マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

「健康のためにマグネシウムしっかりを摂っているのに…なんで体調が悪いの?」

実はそれ、「マグネシウムの摂りすぎ」が関係しているかもしれません。

マグネシウムは、健康維持に欠かせない大切なミネラルですが、過剰に摂りすぎると下痢・腹痛などの症状が現れる場合があります。

実際には、マグネシウム不足の方がほとんどであり、過剰摂取自体が稀であることは押さえておく必要があります。過剰摂取になるケースは、サプリメントの摂りすぎなどが主な原因で、食事によるケースは更に稀です。

本記事では、マグネシウムの摂りすぎによって現れやすい症状や安全な摂取量の目安について解説します。

マグネシウムを安心して取り入れるために、参考にしてください。

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

「高マグネシウム血症(マグネシウム過剰症)」は、経口または外用のサプリメントによって引き起こされることは、ほとんどないという事実があります。

世界中の医療文献を見ても、年間に報告される高マグネシウム血症の症例は、全世界でわずか10例程度に過ぎません。その多くは、ICU(集中治療室)における静脈内投与が原因となっています。

理論上はサプリメントによる過剰摂取もあり得ますが、実際には呼吸抑制や心臓症状が現れる前に、必ず腸の耐容反応(下痢)が先に起こります。これは、腎機能に障害を抱えている方においても同様ですので、下痢になったら摂りすぎを疑うと良いでしょう。

マグネシウムの摂りすぎによって現れる主な症状

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

マグネシウムは、摂りすぎると体に症状が現れる場合があるため、「摂りすぎたサイン」が比較的わかりやすい栄養素の1つです。

本章では、マグネシウムの摂りすぎによって現れる症状を次の2項目に分けて解説します。

  • よく見られる4つの症状
  • 重症化した場合に現れる3つの症状

よく見られる4つの症状

マグネシウムの摂りすぎでよく起こる症状は、次の4つです。

  • 下痢・腹痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 倦怠感・だるさ
  • 筋力の低下、力が入らない感覚

それぞれの症状について、詳しく解説します。

下痢・腹痛

マグネシウムには腸の動きを活発にし、水分を引き込む作用があるため、摂りすぎると腸内の水分バランスが崩れ、下痢や腹痛などの症状として現れます。

とくに、酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムなどのサプリメント形態では、下剤のような作用が強く出やすいため注意が必要です。

「食事は変えていないのに急にお腹の調子が悪い」と感じたら、マグネシウムの摂りすぎによる症状かもしれません。

吐き気・嘔吐

空腹時にサプリメントを飲んだり、1度に多量のマグネシウムを摂ると、気分が悪くなったり、ムカムカしたりする場合があります。

これは、マグネシウムが胃や腸を刺激するために起こる反応で、吐き気や嘔吐の症状として体に現れます。

体が受け入れきれない量のマグネシウムを無理に摂っているサインとも言えるため、摂取量やタイミング(食前の摂取を食後に変えるなど)の見直しが必要です。

倦怠感・だるさ

マグネシウムの摂りすぎは、体内の電解質バランスを乱し、神経や筋肉の働きに影響を与えるため、体のだるさや慢性的な倦怠感などの症状として現れる場合があります。

「寝ても疲れが取れない…」

「体が重くて動きたくない…」

上記のような状態が続いている場合、栄養不足ではなく、マグネシウムの摂りすぎが原因の1つかもしれません。

とくにカルシウムやカリウムなど、他のミネラルとのバランスが崩れると、全身の調子に影響が出やすくなるため注意が必要です。

筋力の低下、力が入らない感覚

マグネシウムは、筋肉の収縮や神経の伝達に関わる重要なミネラルですが、摂りすぎるとそのバランスが崩れ、筋肉がうまく働かなくなるなどの症状が現れる場合もあります。

マグネシウムを摂っていて、次のような感覚がある場合は過剰摂取の可能性があるかもしれません。

「力が入りにくい物を持つときに手がふわっとする階段の上り下りで足に力が入らない…」

一時的な疲れと見過ごされがちですが、サプリや健康食品を多く摂っている人は、マグネシウムの摂りすぎによる症状の可能性も視野に入れてみましょう。

重症化した場合に現れる3つの症状

マグネシウムの摂りすぎによって現れる症状は、比較的日常的な不調と似たものが多いですが、極端な過剰摂取や腎機能の低下がある人は、まれに深刻な症状が現れる場合があります。

重症化した際に見られる代表的な症状は、次の3つです。

  • 低血圧
  • 不整脈
  • 呼吸困難

それぞれの症状について、詳しく解説します。

低血圧

マグネシウムには血管を広げて血流を促す働きがありますが、摂りすぎると血管が過度に拡張され、低血圧の症状が現れる場合があります。

「最近なんとなくフラフラする」

「朝がつらく感じる」など

上記のような感覚がある場合、マグネシウムの摂りすぎが関係しているかもしれません。

もともとの血圧が低めの方や高齢者、降圧剤を服用している方は影響を受けやすいため、とくに注意が必要です。

不整脈

マグネシウムは、心臓の拍動をコントロールする電解質バランスにも深く関わっているミネラルですが、過剰に摂取するとそのバランスが崩れ、不整脈が起こる可能性があります。

次のような症状が見られる場合、マグネシウムの摂りすぎが原因かもしれません。

「胸がドキドキする脈が飛ぶような感覚がある息切れや違和感を感じる」

また、心疾患の既往歴がある方や高齢者、腎機能が低下している人は、体内にマグネシウムが蓄積しやすく、不整脈が出やすくなる傾向があります。

呼吸困難

マグネシウムの摂りすぎによって、呼吸がしづらい、息苦しいといった症状がごく稀に現れる場合があります。

これは、体内のマグネシウム濃度が極端に高くなり、呼吸に関わる筋肉や神経の働きが低下するためです。

こうした重い症状は、健康な人では基本的に起こりにくいものですが、腎機能に問題がある方は、腎臓がうまく働いていないと、マグネシウムを体外に排出できず、体内に蓄積しやすくなるため、とくに注意が必要です。

深く息が吸いづらいなどの症状に心当たりがある場合は、サプリメントの使用を中止し、すみやかに医師に相談しましょう。

なぜマグネシウムの摂りすぎで症状が出るの?

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

マグネシウムは体にとって必要なミネラルですが、摂りすぎると体内のバランスを崩し、不調を引き起こす場合があります。

マグネシウムの摂りすぎで体に現れる症状として、考えられる要因は次の3つです。

  • 一度に大量に摂取すると消化器系への刺激が強く出る場合がある
  • 過剰に吸収されたマグネシウムが排出されにくい場合もある
  • 体内の電解質バランスが乱れる

それぞれの要因について、詳しく解説します。

一度に大量に摂取すると消化器系への刺激が強く出る場合がある

マグネシウムには、腸の働きを活発にする性質があるため、1度に大量のマグネシウムを摂取すると、腸内の水分バランスが崩れやすくなり、消化器系は強く刺激される場合があります。

サプリメントやミネラル強化食品などで急激に摂取したときに起こりやすく、体が「処理しきれない」と感じた分が、腸に負担をかけて下痢や腹痛などの症状として現れます。

とくに、空腹時や水分が足りていないときにサプリメントを摂ると、刺激が強くなりやすいため注意が必要です。

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

サプリメント由来のマグネシウムについて設定されている1日あたりの耐容上限量(UL)350mgは、顕著な欠乏症を防ぐことを主な目的としています。

実際の必要量には個人差があり、多く必要とする方もいれば、少量で十分な方もいらっしゃいます。

マグネシウム補給を行う際の基本的なポイントは、「少量から始めて、ゆっくり増やしていくこと」です。摂取により下痢などの症状が現れた場合には、数週間程度、摂取量を減らしながら、自分に適した量を見つけるとよいでしょう。あわせて、筋肉のけいれん(最もよく見られる症状)や睡眠の質などの変化を観察することも大切です。

さらに補足すると、サプリメントが市場に登場した1960年代以降、サプリメントの過剰摂取による死亡例は一件も報告されていないという事実もあります。この点を一般的な医薬品と比較すると、サプリメントの安全性について安心感を持てるのではないでしょうか。

過剰に吸収されたマグネシウムが排出されにくい場合もある

マグネシウムは、通常であれば腎臓の働きによって尿として体外に排出されます。

しかし、腎機能が低下している方や高齢者は、この排出機能がうまく働かず、体内にマグネシウムが蓄積しやすくなる場合があります。

とくに、腎疾患を抱えている方や透析を受けている方、利尿剤を使用している方は、通常より少ない摂取量でも、血中マグネシウム濃度が高まりやすくなり、吐き気や倦怠感、不整脈などの症状が現れる可能性があるため、注意が必要です。

サプリメントやミネラル入りの健康食品を利用する際は、事前に医師へ相談しましょう。

体内の電解質バランスが乱れる

マグネシウムは、ナトリウム・カリウム・カルシウムなどと並び、体内の電解質バランスを保つ重要なミネラルの1つです。

マグネシウムを摂りすぎると、このバランスが崩れ、筋肉や神経、心臓などに影響を与える場合があり、血中のマグネシウム濃度が上がりすぎると「高マグネシウム血症」になる可能性もあります。

これは、サプリメントや医薬品による過剰摂取で起こりやすいため、日常的にマグネシウム製剤を利用している方は、適切な量を守った摂取が大切です。

どこまでが適量?マグネシウムの摂取目安と摂りすぎの境界線

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

マグネシウムは健康維持に欠かせない栄養素ですが、「気づけば摂りすぎていた…」というケースも少なくありません。

マグネシウムを安全に摂取するには、推奨されている摂取量と、症状が出やすくなる上限量の把握が大切です。

1日あたりのマグネシウム推奨摂取量は、以下の通りです。

成人男性(18~64歳)340~370mg
成人女性(18~64歳)270~290mg

参考:日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省

また、マグネシウムには「耐容上限量(UL)」という指標もあり、これは健康な人が長期間摂取しても悪影響が出ない上限の量を示しており、成人の耐容上限量は 350mg/日とされています。

耐容上限量は、食事からのマグネシウム摂取は基本的に問題ありませんが、サプリやミネラル飲料など、追加でマグネシウムを摂る量が350mgを超えないように注意する必要があります。

サプリメントでマグネシウムを摂っている方は、「食事+サプリの合計」がどのくらいかを意識して、適切な範囲に収めましょう。

マグネシウムの摂りすぎを防ぐために知っておきたい3つのポイント

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

「体にいいから」といって、マグネシウムを何気なく摂り続けていると、いつの間にか摂りすぎによる症状が現れる場合もあります。

マグネシウムの摂りすぎを防ぐため、次の3つのポイントについて解説します。

  • サプリメントを摂取する前に表示成分のチェックをする
  • 食事とサプリメントで摂取する際はマグネシウムの総量を意識する
  • 一度に多く摂るのではなく、1日の中で分けて摂取する

サプリメントを摂取する前に表示成分のチェックをする

マグネシウムを含むサプリメントは種類が豊富で、商品ごとに含有量や配合形態が異なるため、摂取前には必ずパッケージやラベルに記載されている「マグネシウム含有量」や「1日の摂取目安量」の確認が大切です。

とくに、1日の摂取目安量に含まれるマグネシウムの量が、耐容上限量(350mg)に近づいていないかを注意しましょう。

サプリを複数併用していたり、ミネラル強化された飲料や食品も日常的に摂っている場合は、合計の摂取量が思ったより多くなっているケースがあります。

「健康のために摂っているはずが、実は摂りすぎていた…」とならないよう、サプリ選びや摂取前の成分チェックは基本中の基本といえるでしょう。

食事とサプリメントで摂取する際はマグネシウムの総量を意識する

マグネシウムは、普段の食事からでも十分に摂取できるミネラルです。

そこに、サプリメントやミネラル強化食品をプラスすると、気づかないうちに摂りすぎになってしまう可能性があります。

「マグネシウムは健康に良いから摂りすぎてても大丈夫」と思っていると、下痢や吐き気、倦怠感といった症状につながるリスクも出てきます。

マグネシウムを意識して摂取している人は、「食事+サプリメント」で、マグネシウムを1日にどのくらい摂っているかを把握する意識が大切です。

一度に多く摂るのではなく、1日の中で分けて摂取する

マグネシウムの摂りすぎによるリスクを避けるためにも、1日数回に分けて、少量ずつ摂取するのが理想的です。

朝・昼・夜など食事と一緒に取り入れたり、水分と一緒に摂ると、体への負担を和らげながらマグネシウムの吸収効率を高められます。

また、マグネシウムのこまめな摂取は、血中マグネシウム濃度の急激な上昇を防ぎ、体内の電解質バランスを安定させやすくなるというメリットもあります。

適量を無理なく、賢く分けて摂取しましょう。

まとめ|マグネシウムの「ちょうどいい摂取」が体調管理のカギになる

マグネシウムを摂りすぎるとどうなる?よくある症状と適量の目安

マグネシウムは、体内のさまざまな機能をサポートする大切なミネラルですが、「体に良いから」と摂りすぎてしまうと、下痢・吐き気・倦怠感などの症状が現れる可能性もあります。

サプリメントやミネラル強化食品を利用している方は、知らないうちに耐容上限量を超えているケースも少なくありません。

「どれだけ摂るか」ではなく、「どれだけ自分に合った量を摂れているか」が、体調管理のカギになります。

サプリメントの成分表示を確認したり、1日で分けて摂るなどの工夫で、安全かつ効果的にマグネシウムを取り入れていきましょう。