指の曲げ伸ばしや、痛みの症状が発生する「ばね指」に悩んでいる方は多いようです。
主に、指の使い過ぎや、糖尿病、リウマチなどが関係していると言われています。
ですが、ばね指の原因の1つとして「栄養不足」が関係している可能性があります。
医療機関でも見落とされがちですが、「栄養不足が腱の炎症を悪化させ、治りを遅くしている場合もある」ということです。
特に手指を酷使するピアノ伴奏者や料理人、美容師といった職業の方や更年期の女性や妊娠出産期の女性に見られる傾向があります。
今回は、ばね指と栄養不足の関係を科学的根拠とともに解説し、改善に必要な5つの栄養素と今日からできる3つの対処法を紹介します。
また、ばね指のケア方法を短期、長期と分けて解説しているので、あなたにあった方法を取り入れる際の参考にしてください。
栄養不足とばね指の関係とは?

ばね指は「指の使いすぎで起こる症状」と思われがちですが、体内の栄養状態が大きく影響しています。
ここでは、栄養不足によってばね指が引き起こされる3つの理由と、どのようにばね指が引き起こされるのか、そのメカニズムを見ていきましょう。
栄養不足でばね指になる3つの理由
栄養不足がばね指を引き起こす理由は、大きく分けて以下の3つです。
①コラーゲン生成の低下
腱の主成分はコラーゲンというタンパク質です。
このコラーゲンを体の中で作るには、タンパク質だけでなくビタミンCや鉄分、亜鉛といった栄養素も一緒に必要になります。
これらが足りないと、腱の修復が遅くなり、小さな傷が積み重なっていきます。
その結果、腱鞘(けんしょう)との摩擦が増えて、炎症が起きやすくなるのです。
②炎症の慢性化
体の中で炎症が起きたとき、それを抑えるにはオメガ3脂肪酸やビタミンD、ビタミンB群といった栄養素が必要です。
これらが不足すると、本来なら数日で治まるはずの炎症が長引いてしまうことになります。
炎症が続くと腱鞘が厚く硬くなり、指の曲げ伸ばしがもっと辛くなるという悪循環に陥ってしまうのです。
③血流・代謝の低下
腱はもともと血管が少なく、栄養が届きにくい場所です。
そこに鉄分不足や血管が縮みやすい状態(マグネシウム不足)が加わると、さらに栄養や酸素が届かなくなります。
血の巡りが悪いと、疲労物質もたまりやすく、腱の回復力がガクッと落ちてしまうのです。
そのため、冷え性の方にばね指が多いのは、この血流の悪さも関係していると考えられています。
そもそもばね指とは?
ばね指とは、指の曲げ伸ばしの際に「カクン」と引っかかったり、指が伸びなくなったりする症状のことで、腱鞘炎の一種です。
正式には「弾発指(だんぱつし)」と呼ばれ、主に親指、中指、薬指に起こりやすいです。
指を曲げる腱は、腱鞘というトンネルのような組織の中を滑るように動いています。
この腱や腱鞘に炎症が起きて腫れると、トンネルが狭くなり、腱が引っかかるような状態になります。
これがばね指を引き起こすメカニズムです。
ばね指をそのまま放置すると症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともあるため、早めのケアを行いましょう。
栄養不足がばね指を招く科学的根拠

一部の研究では、特定の栄養素不足がばね指を招くことを示唆しています。
ここでは2つの科学的なエビデンスをもとに解説します。
ビタミンDが不足すると腱の炎症・治癒が遅延する
ビタミンDは骨の健康だけでなく、腱の炎症を抑え、修復を助ける働きも持っています。
2024年の医学論文によれば、ビタミンDは腱の中にある「ビタミンD受容体」と結びつくことで、コラーゲンの合成、炎症の調整、腱の石灰化を防ぐ役割を果たしています。
ビタミンDが不足すると、これらのプロセスがうまく働かず、腱の強度が低下し、炎症が長引きやすくなるのです。
(※すべての人に当てはまるわけではありません)
引用:Exploring the impact of vitamin D on tendon health: a comprehensive review|Journal of Basic and Clinical Physiology and Pharmacology
コラーゲンが不足すると、腱や筋膜などの結合組織の再生が遅れる
腱の約70〜80%は「コラーゲン」というタンパク質でできており、体の構造(皮膚・骨・軟骨・血管)を作る働きをしています。
そのため、コラーゲンが不足すると腱そのものの強度が低下し、損傷からの回復が遅れることにつながりかねません。
以下の2022年の論文によると、コラーゲン由来のタンパク質にはグリシンとプロリンが豊富に含まれており、腱の修復を効果的にサポートする可能性があると指摘されています。
(ただし、確証を得るにはさらなる研究が必要とも述べています)
引用:The impact of collagen protein ingestion on musculoskeletal connective tissue remodeling: a narrative review|Nutrition Reviews

栄養不足以外のばね指の5つの要因

もちろん、ばね指は栄養不足だけで起こるわけではありません。
日常生活の中に潜む、さまざまな要因が重なり合って発症します。
ここでは、栄養不足以外でばね指を引き起こす主な5つの要因を確認していきましょう。
① スマホやPCの使いすぎによる腱の酷使
現代人の多くが抱える問題が、スマホやパソコンの長時間使用です。
特にスマホを片手で操作する際、親指だけで画面をスワイプしたり、タップを繰り返したりすると、親指の腱に大きな負担がかかります。
デスクワークが中心の方や、1日に何時間もスマホを触っている方は特に注意が必要です。
② 更年期やホルモンバランスの変化
女性ホルモン(エストロゲン)には、腱や関節の柔軟性を保つ働きがあります。
しかし、更年期に入るとエストロゲンが急激に減少するため、腱鞘が硬くなり、炎症が起きやすくなるのです。
日本整形外科学会によれば、ばね指は更年期の女性に多く、妊娠出産期の女性にも多く発生するとされています。
参考:「ばね指(弾発指)」|日本整形外科学会
③ 糖尿病・甲状腺などの内分泌異常
糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患は、ばね指のリスクを高めることが知られています。
糖尿病では高血糖が続くことで腱の糖化が進み、腱が硬くもろくなります。
また、甲状腺機能低下症では代謝が落ち、むくみや組織の肥厚が起こりやすくなるため、腱鞘も厚くなり、ばね指を発症しやすくなると考えられているのです。
④ 手指の冷えや血流不良
手足が冷えて血流が悪くなると、腱に必要な酸素や栄養が届きにくくなるだけでなく、老廃物も溜まりやすくなり、ばね指の原因の1つになります。
特に冬場やエアコンの効いた室内で長時間過ごす方や冷え性の方は、指先の血流が慢性的に悪化している可能性があります。
⑤ ストレスや睡眠不足による回復力の低下
ストレスや睡眠不足もばね指と関係があります。
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、組織の修復に欠かせないものです。
したがって、睡眠が不足すると、腱の小さな損傷が修復されず、炎症が蓄積していきます。
また、慢性的なストレスは体内の炎症反応を高め、腱の炎症を悪化させる可能性があります。
それゆえ、質の良い睡眠とストレスケアを心がけることが、ばね指予防の土台となるでしょう。
ばね指の改善に欠かせない5つの栄養素とは?

ばね指の予防や改善には、腱の修復をサポートする栄養素が欠かせません。
ここでは、特に重要な5つの栄養素を紹介します。
① タンパク質
タンパク質は、腱の主成分であるコラーゲンの材料となる最も基本的な栄養素です。
タンパク質が不足すると、腱の修復がうまくいかず、炎症が長引きやすくなります。
特に重要なのが、コラーゲンを構成する「グリシン」や「プロリン」といったアミノ酸です。
コラーゲンペプチドやゼラチン、鶏の手羽先や軟骨、魚の皮などにはこれらが豊富に含まれています。
そのため、肉・魚・卵・大豆製品をバランスよく摂り、腱の材料をしっかり補給すると良いでしょう。
② ビタミンC
ビタミンCは、コラーゲンを体内で合成する際に必須の栄養素です。
タンパク質をいくら摂っても、ビタミンCが不足していればコラーゲンは作られません。
特に喫煙者やストレスが多い方は、ビタミンCの消費量が増えるため不足しやすくなります。
柑橘類、キウイ、いちご、ブロッコリー、パプリカなど、色鮮やかな野菜や果物に多く含まれています。
ビタミンCは水溶性で過剰摂取の心配も少ないため、積極的に摂りたい栄養素です。
③ ビタミンB6・B12
ビタミンB群は、タンパク質の代謝を助け、神経機能を正常に保つ働きがあります。
特にビタミンB6はタンパク質からアミノ酸を作り出す過程で必須であり、B12は末梢神経の修復に関わります。
ビタミンB6は、鶏肉、マグロ、カツオ、バナナ、にんにくなどに多く含まれます。
ビタミンB12は、レバー、貝類、魚、卵など動物性食品に豊富です。
慢性的な炎症がある場合、ビタミンB群の消費が増えるため、意識的に摂取するようにしましょう。
④オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、強力な抗炎症作用を持つ栄養素です。
腱鞘炎のような慢性炎症を抑え、痛みを和らげるのに有用と考えられています。
青魚(サバ、イワシ、サンマ、サケなど)や、亜麻仁油やえごま油、くるみなどに豊富に含まれているので、意識的に摂取したいところです。
⑤マグネシウム
マグネシウムは、筋肉の収縮と弛緩、血管の健康維持に不可欠であり、体内で起こる800以上の酵素反応に関わる重要なミネラルです。
不足すると血管が収縮しやすくなり、腱への血流が悪化しやすくなるだけでなく、筋肉のこわばりやこむら返りも起きやすくなります。
マグネシウムは海藻類(わかめ、ひじき、のり)やナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、大豆製品、玄米、バナナなどに多く含まれていますが、現代人は加工食品や精製食品を口にする機会が増え、マグネシウムが不足しがちです。
以下の記事を参考に、マグネシウムを豊富に含む食品を確認してみてください。
NADクリニックのチーフサイエンスオフィサーを務め、オーガニックサイエンスの製品開発にも携わるAlexander Audette(Alex先生)からは、ばね指の2つの治療法について解説してもらいました。
ばね指に対して私が特に効果的だと感じている治療法が2つあります。
それが「鍼治療」と「DMSO(ジメチルスルホキシド):50〜70%溶液の外用」です。
ばね指の主な原因は、炎症によって腱鞘(けんしょう)が厚くなってしまうこと。
この点で、鍼治療は非常に有効です。
硬くなった瘢痕組織(はんこんそしき)を物理的にほぐして腱鞘を柔らかくし、さらに筋肉もリラックスさせてくれます。
一方、DMSOは組織への浸透性が極めて高く、以下のような効果があります。
- 抗炎症作用
- 瘢痕組織を柔らかくする作用
DMSOは過去にも多くの筋骨格系の損傷や炎症性疾患に使われてきた実績があります。
私がカナダでばね指を治療する際は、栄養素の補給に加えて、この鍼治療とDMSOの外用を必ず併用していました。
今すぐ家庭でできるばね指の5つの対処法(短期ケア)

ばね指の症状が出始めたら、まずは自宅でできる以下の5つの対処法を試してみてください。
症状が軽いうちに対処することで、慢性化を防げます。
①ストレッチで指の可動域を保つ
指のストレッチは、腱の柔軟性を保ち、血流を促進するのに役立つ可能性があります。
とくに手先がまだほぐれていない起床時や、長時間作業した後に行うことを推奨します。
ただし、無理に動かすと悪化してしまうため、「痛気持ちいい」程度の強さで行いましょう。
②テーピング・サポーターで負担を減らす
指を動かすと痛みを感じるときは、テーピングやサポーターで固定することで腱への負担を軽減できます。
特に仕事や家事で手を使わざるを得ない場合に役立つでしょう。
ただし、きつく巻きすぎると血流が悪くなるため注意が必要です。
夜間に装着して寝ることで、無意識に指を曲げてしまうのを防ぎ、朝の症状を軽減する効果も期待できます。
③揉みほぐして血流を促す
指の付け根を優しくマッサージすることで、血流が改善し、炎症物質の排出を促せます。
入浴後など体が温まっている時に行うとより効果を感じやすくなるでしょう。
ストレッチと同様に、いつでもどこでも気になった時に手軽にできるので、取り入れやすい方法です。
ただ、痛みが強い時や炎症がひどい時は、無理せず安静にしましょう。
④湿布で炎症を抑える
湿布やクリームを使うことで、炎症と痛みを抑えられます。
特に指の付け根が腫れて熱を持っている時に有効です。
冷感タイプと温感タイプがありますが、以下を目安に使い分けると良いでしょう。
- 急性期で熱感がある時は冷感タイプ
- 慢性的なこわばりがある時は温感タイプ
ただし、湿布はあくまで対症療法であり、根本的な治療にはなりません。
長期間使用しても改善しない場合は、医療機関を受診してくださいね。
⑤痛む時は冷やし、こわばる時は温める
ばね指の対処法として、症状に応じて「温めるか」「冷やすか」を使い分けることがポイントになります。
【冷やすべき時】
- 指の付け根が腫れて熱を持っている
- 動かすとズキズキと痛む
保冷剤をタオルで包んで10~15分冷やす
【温めるべき時】
- 朝起きた時に指がこわばる
- 慢性的な違和感や動かしにくさがある
温かいタオルや手浴で5~10分温める
自分の症状に応じて、適切な処置を選びましょう。
参考:ばね指とビタミン不足の関係とは?改善に役立つ栄養や食材を紹介!|再生医療・リペアセルクリニック
ばね指を改善する3つの方法(長期ケア)

短期的な対処法で症状を抑えつつ、根本的な改善を目指すには長期的なケアが必要です。
ここでは、ばね指を根本から改善し、再発を防ぐための3つの方法を解説します。
① バランスの取れた食事を摂る
ばね指の改善だけに限りませんが、栄養バランスの取れた食事は健康管理において最も重要だと言えます。
動物性タンパク質と植物性タンパク質、色鮮やかな野菜、青魚、海藻類をバランスよく組み合わせることで、腱の修復に必要な栄養素を摂取しましょう。
特に、コラーゲンペプチドを含む食品(手羽先、魚の煮こごり、ゼラチンなど)を意識的に取り入れると良いですね。
② サプリメントを上手に活用する
食事だけで必要な栄養素を全て摂るのが難しい人は、サプリメントを補助的に使うのも1つの手です。
ただし、サプリメントはあくまで「補助」と考えるようにしましょう。
基本は食事からの栄養摂取を心がけ、不足分を補う形で利用することをおすすめします。
また、持病がある方や薬を服用している方は、サプリメントの容量・用法を医師や薬剤師に相談してから使用してください。
③ 医療機関で治療を検討する
症状がなかなか改善しない場合や痛みが激しく日常生活に支障が出ている場合は、医療機関での治療を検討しましょう。
医療機関での主な治療法としては、大きく2つに分けられます。
- 保存療法(ステロイド注射、超音波治療、電気刺激療法、装具療法)
- 手術療法(腱鞘切開術など)
症状が悪化してから受診するよりも、早めに専門医(整形外科)を受診することで、より軽い治療で済む可能性が高まります。
栄養不足とばね指に関するよくある質問

栄養不足とばね指の関係について、よくある質問を3つまとめました。
Q1:ばね指の症状が出たら、まず栄養不足を改善すれば治るの?
もちろん、栄養改善は大切ですが、それだけで完治するとは限りません。
栄養不足はばね指を悪化させる要因の1つですが、原因はさまざまです。
手の使いすぎ、ホルモンバランスの変化、血流不良なども関わっているため、栄養改善と同時に、手の安静、ストレッチ、温冷療法などを組み合わせることが大切です。
強い炎症がある場合や痛みが長期間に渡って続くときは、医療機関でのステロイド注射や手術が必要になることもあります。
Q2:どの栄養素が特にばね指の予防・改善に効く?
これだけとればいいという栄養素はなく、バランスよくとることが重要です。
強いてあげるならば、「タンパク質(コラーゲンペプチド)」と「ビタミンC」です。
腱の主成分はコラーゲンであり、その材料となるタンパク質(特にグリシンやプロリンを含むコラーゲンペプチド)と、コラーゲン合成に必須のビタミンCは、最優先で摂りたい栄養素と言えるでしょう。
Q3:サプリメントで栄養不足を補えば、ばね指を予防できる?
間接的に予防につながると考えられますが、現在のところ「確立された推奨量・明確な効果」が十分なエビデンスとして確立されているわけではありません。
サプリメントは、食事で不足しがちな栄養素を補う「補助」として役立つのは確かだと言えますが、ばね指の予防には、栄養だけでなく生活習慣全体の見直しが必要です。
サプリメントで栄養を補いつつ、生活習慣も同時に整えることで、ばね指の予防に役立つ可能性があります。
まとめ|ばね指の予防には積極的な栄養の摂取を!

ばね指は「手ゆびの使いすぎ」だけが原因ではありません。
栄養不足が腱の修復を妨げ、炎症を長引かせている可能性があります。
特に更年期の女性や妊娠出産期の女性は、ホルモンバランスの変化により、ばね指のリスクが高まる時期です。
だからこそ、タンパク質、ビタミンC、オメガ3脂肪酸、ビタミンD、マグネシウムといった栄養素を意識的に摂るようにしましょう。
個人差はありますが、今回ご紹介した短期的&長期的なケアを組み合わせながら、日々のセルフケアとして試してみてください。

