健康や美容に関心がある方にとって、「ビタミン」や「ミネラル」は耳に心地の良い言葉ですよね。
でも、これらが実際にどのように働き、どう違うのかということまで理解している人は、意外と少ないのではないでしょうか。
ビタミンもミネラルも、生命活動の維持に欠かせない重要な栄養素ですが、それぞれ構造や作用、体への影響は異なります。
今回は、現代の食生活で不足しがちと言われているビタミンとミネラルの違いや、具体的な役割、効果的に摂取するためのポイントなどについてわかりやすく解説します。
大切な栄養素を効率的に補給するための参考として、ぜひ最後までお読みください。
ビタミンとミネラルの違いとは?

ビタミンとミネラルの大きな違いは、ビタミンが有機化合物であるのに対し、ミネラルは無機物であることです。
人類が有機化合物を作り出す技術を得るまで、有機化合物は「生物によって作り出される栄養素」と定義されており、一方の無機物は自然界に存在する鉄や亜鉛と同じく「鉱物由来の栄養素」と定義されていました。
「ビタミンは生物由来」「ミネラルは鉱物由来」というふうに考えると、両者の違いをイメージしやすいかもしれません。
ただし、現在では両者の定義が刷新され、有機化合物は「炭素が原子結合の中心となる物質の総称(炭素を含む物質)」、無機物は「炭素が原子結合に含まれない物質の総称(炭素を含まない物質)」と定義されています。
では、それぞれの性質について詳しく見ていきましょう。
ビタミンの基本的な特徴
ビタミンは、人間の体内でほとんど合成することができないため、基本的には食事などから摂取する必要があります。
種類としては大きく「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分けられます。
水溶性ビタミンは文字通り水に溶けやすいビタミンで、ビタミンCやビタミンB群などがあげられます。水溶性なので、摂取しても尿として排出されやすく、毎日こまめに摂る必要があります。
脂溶性ビタミンは、水に溶けにくく脂に溶けやすい性質を持っています。ビタミンAやビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどがそうです。
脂溶性ビタミンは水溶性ビタミンと違い、体内に蓄積されやすいため、過剰摂取に気をつける必要があります。
いずれもエネルギーを生み出すわけではありませんが、免疫機能や代謝機能、皮膚や粘膜の健康維持などに必要な栄養素です。
ミネラルの基本的な特徴
ミネラルは、体を構成する成分として必要な栄養素で、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、鉄、カリウムなどがよく知られています。
骨や歯、筋肉、血液、神経伝達などに欠かせない成分で、酵素の働きを助けたり、体液のバランスを整えたりといった役割があります。
たとえば、マグネシウムは800以上にも及ぶ酵素反応に関わっていることがわかっており、これは体内のあらゆる機能に関与しているということでもあります。
特に現代人はマグネシウムが不足しがちと言われていますが、マグネシウムに限らず多くのミネラルは、たとえ微量であっても不足するとさまざまな不調を引き起こす重要な栄養素です。
ミネラルは体内で合成されない(体内で作られない)ため、日ごろから意識的に摂取することが大切です。

これまでの常識では、極端な偏食をしない限り、日常の食事で深刻な栄養バランスの乱れは起きにくいとされてきました。ところが近年では、化学肥料の過剰使用や農薬によるビタミン・ミネラルの吸収阻害、さらに単一作物に頼るモノカルチャーといった農業の変化により、食材そのものの栄養価が著しく低下しています。
たとえば、100年前のニンジンと比べると、現代のニンジンは含まれる栄養素が大きく減っていると言われています。このような背景から、現代の食生活は一見バランスが取れているようでも、実際には栄養素の偏りが生じやすい状況にあるのです。
ビタミン・ミネラルの構造や必要量の違い
ビタミンCが熱に弱いことをご存知の方は多いでしょう。
有機化合物であるビタミンは、基本的に熱や光、酸化に弱いものが多く、調理方法や保存方法によって失われやすい性質です。
一方、ミネラルは無機物なので、比較的安定した性質です。
また、ビタミンとミネラルでは必要な摂取量にも違いがあり、ビタミンよりもミネラルの摂取量の方が多いのが一般的です。
ただし、疾患の治療を目的としたオーソモレキュラー栄養療法では、ビタミンをグラム単位で用いることも多く、ミネラルは通常ミリグラム単位で使用されるため、場合によっては必要な摂取量が逆転することもあります。
両者は体内での蓄積量も異なり、水溶性ビタミンが体外へ排出されやすいのに対し、脂溶性ビタミンや一部のミネラル(鉄や銅など)は体内に蓄積されやすいため、サプリメントなどで過剰摂取にならないよう注意が必要です。

ミネラルの重要性

普段の暮らしの中で、ミネラルの影響や重要性を実感することはあまりないかもしれませんが、実はミネラルは体のあらゆる生理機能に関わるとても重要な栄養素です。
ここでは、近年特に注目される代表的なミネラルの働きと、ミネラルの重要性について解説します。
ミネラルの働き
私たちにとってもっとも身近なミネラルの一つが「ナトリウム」です。
ナトリウムとは「塩分」のことで、海水に含まれていることからもわかるように、地球上の生物や自然にとって欠かせない栄養素です。
ナトリウムには体内の水分のバランスを調整する働きや、筋肉や神経を正常かつ健康的な状態に保つ働きなどがあります。
ただし、過剰に摂取すると高血圧や心疾患のリスクを高めるため、摂取量には注意が必要です。
カルシウムも私たちにとって身近なミネラルの一つです。
骨や歯の形成に欠かせないだけでなく、血液の凝固や筋肉の収縮、神経伝達など、多様な生理機能に関わっています。
特に成長期の子どもや、骨粗しょう症リスクが高まる高齢者は、カルシウムを意識的に摂取したいところです。
近年注目されているマグネシウムも、エネルギー代謝や筋肉の働き、自律神経の調整などにおいて重要な役割を果たしています。
マグネシウムが不足すると筋肉や神経に不調が表れやすくなるだけでなく、イライラしやすくなったり気分が落ち込んだりなど、メンタル面にも影響します。
このように、ミネラルは私たちが心身ともに健康的に生きるために、決して欠かせない要素なのです。
マグネシウムの摂取源と吸収率
現代日本人の食事は、高塩分高カロリーと言われており、ナトリウムの摂取はむしろ意識的に控えた方が良いという風潮があります。
実際、加工食品や外食で口にする食事は基本的に塩分が高く、特に濃い味に慣れてしまうと必然的に塩分の摂取量も増えがちです。
カルシウムに関しても、昔からカルシウム不足への懸念から、学校で牛乳が出されたり、健康のためにも毎日牛乳を飲んだりした経験がある方も多いでしょう。
カルシウムはチーズや小魚、大豆製品、ナッツ類、野菜などにも豊富に含まれているため、健康的な食事を摂っていれば、不足の心配はそれほどありません。
問題はマグネシウムです。
マグネシウムは特に海藻類や魚などの魚介類に豊富に含まれていますが、日本人の食の欧米化と、魚介類の消費量の低下に伴い、マグネシウムの摂取機会が減少しています。
そもそもマグネシウムは吸収率が比較的低く、経口摂取で摂ったうちの30%程度しか吸収されません。
ただでさえ吸収率が低いマグネシウムですが、近年は摂取機会の減少とともに、マグネシウム不足がいっそう深刻さを増しています。
マグネシウムを効率的に摂取するために、食事内容に配慮したり、サプリメントを活用したりする他、エプソムソルトなどを活用したマグネシウム風呂で経皮吸収を試みるといった工夫が必要です。

ビタミンとミネラルの相互作用とバランス

ビタミンとミネラルは、それぞれ特徴も役割も異なることがおわかりいただけたと思います。
しかし、これらはそれぞれ単体で作用し、健康に貢献するわけではありません。
ビタミンとミネラルは相互に作用し合いながら、体内の健康バランスを維持しています。
たとえば、カルシウムはビタミンDの補助により吸収が促進され、マグネシウムなど他のミネラルの補助によってスムーズに骨の中へ取り込まれます。
カルシウムといえば「頑丈な骨を作るミネラル」というイメージですが、実際にはカルシウムの吸収を助けるビタミンや他のミネラルがあってこそなのです。
このように、すべてのビタミンとミネラルは相互に関わり合いながら、それぞれの役割を果たしています。
ですから、どれか一つのビタミンやミネラルを集中的に摂るのではなく、各種栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
ビタミンDとマグネシウムの関係
ビタミンDはカルシウムの吸収を促進する働きを持っていますが、ビタミンD自体を活性化させるにはマグネシウムの力が必要です。
さらに、ビタミンK2にはカルシウムを骨のマトリックスへと適切に運ぶ役割があり、カルシウムが血管などに沈着するのを防ぐためにも重要な栄養素です。
つまり、マグネシウムが不足していると、いくらビタミンDを摂っても摂取量に見合った健康効果には期待できませんし、いくらカルシウムを摂取しても、マグネシウムが不足しているとやはり十分な成果には期待できません。
まるで緻密なダイヤで運行されている鉄道のように、各種栄養素がバランスを欠くとさまざまなところに弊害が生じるのです。
栄養素の偏った摂取のリスク
特定のサプリメントを摂りすぎると、栄養素が偏ってしまいかえって逆効果になってしまう可能性があります。
たとえば、亜鉛を過剰に摂取すると銅の吸収が妨げられますし、カルシウムを摂り過ぎるとマグネシウムや鉄の吸収率が低下したりする可能性があります。
サプリメントはあくまで補助的なアイテムとして活用し、基本的には食事でしっかりとバランスの取れた栄養を摂取するのが理想的です。
とはいえ、多忙な現代人にとって、毎食の献立を考えて自炊するのもあまり現実的ではないかもしれません。食事で十分な栄養を摂取するのが難しい場合は、不足しがちな栄養素をサプリメントで補うと良いでしょう。

まとめ|ビタミンとミネラルを上手に活用しよう!

ビタミンとミネラルは、それぞれ異なる性質と働きを持ちつつ、相互に支え合いながら健康を支えています。
しかし、現代人のライフスタイルでは、これらの栄養素が不足しがちです。
まずは食生活を見直し、できるだけ栄養バランスの良い食事を心掛けましょう。
それでも不足しがちな栄養素は、サプリメントで補ったり、マグネシウム風呂などの経皮吸収で補ったりするのがおすすめです。
大切なのは、どれか一つに偏るのではなく、バランス良く栄養を摂取すること。
体の声に耳を傾けながら、自分に合った方法で、ビタミンとミネラルを取り入れていきましょう。