:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書|厚生労働省

マグネシウムの副作用については、以下の記事でわかりやすく解説しています。

こちらも併せてご覧ください。

マグネシウムに副作用はある?薬とサプリメントの違いや正しい摂取量を解説 マグネシウムに副作用はある?薬とサプリメントの違いや正しい摂取量を解説

ステアリン酸マグネシウムだけじゃない!賢い成分の見極め方

ステアリン酸マグネシウムだけじゃない!賢い成分の見極め方

健康食品やサプリメントを選ぶとき、「添加物が入っているものはすべて危険」と考えがちですが、多くの添加物は品質保持や製造の安定化など、製品の安全性を確保するために必要なものです。

重要なのは科学的な安全性の評価と実際の使用量だということを押さえておいてください。

したがって、原材料表示を確認して添加物が入っているからと必要以上に避けるのではなく、添加物の目的や用法を知ることで、不要な不安を減らし、賢い選択ができるようになります。

FAQ(よくある質問)

FAQ(よくある質問)

Q1:ステアリン酸マグネシウムは本当に安全?

はい、安全です。

厚生労働省や米国FDA(食品医薬品局)などで使用が認められており、通常使用される量で健康被害は報告されていません

ただし、ごくまれに体質に合わないケースもあるため、気になる場合は医師に相談するとよいでしょう。

Q2:マグネシウムを摂りたい場合は別の成分がいい?

はい。

ステアリン酸マグネシウムには栄養素としてのマグネシウム効果はほとんどありません

マグネシウムを摂取したい場合は、「塩化マグネシウム」「クエン酸マグネシウム」などの栄養補助系サプリを選ぶのが適しています。

Q3:ステアリン酸マグネシウムに美容効果があるって本当?

ステアリン酸マグネシウム自体が美容成分ではありませんが、製剤の安定性や質感の改善により「塗りやすさ」「飲みやすさ」を向上させるため、結果として美容・健康習慣が続けやすくなるメリットが考えられます

まとめ:ステアリン酸マグネシウムは安全で用途に適した成分

まとめ:ステアリン酸マグネシウムは安全で用途に適した成分

ステアリン酸マグネシウムは、米国FDAや日本の厚生労働省も食品添加物として使用を認めるなど、安全で有効な成分です。

適切な使用量であれば副作用の報告はほとんどないため、日常の使用場面で不安に思う必要はありません。

成分の役割を正しく理解することで、その製品が安全なのか、自分に必要なのかどうかを判断できるようになるはずです。

ぜひ今回の記事をきっかけに、ステアリン酸マグネシウムを正しく知り、賢く活用して美容と健康に役立てていきましょう。