体のしびれの原因には、一時的な圧迫や何らかの神経障害によるもの、ストレスや病気などさまざまな理由が考えられます。
その中には、マグネシウム不足が原因でしびれが起きている可能性もあります。
マグネシウムは神経の信号伝達や筋肉の弛緩に欠かせないミネラルです。
不足すると、神経が正常に働かなくなり、手足のしびれやピリピリ感といった症状が現れることがあります。
今回はマグネシウム不足によってしびれが生じる理由や引き起こされる症状、具体的な対策方法まで、科学的根拠に基づいて解説します。
マグネシウム不足によるしびれと症状

マグネシウム不足がしびれを引き起こすメカニズムを理解する前に、まずマグネシウムが体内でどのような役割を果たしているのか、そしてどのような症状が現れるのかを見ていきましょう。
マグネシウムの働き
マグネシウムは私たちが生きていく上で必要不可欠なミネラルです。
体内では主に以下の2つの働きをしています。
- 生命活動に必要なエネルギー(ATP)の生成
- 筋肉の弛緩により、私たちの体を動かすこと
さらに、マグネシウムは体内で800種類以上の酵素反応に関与しており、骨の健康維持や血圧の調整、ストレス緩和と精神の安定などさまざまな働きをしていることが研究で明らかになっています。
このように、マグネシウムは私たちの生命維持や健康に重要な役割を果たしているのです。
マグネシウム不足で発生するしびれとその他の症状
私たちの体と心に密接なつながりがあるマグネシウム。
マグネシウムが不足すると、体にさまざまな症状が現れる可能性があります。
代表的な症状は、以下です。
- 筋肉の痙攣(けいれん)やこむら返り
- 疲労感や慢性的な倦怠感
- 偏頭痛
- 便秘
- 肌荒れや乾燥などの皮膚トラブル
- イライラや不安感
- うつ症状
そして、マグネシウムが不足することにより、手足や体の各部位にしびれが発生する場合もあります。
マグネシウム不足の症状についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
しびれが起きやすい部位と特徴
マグネシウム不足によるしびれは、特に以下の部位に現れやすい傾向があります。
| しびれが起きやすい部位 | マグネシウム不足によるしびれの特徴 |
|---|---|
| 手足の指先 | ピリピリとした感覚・じんわりとしたしびれ感・筋肉のこわばりを伴うことが多い・夜間や安静時に悪化しやすい・左右対称に現れることが多い。 |
| 手のひら・足の裏 | |
| ふくらはぎ | |
| 唇や口の周り(重度の場合) |
ただし、しびれには多種多様な原因があるため、長期間続く場合や、片側だけに強く現れる場合、急激に悪化する場合は、脳梗塞や椎間板ヘルニアなど別の病気の可能性もあります。
心配な症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診することをおすすめします。
参考:脳卒中の症状|公益社団法人日本脳卒中協会
マグネシウム不足がしびれを引き起こすメカニズム

なぜマグネシウム不足でしびれが生じるのか?
次の2つの項目でその疑問を解明していきましょう。
- しびれの種類
- マグネシウム不足でしびれが起きる仕組み
順を追って説明していきます。
しびれの種類
ひとえにしびれといっても、その種類はさまざまです。
以下の一覧でしびれの種類を確認しておきましょう。
| しびれの種類 | 概要 |
|---|---|
| 末梢神経性のしびれ | 末梢神経は、体の各部位と脳をつなぐ神経です。 これが障害を受けると、手足などにしびれが現れます。 |
| 循環不良によるしびれ | 動脈硬化や血栓、低血圧などの血流不足により、手足のしびれを感じることがあります。 |
| 圧迫性のしびれ | 長時間同じ姿勢を続けたり、身体の一部が圧迫されると、神経に負担がかかり、しびれが生じることがあります。 |
| 神経障害によるしびれ | 神経自体が損傷を受けると、しびれが生じる場合も。 多発性硬化症やギラン・バレー症候群などが該当します。 |
| 心理的要因によるしびれ | ストレスや不安が原因で、身体にしびれを感じることもあります。 過換気症候群などで見られる症状です。 |
| マグネシウム不足によるしびれ | マグネシウムが不足すると神経の伝達が正常に行われず、しびれが生じることがあります。 特に手足にしびれが現れることが多いです。 |
最後のマグネシウム不足によるしびれについて、さらに詳しく解説していきます。
マグネシウム不足でしびれが起きる3つの仕組み
マグネシウム不足がしびれを引き起こす仕組みについては、主に3つの理由が考えられます。
1. 神経伝達の異常|マグネシウム不足で神経の働きがうまくいかなくなる
マグネシウムが不足すると、神経の働きが鈍くなり、信号がうまく伝わらなくなります。
これが原因で、手や足に「しびれ」を感じることがあります。
2. 筋肉の収縮・弛緩の乱れ|マグネシウム不足で筋肉がうまく動かなくなる
マグネシウムは、筋肉をリラックスさせる働きも持っています。
マグネシウムが足りないと、筋肉がうまくリラックスできなくなり、硬くなったり、緊張したりしてしまうことも。
これが、しびれや痛みを引き起こす原因になることがあるのです。
3. 血流の低下|マグネシウム不足で血液の流れが悪くなる
マグネシウムは、血管をリラックスさせて、血液がスムーズに流れるようにする働きもあります。
マグネシウム不足により、体の一部に血液が届きにくくなり、手や足にしびれを感じることも。
海外の医学論文でも、マグネシウム不足によるしびれの発生について以下の報告がされています。
“Extreme magnesium deficiency can cause numbness, tingling, muscle cramps, seizures, personality changes, and an abnormal heart rhythm.”
「マグネシウムが極端に不足すると、しびれ、ピリピリ感、筋肉のけいれん、発作、性格の変化、心臓のリズム異常などを引き起こすことがある」
引用:Magnesium Fact Sheet for Consumers|PubMed
注意が必要なのは、しびれの症状が長期間続く場合や、突然強い痛みを伴う場合です。
神経や血流に関する重大な問題があるかもしれないので、自己判断せずに早めに専門の医師に相談するのが良いでしょう。
マグネシウム不足を引き起こす5つの原因

現代人はマグネシウム不足の傾向にあると言われています。
その原因は主に、以下の5つが考えられます。
- 偏った食生活
- 慢性的なストレス
- アルコールの過剰摂取
- 薬剤の影響
- 加齢による吸収率の低下
順番に見ていきましょう。
偏った食生活
現代の食生活は、マグネシウムが不足しやすい環境になっています。
- 加工食品やインスタント食品が中心になっている
- 精製された白米やパンを主食としている
- 野菜や海藻類をあまり食べていない
- ファストフードを頻繁に利用している
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日あたりのマグネシウム推奨量は、成人男性で340〜370mg、成人女性で280〜290mgとされています。
しかし、令和5年の国民健康・栄養調査によると、実際の平均摂取量は男性で約240mg、女性で約200mgと、推奨量を大きく下回っています。
慢性的なストレス
ストレスを受けると、体内ではストレスホルモン(コルチゾール)が分泌されます。
このストレスホルモンには、マグネシウムの排泄を促進する作用があります。
そのため、慢性的なストレス状態が続くと、尿中に排出されるマグネシウムの量が増え、体内のマグネシウムが不足しやすくなるのです。
アルコールの過剰摂取
アルコールを大量に飲むと、マグネシウムの吸収が妨げられ、排泄量が増加します。
アルコールには利尿作用があるため、尿と一緒にマグネシウムが体外に排出されやすくなるのです。
さらに、アルコール依存症の方は食事の量自体が減少する傾向があり、マグネシウムの摂取量も不足してしまうと考えられます。
薬剤の影響
特定の薬剤を長期間使用すると、マグネシウムの吸収や排泄に影響を与えることがあります。
<マグネシウム不足を引き起こす可能性のある薬剤>
| 薬剤 | 考えられる影響 |
|---|---|
| 利尿薬 | 尿量を増やすため、マグネシウムも一緒に排出される |
| プロトンポンプ阻害薬 | 胃酸を抑える薬で、長期使用でマグネシウム吸収が低下する |
| 一部の抗生物質 | 腸内環境に影響し、マグネシウム吸収を妨げる |
| 抗がん剤 | シスプラチンなど一部の抗がん剤はマグネシウム排泄を増加させる |
これらの薬剤を使用している場合は、定期的に血液検査でマグネシウム値をチェックすることが推奨されます。
参考:低マグネシウム血症|MSDマニュアル
加齢による吸収率の低下
年齢を重ねるとともに、マグネシウムの吸収率が低下し、排泄量が増加する傾向があります。
加齢に伴う消化機能の低下により、腸からのマグネシウム吸収が悪くなるだけでなく、腎臓の機能も低下するため、マグネシウムの再吸収がうまく行われず、尿中に排出される量が増加。
そのため、高齢者は若年者よりもマグネシウム不足になりやすく、意識的にマグネシウムを摂取することが求められます。

【科学的根拠】マグネシウムとしびれの関係を示す研究

マグネシウム不足としびれの関係は、科学的にも裏付けられています。
ここでは、信頼できる研究機関や医学論文によるエビデンスをご紹介します。
研究1:マグネシウム欠乏と神経症状
米国国立衛生研究所(NIH)が発表した研究では、マグネシウム欠乏による神経症状についての報告があります。
この研究によると、極度のマグネシウム欠乏は、しびれ、ピリピリ感、筋肉のけいれん、発作、性格の変化、心臓のリズム異常などを引き起こす可能性があるとのことです。
マグネシウムは神経の正常な機能に不可欠であり、不足すると神経伝達に異常をきたし、手足のしびれとして症状が現れることが科学的に確認されています。
参考:Magnesium Fact Sheet for Consumers|NIH
研究2:低マグネシウム血症の症状
医学情報源であるMSDマニュアルでは、低マグネシウム血症の症状について詳しく解説しています。
低マグネシウム血症の症状には、筋肉のけいれん、振戦(ふるえ)、脱力、人格の変化などがあり、神経や筋肉の正常な機能にマグネシウムが欠かせないとの報告です。
血液中のマグネシウム濃度が低下すると、神経細胞の興奮性が高まり、異常な感覚(しびれ)が生じやすくなることが医学的に認められています。
参考:低マグネシウム血症|MSDマニュアル
これらの科学的根拠から、マグネシウム不足がしびれを引き起こすメカニズムは医学的にも認められており、十分な摂取が必要だということが言えるでしょう。
マグネシウム不足によるしびれを改善する3つの方法

体内に必要十分な量のマグネシウムを摂取することで、マグネシウム不足によるしびれを改善・予防できる場合があります。
おすすめは、マグネシウムを豊富に含む食品(ナッツ類、緑色の葉野菜、全粒穀物、魚など)からの摂取です。
加えて、マグネシウムを含有したサプリメント(サプリ)、マグネシウムバームやクリームなどで補う方法もあります。
もっと詳しくマグネシウムの摂取方法について理解を深めたい方は、以下の記事もご参考にしてください。

カナダで私が臨床医として勤務していたとき、患者さんがクリニックを訪れる最も一般的な理由の1つは痛みでした。
痛みには多くの種類があり (しびれもその1つです)、自然な方法で治療する方法もいくつかあります。
しかし、鍼治療やマッサージ、カッピング(※)、追加の栄養素を使用するかどうかに関わらず、マグネシウムを使った治療は、常にどの痛みに対しても応用が効くものでした。
(※)カッピングは皮膚にぴったり密着させたガラス玉の引く力を利用して、筋肉をほぐす療法です。
マグネシウム不足としびれに関するよくある質問

マグネシウム不足としびれの関係について、よくある質問に回答していきます。
Q1:しびれが続く場合、病院に行くべきですか?
以下のような症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
突然片側だけに強くしびれが現れる、長期間続いている、徐々に悪化している、筋力低下や運動障害を伴う、排尿・排便障害があるといった症状は、脳梗塞や椎間板ヘルニアなど重大な病気の可能性があります。
マグネシウムの摂取で改善しない場合や、日常生活に支障が出ている場合も、自己判断せず専門医に相談することが大切です。
Q2:こむら返りとしびれの違いは何ですか?
こむら返りは筋肉が突然強く収縮して痛みを伴う症状で、主に「ふくらはぎ」に起こることが多いです。
一方、しびれは神経の異常による感覚障害で、ピリピリ、ジンジンといった異常な感覚が持続します。
どちらもマグネシウム不足が原因となることがありますが、発生メカニズムは異なります。
こむら返りは筋肉の収縮・弛緩のバランスが崩れることで起こり、しびれは神経伝達の異常や血流不足で生じやすいと言えるでしょう。
Q3:サプリメントと食事、どちらが効果的ですか?
基本的には食事からの摂取が理想的です。
食品には、マグネシウムだけでなく他のビタミンやミネラルも含まれており、相互作用で吸収率が高まるためです。
ただし、慢性的に不足している場合や、食事だけでは推奨量に達しない場合は、サプリメントを併用すると良いでしょう。
まとめ|マグネシウムを摂取してしびれを改善・予防しよう!

マグネシウム不足は、神経伝達の異常、筋肉の緊張、血流の低下を引き起こし、手足のしびれの原因となる可能性があります。
改善には、海藻類、ナッツ類、豆類などマグネシウムを豊富に含む食品の摂取が基本です。
ただし、食事からの摂取が難しい場合は、サプリメントやエプソムソルト入浴、マグネシウムバーム・クリームの塗布も併せて行うと効果的だと言えるでしょう。
しびれの症状や程度にもよりますが、マグネシウムを摂取することで、これまで感じていたしびれが改善されることもあるでしょう。
ぜひ、毎日の生活にマグネシウムを取り入れて、ご自身の健康管理にお役立てください。

