デスクワークによる肩こりや腰痛、ベッドに入ってもなかなか眠れない夜、頭から離れない不安。
そんな現代人が抱えやすい悩みやストレスにおすすめなのが、手軽にできる「ストレッチ」です。
ストレッチをすることで筋肉がほぐれるだけでなく、気分が落ち着くと感じる人もいます。
この記事では、ストレッチがリラックスに効果的な理由や自宅で簡単にできる具体的なリラックス法、さらに、ストレッチ以外のリラックス習慣や意外と知られていないマグネシウムとリラックスの関係について解説します。
忙しい毎日でも実践できる方法ですので、今日からあなたの生活に取り入れてみてください。
ストレッチでリラックスできる3つの理由

ストレッチがリラックスに効果的な理由は大きく3つあります。
- 筋肉をほぐして血流を改善する
- 副交感神経が優位になる
- 睡眠の質向上につながる
それぞれの理由を海外の論文を元にして、科学的な根拠を交えて解説していきます。
筋肉をほぐして血流を改善する
ストレッチの最も基本的な効果は、筋肉をほぐすことです。
日常生活で固まった筋肉をストレッチで伸ばすことにより、筋肉の緊張がゆるみます。
特にデスクワークが多い方は、肩や首、腰の筋肉が常に緊張状態にあるため、ストレッチによる筋肉の弛緩が重要です。
筋肉がほぐれると血管の圧迫が解消され、血流が改善されます。
このことは、2022年に行われた研究でも実証されています。
14人の健康な中高年女性を「ストレッチをするグループ」と「座って過ごすグループ」に分け、4週間にわたり下肢(股関節・膝・足首まわり)の静的ストレッチを実施したところ、ストレッチをするグループでは動脈硬度などの血管指標の改善が見られたのです。
つまり、動脈の硬さが減ることで血流がスムーズになり、こりや疲労軽減に結びつきやすくなると考えられます。
副交感神経が優位になる可能性がある
ストレッチのようなゆっくりとした動作は、副交感神経(回復を促す自律神経の1つ)が優位になる可能性があります。
21人の健康な参加者を対象に、7分間の短時間のストレッチ体操が、自律神経活動や認知機能にどのような影響を与えるのかを調べた研究では、ストレッチが副交感神経を優位にし、自律神経を整え、認知機能を高める可能性があることが示されました。
参考:The Effect of Brief, Low-Intensity Stretching Gymnastics on Autonomic Nervous System Activity and Cognitive Function|Scientific Research
副交感神経が優位になると、心拍数が安定し、呼吸も深くゆったりとするだけでなく、消化器官の働きが活発になり、体の修復機能も高まります。
そして、この状態が続くことで、心身ともに深いリラックス状態を感じることができるのです。
睡眠の質の向上につながる
ストレッチは睡眠の質を高めることが期待できます。
就寝前にストレッチを行うことで、体温がわずかに上昇し、その後の体温低下とともに自然な眠気が訪れるからです。
また、ストレッチによる筋肉の緊張緩和は、寝つきを良くするだけでなく、夜中の目覚めを減らす効果もあることが研究で示されています。
この研究は、睡眠障害を抱える人がストレッチをすることで「睡眠の質が改善するかどうか」を調べたものです。
結果は、全体的に睡眠の質が良くなる傾向が見られました(有意な改善を示したのは16件中5件)。
具体的な報告は以下の通りです。
不眠症の重症度の低下 | 約6.5% |
睡眠効率の上昇 | 約8.9% |
入眠までの時間短縮 | 約4.4% |
中途覚醒の減少 | 約8.3% |
総睡眠時間の増加 | 約14.7% |
参考:A scoping review of the effect of chronic stretch training on sleep quality in people with sleep disorders|Springer Nature Link
改善の度合いはさまざまですが、ストレッチが睡眠の質の向上につながっていると言えるでしょう。
【部位別】リラックスに効果的なストレッチ法

ここからはリラックスにつながる部位別のストレッチの具体的な方法をお伝えします。
首・肩のストレッチ
長時間のデスクワークで凝り固まりやすい首や肩は、血流が滞って疲労感や頭痛の原因になります。
椅子に座ったままでもできる簡単なストレッチがおすすめです。
- 椅子に座り、背筋をまっすぐ伸ばす。
- ゆっくり首を右に倒す。
- 左手で頭を軽く押さえ、首すじ〜肩が心地よく伸びる位置で20秒キープ。
- 反対側も同様に行う。
強く引っ張らず、心地よく伸びる感覚で止めるのがポイントです。
肩回しを組み合わせるとさらに血流改善に効果的です。
背中・腰のストレッチ
背中や腰の緊張は呼吸を浅くし、自律神経のバランスを乱す原因になります。
深い呼吸と組み合わせて行うストレッチで、副交感神経を優位にしましょう。
- 床に四つん這いの姿勢になる。
- 息を吐きながら背中を丸め、猫のポーズを作る。
- 息を吸いながら背中を反らし、胸を開く。
- この動きをゆっくり5回繰り返す。
背中〜腰の筋肉をほぐしながら心身をリラックスへ導くのに有効です。
脚・股関節のストレッチ
立ちっぱなしや座りっぱなしで脚が重く感じるときは、股関節まわりをほぐすと下半身の血流が一気に改善します。
- 床に座り、両足の裏を合わせる。
- かかとを体に引き寄せ、両手で足先を持つ。
- 背筋を伸ばしたまま、上体を少し前に倒す。
- 股関節が伸びているのを感じながら20〜30秒キープ。
このストレッチは下半身の巡りを良くし、むくみや冷えの緩和にも役立ちます。
入浴後に行うと効果がさらにアップしますよ。
寝る前におすすめの全身ストレッチ
就寝前は副交感神経を優位にすることが快眠のポイントです。
全身をゆったり伸ばすことで心地よい眠りに入りやすくなります。
- 仰向けに寝転び、両手両足を天井に伸ばす。
- そのまま手足を1分ほどブラブラ揺らす。
- 両手を頭上に伸ばし、全身を思い切り伸ばして5秒キープ。
- 力を抜き、深呼吸しながら3回繰り返す。
寝る直前に行うと筋肉の緊張がほどけ、体温がゆるやかに下がり、自然な眠気を促します。
オーガニックサイエンスとNADクリニックのチーフサイエンスオフィサーであり、ヨガ愛好家でもあるAlexander Audette(Alex先生)からは、以下の副交感神経の活動を高めるヨガストレッチを紹介していただきました。
すぐにできる簡単なストレッチですので、ぜひお試しください。

①あぐら+足の裏を合わせて座る
- 床に座り、両足の裏を合わせる。
- かかとを体に軽く引き寄せ、背筋をまっすぐ伸ばす。
- 肩の力を抜いて、自然な呼吸を続ける。


②前屈する姿勢をとる
- 足の裏を合わせたまま、股関節から前に体を倒す。
- 背中を丸めすぎず、深い呼吸で20〜30秒キープする。


③両腕を上に伸ばす
- 息を吸いながら両腕を頭上に伸ばし、手のひらを組む。
- 背骨を縦に引き上げるように意識し、10〜15秒キープする。


④チャイルドポーズをとる
- 正座から息を吐きながら上体を前に倒す。
- 両腕を前方に伸ばし、額を床につける。
- 腰や背中の力を抜いて、30秒〜1分キープする


ストレッチだけじゃない!リラックスできる習慣5選

ストレッチ以外にもリラックス効果の高い習慣を5つご紹介します。
- 運動
- 呼吸法
- 環境づくり
- 入浴
- マグネシウムの摂取
これらを組み合わせることで、より効果的にストレス解消と心身の回復を図ることができます。
日常生活に取り入れやすいものから試してみるとよいでしょう。
運動
適度な運動は心身のリラックスに欠かせません。
有酸素運動は特に効果的で、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどがおすすめです。
運動により体内でエンドルフィンという「幸せホルモン」が分泌され、気分が向上するだけでなく、質のよい睡眠を促進し、ストレス耐性も高めてくれます。
激しい運動である必要はなく、1日20~30分程度の軽い運動でも十分効果があります。
また、室内でできるヨガや太極拳なども、ゆったりとした動きでリラックス効果が高い運動です。
運動後の心地よい疲労感は、自然なリラックス状態を作り出し、夜の睡眠の質向上にもつながります。
呼吸法
深呼吸は最も簡単で効果的なリラックスできる呼吸法です。
鼻から4秒かけてゆっくりと息を吸い、4秒間息を止め、口から8秒かけてゆっくりと吐き出します。
この「4-4-8呼吸法」を5~10回繰り返すだけで、副交感神経が優位になり、リラックスした状態に。
腹式呼吸も効果的です。
実際にお腹に手を当てて膨らませるように意識して呼吸してみてください。
呼吸に集中することで心が落ち着き、雑念も払われることが体感できるはずです。
通勤中や仕事の合間など、いつでもどこでも実践できるため、ストレスを感じた時の応急処置としても活用できます。
環境づくり
リラックスできる環境を整えることも重要です。
照明は温かみのある間接照明を使用し、強すぎる光は避けましょう。
また、アロマオイルやお香を焚いて好きな香りを楽しむことで、嗅覚を通じてリラックス効果を得られます。
ラベンダーやカモミールなどは特にリラックス効果が高いとされています。
音楽も効果的で、クラシック音楽や自然音、瞑想音楽などもおすすめです。
室温は20~22度程度に保ち、湿度も50~60%に調整すると快適に感じられるでしょう。
部屋を整理整頓することもリラックスすることにつながります。
物があふれてごちゃごちゃした部屋よりも、きれいに片付いた清潔な空間のほうが居心地良く、リラックスできるのは明らかです。
こうした環境の要素を組み合わせることで、日常空間をリラックスできるスペースへ変えていきましょう。
入浴
入浴は私たち日本人にとって身近なリラックス方法です。
38~40度のぬるめのお湯に15~20分程度ゆっくりと浸かることで、体の芯から温まり血流が改善されます。
そのうえ、温熱効果により筋肉の緊張がほぐれ、副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなるでしょう。
入浴剤を使用すれば、香りやミネラル成分による追加のリラックス効果も期待できます。
エプソムソルト(硫酸マグネシウム)やバスソルトは、ミネラル補給と共にデトックス効果もあります。
以下の記事では、エプソムソルトなどを利用したマグネシウム風呂の効果について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

また、入浴後は体温が下がるタイミングで眠気が訪れるため、就寝の1~2時間前に入浴するのが理想的です。
マグネシウムの摂取
マグネシウムは筋肉の収縮と弛緩、神経伝達に重要な役割を果たしており、不足すると筋肉の緊張が取れにくくなり、イライラや不眠の原因となることがあります。
摂取方法は大きく分けて3つあります。
食品、サプリメント、経皮吸収です。
食品からの摂取では、ナッツ類、海藻類、大豆製品、緑黄色野菜などに多く含まれています。
しかし、現代の食生活では十分な量を摂取するのが難しいため、サプリメントの活用も一つの方法です。
また、先ほど紹介したエプソムソルト(硫酸マグネシウム)を使った入浴は、皮膚からのマグネシウム吸収も期待できます。
適切なマグネシウム摂取により、筋肉の緊張緩和と神経の安定化が図れ、より深いリラックス状態を得られるでしょう。




マグネシウムとリラックスの意外な関係

ここからは、マグネシウムとリラックスの関係について詳しく見ていきます。
マグネシウムは筋肉と神経の働きをサポートする
マグネシウムは体内で約800以上の酵素反応に関与する重要なミネラルです。
特に筋肉の収縮と弛緩においてマグネシウムは欠かせません。
筋肉が収縮する時にはカルシウムが働き、リラックスする時にはマグネシウムが作用します。

つまり、マグネシウムが不足すると筋肉の緊張が続きやすくなり、肩こりや腰痛の原因になってしまうのです。
また、神経伝達においてもマグネシウムは重要で、神経の興奮を抑制し、心を落ち着かせる働きがあります。
さらに、マグネシウムはセロトニンという「幸せホルモン」の合成にも関わっているため、気分の安定にも役立っています。
このように、マグネシウムは体と心の両面からリラックス状態をサポートする重要なミネラルだということがわかるでしょう。
マグネシウム不足で心身の不調を感じやすくなる
マグネシウムが不足すると、体にさまざまな不調が現れる可能性があります。
その一つは睡眠の質の低下です。
マグネシウム不足により筋肉の緊張が取れにくくなり、なかなか眠りにつけなくなってしまいます。
また、神経の興奮が抑えられないため、些細なことでイライラしやすくなったり、疲労感が増すことで、朝起きても疲れが取れない状態が続くことがあります。
そのほか頭痛、めまい、動悸などの症状もマグネシウム不足の症状によく見られることです。
現代人の多くは慢性的なマグネシウム不足の傾向にあるため、ストレス社会で生活する私たちにとって、マグネシウムの適切な補給は心身の健康維持に欠かせません。
そのため、食事、サプリメント、経皮吸収などを活用しながら、積極的に摂取することが求められています。

あなたは足りてる?「マグネシウム不足セルフチェック」
以下の「マグネシウム不足セルフチェック」では、医師監修の元に作成された14問の質問に答えていくだけでマグネシウム不足かどうか、一つの目安をつけられます。
たった1分ですぐに診断できますので、「マグネシウム不足かも?」と気になる方はぜひご活用ください。

ストレッチでリラックスする方法に関するよくある質問

ここでは、ストレッチでリラックスする方法に関してよくある質問をまとめました。
Q1:ストレッチは1日にどのくらいやればリラックス効果がありますか?
目安は1回5〜10分程度で十分な効果が期待できます。
研究でも、わずか7分のストレッチで自律神経が整い、リラックス効果が確認されています。
長時間やる必要はなく、朝起きたときや寝る前など、生活の隙間時間に取り入れるのがおすすめです。
Q2:強いストレッチをした方がリラックス効果は高まりますか?
いいえ。
痛みを感じるほど強いストレッチは逆に体を緊張させてしまうことがあります
研究でも「低強度のストレッチ」の方が副交感神経を優位にし、リラックス効果が出やすいとされています。
無理せず「心地よい」と感じる程度が最も効果的です。
Q3:ストレッチをしてもなかなかリラックスできないのはなぜですか?
理由はいくつかありますが、そのひとつにマグネシウム不足が関係している可能性も指摘されています。
マグネシウムは筋肉や神経の働きをサポートする重要なミネラルで、不足すると「緊張が取れにくい」「眠りが浅い」などの症状につながることがあります。
気になる方は「マグネシウム診断」でご自身の状態をチェックしてみてください。
まとめ|ストレッチや運動、マグネシウムの摂取でリラックス効果を高めよう

ストレッチは筋肉をほぐすだけでなく、副交感神経を優位にし、睡眠の質を向上させることで心身のリラックスに大きな効果をもたらします。
また、適度な運動、正しい呼吸法、環境づくり、入浴、そしてマグネシウムの摂取といった習慣を組み合わせることで、より深いリラックス状態を得られるでしょう。
特にマグネシウムは現代人に不足しがちなミネラルでありながら、筋肉と神経の働きをサポートする重要なミネラルです。
不足すると不眠やイライラ、疲労感の原因となるため、食事やサプリメント、経皮吸収を通じて適切に補給することが大切です。
これらの方法は特別な道具や場所を必要とせず、自宅で手軽に実践できるものばかりです。
毎日の生活にストレッチでリラックスする習慣を取り入れ、心と体を健やかに保ちましょう。